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医療・健康・食 #老後を変える

50を過ぎても脳は成長する! 医師が教える良い習慣・悪い習慣

脳を遊ばせてはいけない

提供:「#老後を変える」編集部

人間、年をとったら脳は衰えるばかり……そんなふうに思われている。しかし、実は50歳を過ぎても脳は成長させることができるのだという。

胎児から100歳の高齢者まで延べ数万人に及ぶMRI脳画像を分析し、脳の成長原理を見い出した医師・加藤俊徳先生(株式会社「脳の学校」代表)に、日々の習慣によってどれだけ脳を活性化できるかを語ってもらった。

加藤先生はクリニックにて脳の診療も行っている

悪い習慣をやめて、認知症リスクを減らす

40~50代から脳の老化は始まりますが、積極的に意識して脳を使うことで、脳はどんどん発達し、成長していきます。脳を成長させるには、日々の習慣が大切。脳に悪い習慣を減らして、良い習慣を増やす。この両方が大事です。特に、脳の働きを低下させる習慣は避けましょう

確かにどんなに体に良いプラスのことがあっても、同じくらいのマイナスがあれば相殺されてしまうもの。では、どのような習慣を避けた方がよいのでしょう?

脳にとって悪い習慣は、運動不足、肥満、喫煙のほか、糖尿病、うつ病などです。これらはすべて認知症になりやすいファクターでもあります

先生にその理由を尋ねると「肥満になると前頭前野の働きが低下すると言われ、考える能力や集中力が落ちます。また、うつ病になると睡眠障害を起こし、睡眠のリズムが悪いと頭の働きが悪くなります。肥満、糖尿病、喫煙、短時間睡眠は老化物質とよばれるアミロイドβとタウタンパク質というたんぱく質を蓄積させていきます」とそのメカニズムを解説してくれました。

加藤先生はさらに次のように続けます。

認知症の多くは、アミロイドβとタウタンパク質が20年かけて脳にたまっていき、脳神経細胞が死滅することで発症します。ですが、アミロイドβとタウタンパク質が蓄積されて始めても、まだ無症状なので、生活の中では気づけないのです

先生によると、日々の生活習慣との関係が深いとのことで、「70代で認知症を発症しないよう、40~50代で悪い習慣はやめておいた方がよい。タバコを吸っていたらやめる、お酒を飲み過ぎていたら控えるなど悪い習慣をなくすことが重要ですね」とクギを刺します。

また生活習慣の改善は脳の老化のためだけではありません。パソコンやスマホを見続ける現代では、疲れを感じる、やる気が起きない……といった漫然とした不調を覚える「脳の疲労」も大きな問題です。脳の疲れをしっかりとるための質の良い睡眠方法や、疲れを予防するような食習慣を知り、それらを意識した生活に変えるべきでしょう。

40~50代に悪い習慣を断ち切る勇気。これが、長く健康に暮らすために必要なようです。

脳にちょっと考えさせる

では、良い習慣とは、どのようなことを身につけることでしょうか?

 

できるだけマンネリ化させないこと。右利きの人は左手を使うようにするとよいですよ。なぜかというと、右利きの人は右手を使うため左脳が鍛えられていますが、あまり使っていない左手を使うと使っていない右脳が鍛えられます。利き手ではない左手を使うだけで潜在的な能力が開発され、ポテンシャルが広がります。左利きの人はそもそも両利きのことが多いのですが、もちろん右手を意識的に使うことで左脳が鍛えられます

右利きの人が左手を日常的に使うようにするのは難しそうですが、何をしたらよいのでしょうか?

歯磨きを左手で行うのはいかがですか。または、ドアを開けるとき、靴をはくとき、ガスのスイッチをひねるときも左手で行う、左手で箸を持って食べる、左手で字を書く……そんな小さいことでよいのです

行うのに数秒もかからない小さなことでよいそうです。ですが、なぜそれが脳に良いのでしょうか?

例えば、電気を消すのに、いつもと反対の手を使おうとすると、一瞬、考えますよね。この一瞬考えるというのが、すごく大事です。瞬間に考え直して、判断する……ということで脳がマンネリ化しないのです

その根拠として次のように続けます。

逆に、無意識に電気を消している場合は、行動が自動化されています。自動化されていることは脳がよく知っていることなので刺激されませんし、新鮮だとも思いません。今までと違うことに脳は新鮮さを味わうのです。それが脳を成長させていきます

たとえば、会社の帰り道に普段と違う道を通ったり、買い物でスーパーに行ったら、出口から歩いてみたりするなども良いそうです。いつもと違う景色が見えたとき、「あれ、これってどうするんだろう?」と脳が考えることが良いのだとか。

もう一度改めて考えなくてはいけないことがあると、マンネリ化しません。すぐできることは脳が知っていることなので、労力の省エネにはなるのですが……