新しい研究によれば、青銅器時代の鉄製の武器や道具はいずれも隕石から抽出した素材で作られたのかもしれないそうだ。
この発見は、鉄鉱石から鉄を精錬する技術を人類が発明する前に作られた鉄器の作成方法について、専門家に深い洞察をもたらしてくれる。
スポンサードリンク
青銅器時代の発掘品には隕石由来の金属が多く含まれていた
それまでの研究によって、ツタンカーメン王の埋葬品である短剣など、青銅器時代の発掘品の中には隕石由来の金属から作られたものがあることが明らかにされていた。今回の最新の研究は、それがどの程度一般的だったのかという疑問に答えるものだ。
ツタンカーメン王の短剣 image credit:Wikipedia
フランス国立科学研究センターのアルバート・ジャンボン氏は、エジプト、トルコ、シリア、中国の博物館に所蔵されている遺物をX線蛍光分光計で解析し、いずれも起源が同じであることを発見した。
「現在の結果は、文献で説明されている高度な解析を補完するもので、青銅器時代のほとんど、あるいはすべての鉄が隕鉄から抽出されたことを示唆している」と論文で述べられている。
なぜ青銅器時代に鉄製のものが存在したのか?
紀元前3300年頃に始まった道具、武器、宝飾品などに用いる金属として青銅が使われていた時代を青銅器時代という。青銅は丈夫で、しかも銅を溶かして錫などと混ぜるだけと作り方も簡単だった。
それから2000年後、鉄鉱石から鉄を精錬する上で必要になる高温を実現する方法が発見されたことで、鉄を取り出すことが可能になった。鉄器時代の幕が上がったのはこの時だ。
ゆえに歴史家は青銅器時代まで遡る鉄製の武器や道具が存在することに頭を悩ませてきた。「この鉄は一体どこからやってきたのか?」と。それは当時、最も希少なものであったろう。
先史時代のエジプトで発見された隕鉄のビーズ image credit:Petrie Museum of Egyptian Archaeology
当時の人々は隕石の鉄を利用していた
この疑問を解く鍵が、地球に落下した隕石の鉄には大量のニッケルが含まれるという事実だ。一方で、ニッケルがその形成中に地球内部の溶鉄コアへ向かって流れるメカニズムのために、地上の鉄鉱石にはそれほど含まれない。
X線蛍光分光計は物質に触れずに対象の化学組成を解析することができる。これを用いて、ジャンボン氏はビーズ、短剣、ヘッドレストなどの博物館の展示物を研究した。
その結果、それらからニッケルが豊富に含まれる隕鉄が発見された。隕石に堆積した鉄は精錬を行わずとも利用することができたのだ。
隕鉄 image creditH. Raab:
新たなる歴史の紐を解く1ページへ
この発見の素晴らしいところは、それが青銅器時代の知られざる歴史を明かしてくれることだけではない。実は、これは人類が初めて地球の鉱石から鉄を取り出すことができた時期と場所を特定する手がかりになるのである。
人類が史上初めて鉄を精錬した時期は誰も知らないが、同じやり方で研究を進めれば、隕石から鉄鉱石へと変わったタイミングを特定できるかもしれない。
via:sciencedirect / sci-news / zmescienceなど/ translated by hiroching / edited by parumo
あわせて読みたい
今、あなたにオススメ
Recommended by
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
「知る」カテゴリの最新記事
- 鮮明で印象深い夢を見せてくれると言われている6つの食べ物
- フライパンでサクふわおいしい!パイシートで作る簡単「キッシュ」の作り方【ネトメシ】
- 青銅器時代に作られた武器や道具のほとんどは宇宙の素材「隕石」から作られていた(フランス研究)
- 悪魔が封印された箱や魔女の水晶などをズラリと展示。オカルト的工芸品が目白押しの魔女術と魔術の博物館「バックランドギャラリー」
- ギガントピテクス・マンモス・タスマニアタイガーなど、近年解き明かされた7つの歴史的ミステリー
- ツイッターと掲示板で大捜査網!「大切な車を盗まれた。探してほしい」と呼びかけたところあっという間に見つかった!
- ちょっと遠いけど期待。惑星「K2-18b」がスーパーアースである可能性が高いことが判明。地球外生命の存在に期待
- ここでもキティちゃんは仕事してんのね。キャラクターの名前の語呂に似た別の何かを合体させたイラストプロジェクト
「歴史・文化」カテゴリの最新記事
- 青銅器時代に作られた武器や道具のほとんどは宇宙の素材「隕石」から作られていた(フランス研究)
- ギガントピテクス・マンモス・タスマニアタイガーなど、近年解き明かされた7つの歴史的ミステリー
- このイベントが日本にもあればいいのに。見知らぬ誰かとプレゼントを贈りあう「シークレット・サンタ」(ニュージーランド)
- 先史時代(新石器時代)の女性は異様に腕力が強かった。骨の研究で判明(英研究)
- 北ベトナム側から撮影された、ベトナム戦争時の写真
- まるで生きているように見えるヴィクトリア時代の「遺体記念写真」は本当に遺体なのか?その真実に迫る
- イギリスで「自分は無宗教だ」とする成人の数が過半数を上回り過去最高に
- 専門家すら長年騙された巧妙な6つのねつ造
この記事をシェア : 526 305 3
人気記事
最新週間ランキング
1位 2892 points | 下半身だけダビデ像になれる。リアリティが突出した騙し絵的レギンスと水泳パンツがナウオンセール! | |
2位 1746 points | 映画「ブレードランナー2049」に使用されたミニチュアビルの精巧さがすごい! | |
3位 1555 points | 1本の手が3本に!サイボーグ感満載のダブルバイオニックアームが販売中 | |
4位 1159 points | アフガニスタンで大勢の人を救ってきた軍用犬が、任務後安楽死の危機に直面。兵士らが犬たちを救うための嘆願書を提出(イギリス) | |
5位 862 points | 人の気分を変える”マインドコントロール”AIチップの脳移植実験が開始される(米国防高等研究計画局) |
スポンサードリンク
コメント
1. 匿名処理班
地上に落ちてきた星を鍛造して作った剣
って書くともう伝説の武器にしか見えなくなるな
2. 匿名処理班
隕石なんてたいした量もとれないし、見つけるのも難しい
これはたぶん宇宙人が介在してるな
3. じょん・すみす
実際、文明が古くから発達してる地域では鉄隕石が見つからないとか。
古代文字では、鉄は”空から落ちて来たもの”って意味があるとか。
そんな話を聞いた事がある。
4. 匿名処理班
このせいでヨーロッパじゃ隕石が全然見つからないんだよね。
そりゃまあ、一時は金より高価だった鉄が落ちてれば拾って再利用するに決まってるけど。
5. 匿名処理班
隕石が大量に在ると言うのも恐ろしい話だな
6. 匿名処理班
単に昔は地面を深く掘る技術が無かっただけじゃ……?
7. 匿名処理班
ガラモンも時代間違ったら溶かされてたのか
8.
9. 匿名処理班
宇宙から来たツタンカーメンの副葬品
10. 匿名処理班
※2
隕石は毎日10万トン以上地球上に降ってくる
今もどこかに落ちているし、人のいない場所や
小さすぎて確認できないだけだ
意外に庭先によくわからん石として転がってたり
するかもよ
11. 匿名処理班
隕鉄が天から降ってきた星だという事実は草原地帯の遊牧民が古くから観察していただろう。星の光=火であり、火の気を加えれば黒く固まった鉄が光りだして輝きを取り戻すという経験的事実から、錆びた鉄を石炭や泥炭の火で還元させる発想も生まれただろう。そして地上には錆びた鉄のような石が無数にあった。そんな流れではなかろうか。
12. 匿名処理班
日本で何度か隕石から刀が鍛錬されてるよね、近世以降だけども
実際は加工が難しいし不純物多くて刃物としてはイマイチらしいけど、
隕石から作られた剣てのはそれだけでロマンが溢れてたまりませんな
13. 匿名処理班
斬鉄剣そのままですね
14. 匿名処理班
石とか木で家を作っていた時代は360度見渡せました、男は狩りをするためのやりの先や
弓矢の矢じりを硬い石にするほうが良いのでいつも良い石を探してました、女も食料を集めるとき良い石を拾ってきたかもしれません、その石は代々伝える価値があったでしょう、石おも砕く最強の石ですからね。
15. 匿名処理班
人類が火を使い出してから・・・何か感慨深いなぁ
16. 匿名処理班
これは宇宙人の介在があって成り立つ話だな。ただ今と違い、夜は完全な闇夜だからそこで空に尾を引いて落ちてくる隕石を見つけて、回収して来いと言った命令はありそう。
17. 匿名処理班
日本にもあるぞ
榎本武揚が持ってた短刀見たことある
18. 匿名処理班
「天の神様がくれた」と思ったんだろうなー。
19. 匿名処理班
徒歩圏内にそんなにたくさん隕石が落ちてるものなのか?
20. 匿名処理班
あー、地球誕生以来貯めこんでた隕石(隕鉄)をこの時期に使ったってことか
21. 匿名処理班
右端の色味とサイズの基準器欲しい
22. 匿名処理班
にらぎ鬼王丸を思い出すなぁ…
そして厨二心をくすぐりすぎる設定じゃないか(笑)
もしかしたら一部の刀剣は、当時から磁石があって金属探してたらたまたま落ちてる石があって、それが現代になってたまたま隕石だったってことが分かったオチだったり…
23. 匿名処理班
隕鉄 入ってる ♪ ♪♪♪ ♪
24. 匿名処理班
隕鉄使ったものは結構あるよな、意図せずに硬いものを探した結果だろうから当たり前といえば当たり前か…
25. 匿名処理班
鉄は精錬して生み出すものっていう現代の常識が青銅器時代の隕鉄鉄器をオーパーツにしてしまっていたんだね。こういうのは他にもあるかもね。
今でこそ資源は山を掘り起こすか海底深くから取り出すかみたいなイメージがあるけど、ほとんど資源を使用してなかった時代には地表にもゴロゴロしていたのかもしれない。
26. 匿名処理班
隕鉄を加工する熱を作れる方法があったのか?
必要な熱量は青銅と変わらなかったのか、ニッケルという鉄が溶けやすいもので
冷えると銅より硬いというものじゃないと使わないよな。
ほぼ鉄で熱与えればいいだけという素材だった話なのか。
伝説の武器というか程度の低い非レアな素材という位置づけだよね
当時なら鉄鉱石から取り出すほうが激レアで。
例えるなら金の隕石が落ちてくるのか、金鉱から微量取り出して塊にするのかの違い。
どっちがレアリティあるのか。
27. 匿名処理班
加工は隕鉄どうしを擦り合わせるとしても、隕石をどうやって探したのかが疑問。
28. 匿名処理班
宗像教授の出番かな。
29. 匿名処理班
隕鉄を溶かせる熱が得られる前はもしかしたらひたすら研いでいたのかもしれないね、
30. 匿名処理班
※2
Wikipedia によると、風化に強いらしく見つけやすいみたい。
※17
調べたら、東京農業大学と富山市天文台に寄贈されたとありますね。
※26
刀鍛冶が苦労しているみたいで、鋼とちがってかなり柔らかいみたい。ただ、銅の融点 1084 ℃に対し、鉄の融点は 1538 ℃とあるので、高温を作り出せる技術ができるまではとりあえず、温度を上げて柔らかくして、ひっぱたいて加工するしかなかったでしょうね。だから、純度がある程度必要で、隕鉄はいい素材だったでしょう。
31. 匿名処理班
※10
その数字ちょっと多すぎないか?
32. 匿名処理班
※2
鉄かどうかは舐めればわかるから、手当たり次第に舐めればいい。
33. 匿名処理班
まず鉄ってのは宇宙ではものすごくありふれた物質なんだよね。
地球では重量比で35%が鉄。ただし、ほとんどが地球の核とか取り出せないところにある。
星のかけらである隕石に鉄が含まれている事が多いのはそのため。
宇宙人が介入せずとも自然の摂理。
天からの贈り物である隕鉄だ。そりゃあ貴重だよね。
「博物館の展示物」になる程だ。
つまり「博物館の展示物」だから隕鉄由来の武器や道具が多いんじゃないかな?
製鉄技術の発生伝来は多くの研究者がしているので参考にしてください。
宗像教授でもある程度の方向性はわかるけど本気にされると困る描写も多いのでご注意を…
34. 匿名処理班
エスキモーが昔 巨大隕鉄からナイフを作ってたらしいけど
冒険家が来て その隕鉄を本国に持っていってしまったそうな
ケープ・ヨーク隕石
35. 匿名処理班
腰から磁石をぶら下げて鉄隕を探しまわる徘徊ジジイになりたい。
36. 匿名処理班
前から言われてたよなこれ