インナーチャイルドという言葉をご存知でしょうか。
直訳するとそのまま、「内側の子供」という意味です。
人間の考え方のクセっていうのは、幼少期からの体験を元にして構築されるワケじゃないですか。「こう言ったら、こうなって、失敗した。だから私はこうする」って学習の積み重ねによって、考え方のクセは引き起こされるんですよ。
でも、幼少期の環境と、今の環境って同じでしょうか?
最初は家族だけでした。その次に親戚があって、学級があって、地域があって、社会に出て、関係性は広がり、仕事の仲間や趣味の仲間も増えたと思います。
環境は全く異なっているのに、繰り返された学習によって、考え方のクセが抜けない。
新しい環境に適応した考え方ができない。この状態を、内側にいる子供、「インナーチャイルドを抱えている」と表現します。
日本では、「アダルトチルドレン(AC)」と言った方が聞き覚えがあると思います。
例えば、幼少期、食事中に食卓に肘をついて「肘をつくな!」って激しく叱咤された経験があるとしましょう。
子供は、「肘をついたら罵倒されるのだ」と学習して、そのまま大人になります。
「肘をついたらダメなんだ~」って思ってるのに、目の前の恋人が、肘をついて食事を取り始めたらどう思いますか?
「何で肘ついて食べるの!?」って思いません?
何でダメな行為をわざわざ行うのか、嫌がらせにしか感じないかもしれないです。自分に何か落ち度があったのでは、と不安に思ってしまうかもしれないです。きっと驚きと戸惑いを隠せないで、こう言ってしまうと思います。
「何で肘ついて食べるの?」
ブッブー
もうこれ、インナーチャイルドに振り回されています。
正しくは、食事中に肘をつこうがナニをつこうが、新聞読んでてもスマホ見てても、屁をこいてても、何してても、「ダメな行為」なんてのは、存在しないんですよ。
ただあなたが、「やってほしくない」だけ。
やってほしくない行為は、「やってほしくない」と伝えればいいのに、自分が非難されてきた行為である為に、「非難が正当である」って思っちゃうんですね。
新しい人間関係の中には、新しいルールが生まれます。
その度に、互いの「やってほしいこととやってほしくないこと」を擦り合わせるというのが、人間関係の構築の仕方なのですが、インナーチャイルドに振り回されて「こうしなければいけない」って考えが根付いてしまっていると、人と関わるのがとっても苦しくなってしまうんですね。
これはもう、最悪ですよ。
表現する全てが、「自分以外の誰かのことを思って」のものなんですもの。
インナーチャイルドは誰しもに存在しうる
インナーチャイルドがどんなものかを解ってもらった上で、自分のインナーチャイルドを認識してみてください。
牧は、日本教育において「良いとされてきたもの」の教育を受けた子供のほぼ全てが、インナーチャイルドを抱えたまま大人になっていると思います。
先述の「絶対にダメな行為なんてない」と同様に、「絶対に良い行為なんてない」はずなんですよ。それなのに、そこに沿っている子だけが評価を受けて、沿っていない子は非難される。
軍国主義時代の「兵隊を育てるため」の教育を変えられなかった日本では、人を育てる教育が浸透しなかったんですね。
それが今の日本です。
もうおわかりでしょうか。
あなたを育ててくれた人もきっと、今もなおインナーチャイルドを抱えているのではないでしょうか。
インナーチャイルドに振り回された「こうしなければならない」という考えは、とても苦しいです。
自分の「本当はこうしたい」という願いすら無意識に封じ込めて、心身に様々な不調を呼び起こします。
自分のやりたくもないことをやっていて、自己肯定感が生じるでしょうか?
友達に調子を合わせて同意ばかり繰り返すのが、本当にやりたいことでしょうか?
上司や客先に頭を下げて、ご機嫌を伺い続けることが、本当にやりたいことでしょうか?
嫌われないように、好かれるように、嘘をついたり、誤魔化したり、苦しんでいることは、本当にやりたくてやっているんですか?
その言葉は、表現は、絵は、音楽は、本当にあなたが発信したくて発信しているものなんでしょうか。
何かに突き動かされて、もしくは、目に見えぬ誰かの評価を気にしながら、発信しているものではないでしょうか?
まず、発信するということ自体が、とってもしんどいことなのに?
どれも集団に属して利益を得ていくためには、仕方のないことですよね。
じゃあせめて、仕方がないから必要でやっていると認識しましょうよ。
”誰か”に強要されているんじゃないんです。あなたが選択してそれを行っているんです。
そう思えれば苦しさは緩和されるんですよ。
何故なら自分が苦しいことを選んでいると認識できるので。
苦しいのにやってしまうことってのは、アルコール依存や薬物依存、買い物依存やギャンブル、セックス、恋愛、食事、暴力、その他全てのアディクションに関係するものばかりではないと思うんですよ。
ただ、これらの悩み事は問題が可視化しやすいだけ。
あなたの中に、あなたが問題視できていない苦しみが見つかったなら、あなたがあなたらしく生きるために、それはもう大きすぎる一歩を得られたと思うんですよ。
インナーチャイルドを癒す
子供の頃、強要されて苦しかったこと、つらかったこと、本当は「こうしてほしかった」こと、子供ながらに「仕方ないんだ」って折り合いつけてきたこと、たくさんあると思います。
子供は、生活の選択権がありませんから。
まずそれを、全部書き出してください。
書くという行為には、「浄化」の効果があります。
繰り返し繰り返し、浄化作業を行ってください。
そして全て、「そうか、自分はこんなことが苦しかったんだな」って認識してください。
誰に認められなくてもいいんです。
他の誰かと比較しなくてもいいんです。
自分が苦しいと感じたことは、素直に苦しいと思っていいんです。
その上で、「もう大丈夫」って思えたら最強です。
だってもう環境は変わったので。
もし、「全く何も思い出せない」という状態でしたら、けして無理はしないでください。
思い出せない状態というのは、思い出したら死んでしまう状態である可能性があります。
それこそ、専門医やカウンセラーの元で、安全を確保されながら、慎重に行うべき作業です。
思い出す過程で叫びそうになったら、すぐに思い出すことを中断して、専門医に駆け込んでください。そこは約束してください。
私達はもう大人になって、選択権が増えて、より良い環境に変えていけるし、どこに行っても生きていけるようになったんですよ。
苦しい環境で耐え忍ばなければならなかった時は、もうやってこないのです。
私達は、生き残ったんだ。
そう思えたら、きっともっと、前に進んでいくことができると思います。
苦しみを抱えて自己を認めることができない全ての人が、自分らしくありのままに生きられる社会が来ることを、牧は願っています。