非暴力主義の思想から生まれた「ホテル・カリフォルニア」
連載「六九亭日乗」
12月はロックの歴史にとって大きな節目となる出来事がたくさんあった。そのなかで音楽ライターの大友博さんは、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」を取り上げる。
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このコラムの中心テーマは、いわゆる“This Day in Rock Music”。ロック史を振り返り、アップ日前後に起きたことや世に出た作品を、なるべく直近の話題と絡めながら、僕なりの視点で紹介していこうというものだが、11月から12月にかけてのこの時期はけっこう「出来事」が多くて、悩んだりもした。
触れたいなと思いながら期を逸してしまったもののなかには、1976年11月25日の『ザ・ラスト・ワルツ』、69年12月6日のオルタモント・スピードウェイ・フリー・フェスティヴアルがある。前者は、多くの大物アーティストが駆けつけたザ・バンドのフェアウェル・コンサート。後者は、ローリング・ストーンズを中心にサンタナ、ジェファーソン・エアプレイン、CSNYらが参加した大規模なフリー・コンサートで、約4カ月前のウッドストックを多分に意識したものであったはずだが、演奏中の会場で殺人事件が起き、「ロック史最悪の日」とまで呼ばれることとなってしまったもの。どちらも映像作品化されているので、ご覧になった方も多いだろう。
そして12月8日はジョン・レノンの命日ということになるわけだが、おそらくこの時期はかなり多くの方が同じような記事や投稿を目にされることになると思うので遠慮し、ここでは、76年の12月8日にアメリカで発売されたアルバムにスポットを当てることとしたい。イーグルスの通算5作目で、これまでに3000万枚以上を売り上げたといわれている『ホテル・カリフォルニア』だ。
70年代のロック文化を代表する名盤の一つとして世代を超えて聴き継がれ、さまざまな形で語られてきたその名盤の登場の約10カ月前、イーグルスは初来日公演を行なっている(今でもあのころの興奮を記憶にとどめているが、75年12月にクロスビー&ナッシュ、年が明けて1月にドゥービー・ブラザーズ、2月にイーグルス、3月にニール・ヤングが相次いで初来日をはたすという、アメリカ音楽好きにはたまらない4カ月間だった)。