辻仁成が息子に作る「ホワイトオムライス」 その裏の“魂胆”は…
小説家で、ミュージシャンで、映画監督で、そしてシングルファーザー。辻仁成さんがキッチン横のテーブルで書いた初めての料理小説『エッグマン』には、不器用な男が作る、さまざまな卵料理が登場する。自身も息子の「うまい」に支えられる。
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卵白を慣れた手つきで攪拌(かくはん)すると、ふわっふわになった。それをフライパンでさっと焼く。辻家のオムライス、ご飯を包む卵は白身だけでできている。
「卵白が焼けたら、フライパンからスライドさせるようにボウルに移す。クレープパンがあるときれいにできるんですよ」
元料理人の不器用な男を中心に描く初めての料理小説『エッグマン』では、このホワイトオムライスが、ある少女の心を溶かす。人々は卵料理に癒やされ、誰かを許していく。
「人をつなぐのが愛や友情だとすれば、料理ではその役割は卵。ハンバーグみたいに卵は“つなぐ”役。だから卵料理をテーマにしようと思って。うちの息子、卵が嫌いなんですが、このオムライスだけは食べるんですよ」
パリで、バレー部のキャプテンを務める13歳の息子と2人暮らし。朝と夜は必ず食事を作る。時短調理はほとんどしない。
「離婚で寂しい思いをさせたから、料理くらいはしっかり作ってあげたくて。手塩にかけて作ることが僕なりの愛情表現。ご飯が炊ける匂い、材料を切る音、そういうこと全てを食事の前座として彼に届けたいんです」