世界中に中華街があるのに日本人街がどこにもない理由

海外には2種類の日本人がいる。

いずれ日本に戻っていく日本人と、そのまま海外に溶けていく日本人だ。

ビール片手にいろんな国を巡ると、1つの疑問が募る。世界の大きな街には必ず中華街があるのに、なぜ我らが日本人街は存在しないのか。それなりに大きな人口抱えているのに。

確かにロサンジェルスには日本人街と呼ばれるエリアがあるけれど、寂れていてそこに日系人の息遣いは感じられない。ドイツのデュッセルドルフは日本人の人口が多いけど、そこは中華街のようなコミュニティではなく、単なる日本料理レストラン街という印象だ。

東南アジア諸国にも、太平洋戦争の前に入植した日本人が集まって住んでいたエリアがあちこち存在する。例えばここシンガポールに最初に渡ってきた日本人は、軍人でもビジネスマンでもなく、水商売の女性たちだった。まぁその時はまだ「シンガポール」は存在せずイギリス領だったわけだけど。

現在ブギスの国立図書館があるあたりに、当時は日本娼館があって、そこで働く水商売の女性たちが固まって住んでいたと言う。この地に彼女らが残した足跡は、セラングーンのエリアにある日本人墓地に今でも残っている。

この前記事にした「シンガポール謎解き散歩」でも紹介されていた在シンガポール日本人墓地公園。ずっと気になっていたのですが、ついに昨日友人とともに花を手向けに行くことができました。漠然ともっとずっと郊外にさびれた状態であるものと思っていたら、僕

そんなわけで日本人の残した足跡は世界中に刻まれているのに、どうして現在にまで続く「活気のある日本人街」が存在しないのだろう。

成金駐在員のサロンになっているシンガポールの日本人会を知ったとき、この疑問はすべて解決した。

強者が弱者を搾取する日本社会

日本人が海外で困ったら、とりあえずこの街に行けばなんとかしてもらえる。日本で仕事がなく食いっぱぐれたら、この国の誰々さんに会えば現地で当座の仕事とビザを与えてくれる。彼のもとで精一杯働いてきっちり成果を出せば、家族も呼び寄せて現地で余裕のある暮らしができるかもしれない。

そんな民族のセイフティーネットになっているような日系人名士をご存じだろうか。残念ながら僕は知らない。

それどころか、日本人が日本人を騙す。日本企業が現地採用の日本人を搾取する。同じ仕事をしているのに、日本企業の現地採用は駐在員の半分以下の給料で働かされる。そんな搾取構造が世界の至る所の日本人社会に存在する。

日本企業で働いちゃダメ!絶対!

仕事のみならず、日本人が集まるコミュニティでは、女性はお茶くみなど雑用をこなし、若手男性は力仕事を強制される。一方で権力を握ったおっさんは、左団扇でのうのうと仕事をしない。仕事をしないどころか、問題が起きると責任を全部下に押し付けて日本に逃げ帰ったりする。

この理不尽を拒否した場合は、そのコミュニティから排除される。

そんなことはもはや当たり前の「社会人としてのマナー」。施しを受けるためには、自分がそれ以上の貢献を示さなければならない。

弱者からの搾取こそが、日本社会の醜い本質だ。

日本人街に所属するメリットがない

そんな搾取構造にわざわざ参加する理由があるだろうか。

日本に住んでる日本人なら、住んでいる社会全体がその搾取構造なわけだから逃げ場がない。でも海外に住んでる日本人なら、別人種のコミュニティーや、ローカル社会に溶け込んだ方がむしろメリットがある。

わざわざ日本社会に頼らなくても、豊かな包容力で助けてくれる現地の人たちがいるのだ。

そんなわけで海外の日本人コミュニティはいざという時の頼りにならない。むしろ弱みに付け込んで搾取してくる危険な集団ですらある。近寄らない方がいい。

もちろん中華系の人にも、現地のコミュニティでお金を借りておきながらとんずらするような人が一定数いるらしい。でも中華系の名士はそれすらも織り込み済みで、恩を与えた人のうちビジネスで芽が出る人が一定数いれば、充分そこから回収できるという考え方だ。

なんという包容力。これが世界各地に中華街が繁栄している理由だ。中華街に行けば助けてもらえるから、人とカネと情報が集まるのだ。

そんな包容力は日本国内はもちろん、海外の日本人コミュニティーにも存在しない。日本的な醜いコミュニティは、搾取される弱者が逃げられない日本でしか成立しない。強者による搾取は、逃げ場のある海外では成り立たないのだ。

そんなわけで

海外には2種類の日本人がいる。

いずれ日本に戻っていく日本人と、そのまま海外に溶けていく日本人だ。

中華系のコミュニティに必ずいる、包容力のある現地の名士。世界のどんな過酷な場所でも同胞のコミュニティを作ってしまう強力なオーガナイザー。そして彼らの元で「中華系〇〇人」として同胞コミュニティで生きる人たち。時に現地の政府中枢にまで入り込み、同胞の権利向上に邁進する。

そういう第3の勢力が、日本人コミュニティには存在しない。

だから我々在外日本人には、搾取構造に適応して日本に戻るか、日本社会と決別し現地に溶けていくかの2択しかない。

それは、権力を持つと弱い者から搾取することしか考えなくなる、日本人の醜い国民性のせいだ。血縁や地縁を利用して、同胞を金儲けの道具にする浅ましい連中が「日本社会」をダメにしている。