久しぶりにブログを書かせていただきます。
現代病とも言える歌唱時機能性発声障害の多発について
勇気を持って、初めて書かせていただきます。
実は数年前から生徒さんにこの症状で悩んでいるボーカルが数人います。
歌いすぎも含め、発声や歌い方が問題なら「声帯ポリープ」「声帯結節」という症状になっていきがちなのですが、歌唱時機能性発声障害は違います。
症状は、歌っている時に、中音域から高音域にかけて声がひっくり返りやすくなり、声が出にくくなり、ひっくり返るのを恐れて肩や首や喉をしめつける癖が付いていき、ピッチ(音程)がとりづらくなり、上手く声が出ないのを体でカバーしようとするので、大変疲労困憊するライブになってしまいます。今までどう歌っていたのかわからなくなると全員言います。でも、耳鼻咽喉科に行くと「声帯は綺麗だ」と言われるのが特徴です。声帯の開け閉めをする周りの粘膜や筋肉に、脳から指令が行かなくなる感じで「脳の誤作動」とも言われています。
この症状は、プロのボーカルがなる確率が高いです。
しかも大きい会場でライブをするようになったボーカルに多いのです。
その理由はのちほど書きます。
今まで数十パターンの試みをしています。
その生徒さんと一緒にかなり研究をしている日々です。
声を出すだけではなく、ケア方法も充実させるべく動いています。
素晴らしい整体の先生や体の改善トレーナーの先生にも出会い
日々ご協力をいただいています。
同時に生活思考習慣の改善もしています。
耳鼻咽喉科の先生のお話やリハビリがとても大事なので、私もすすめていますが、耳鼻咽喉科の先生は「最低3ヶ月は全く歌わない生活をしてリハビリに通うとかなりの確率で改善する」とおっしゃるのですが、そうして欲しくても、突然チームのスケジュールを止めることが出来ず、リハビリには行くがライブは続けるボーカルがほとんどです。
でも、その耳鼻咽喉科のリハビリやケアや歌い方の改善によって、体と声の調子が整い、何度もライブが大成功したりする日も多々ありました。
完治かもしれないくらいまで改善した人、少し改善した人、改善したり戻ったりする人などさまざまですが、かなりわかってはきました。
でも、風邪など体調が悪い日や精神的に追い込まれている時は、確実に不調になります。筋肉のつけすぎ(特に胸肩首)や運動のしすぎの筋肉痛の体も、こわばるので不調になります。
(これは機能性発声障害の人以外にも当てはまる内容です)
何が好調を招き、何が不調になるかの研究は、医学的にもはっきりとした治療法がうまれていないので、どうしても治したい一心で、それぞれの体に合うものや、やり方の好みや、性格、体質、持病に合わせて色々試してる現状です。(レッスンに来ていないかつての生徒さんには残念ながらやっていません。)
私のボイストレーナー歴は29年目になりましたが、
昔は、この症状は皆無でした。
ボーカルにおいては聞いたことがありませんし、この症状になる生徒さんはいませんでした。
ピアニスト、ギタリスト、ドラマーなどが、思うように指や手が動かなくなる「ジストニア」という症状はここ5年くらいで聞いています。
(耳鼻咽喉科の先生いわく、声帯の場合は「ジストニア」とは言わないそうです。)
昔なくて今あるもの…は?と、
レジェンドボーカルの皆さん全員に質問した所
全員が
「イヤモニ」の耳の返しの音量のバランスの問題ではないか?!
と、口々に言っておりました。
バランスを崩してしまえばそうなってしまうことがよくわかる、と。
私もそれが大きな要因の一つだと思っています。
(「イヤモニ」とは「イヤーモニター」(耳にはめる返し音響)です。耳を完全に塞いだものと、そうでないタイプがあります。昔はステージ床に置く「ころがしモニター」で、離れて音を聴いて歌っていました。)
「イヤモニ」はもともと大きい会場でライブをする人が、ステージ上のどこにいてもメンバーやサポートミュージシャンと同じクリックやテンポで同じ音を聴いて演奏した方が、上手く演奏が合うわけで、「イヤモニ」自体は、スマホ同様、大変素晴らしい現代の産物です。
「イヤモニ」のおかげで、すみずみの音が繊細に聴こえ、ライブがやりやすくなったわけです。
でも、 耳にダイレクトに自分の声とそれ以外の楽器の音を返しているわけなので、「難聴」にもなりやすいですし楽器のミュージシャンの「ジストニア」にも話が通じると思うのですが
今まででわかったことは
その全体音量が大音量の人だったり、特に自分の声を大音量に耳に返している人が、風邪をひいている日、精神的に落ち込んでいる日の声の出が悪い時に、自分の声や息の微妙な調節がわからなくなり、無理矢理歌ってしまった日から始まることが多いのでした。
(あとは、突然の環境の変化にとまどっている時、急激に痩せた時、にもなりやすいです。)
自分の声の返しは、人それぞれの体の感じ方や好みのバランスなので難しいのですが、大音量&大爆音だけはとにかく避けてほしいです。そして、少し耳から離して隙間を開けてみたり、「イヤモニ」だけを頼らないようにサポート的に思うように考えて、「ころがしモニター」も含めて外音も聴くようにして、どうやったら歌いやすいか、微調整をお願いしたいです。
これで上手く歌えない症状が改善したボーカルがいっぱいいます。
今後、この症状が蔓延していかないことを切に願って書かせていただいております。
生徒さんではなかったボーカルさんも数年前から次々と歌唱時機能性発声障害の症状で相談に来られます。
なので、この症状の生徒さんが増えていることにはなりますが、
有名なボーカルさんが多く、日本の音楽業界にとって大変な問題です。
(共通する発症の始まりは、上記に書いた内容でした。全員同じでした。)
イヤモニを使っていなかった人で同じような症状になる場合もあるのですが、それは、音を、ころがしモニターではあっても、メンバーの音も声も、大爆音で返してライブをしている、激しいバンドのボーカルでした。かえってその人は、そののちに「イヤモニ」に変えて、全体音量をかなり下げてライブをするようになったら、声や歌の調子が良くなったそうです。
結果、「イヤモニ」の上手な使い方…が大事なわけです。
声や歌の話なので、私もかなり自分のせいなのか深刻に悩み改善に何年も取り組んできましたが、他のプロボーカルのレッスンをされているボイストレーナーさんも同じように悩んでいらっしゃると思うのであえて書きます。ボイストレーナーのせいではないと思っています。
なぜなら、一人のボイストレーナーの所からだけ歌唱時機能性発声障害のボーカルがうまれるわけでは全くないからです。他のボイストレーナーさんの所に通っていたり、一度もボイストレーニングを受けたことがないボーカルさんが大勢私のスタジオにいらっしゃるからです。しかも私のところにも数人いるわけで、その症状でも「イヤモニ」のバランスをよくして、体と声帯周りが健康に整えることが出来た時、今までやって来た発声練習や歌唱法やパフォーマンスのアドバイスは、結果、大変、効果的でした。何度もライブを大成功に持って行けました。
長年コツコツとボイストレーニングをして、徐々に声帯周りの必要な筋肉を柔らかく作ったボーカルは、たとえ少し不調になっても「イヤモニ」をしていない時の生の声の調節での練習で、早く戻せます。あと、レジェンドボーカルはイヤモニの前の時代の「ころがしモニター」を聴きながら、歌を歌ってきた時代が長いからなのかこの症状になる人は非常に少ないです。自分の声の調節を長く体に染み込ませてきているからではないでしょうか。
ずいぶん前から、歌唱時機能性発声障害のプロボーカルが増えている現状を
大変困った問題だと一緒に語り合っていた、
有名な音楽プロデューサーさんから昨日お電話を頂きました。
「イヤモニ」のお話にも納得されていましたが
レコーディング時の昔と現代との違いや、音楽業界の現代のサイクルや、現代のメンタル面など、たくさんの貴重なご意見も伺いました。
私も「イヤモニ」のバランス問題だけではない何かが複合的に絡み合っている現代病なのであろうとも考えています。
気候やスマホを見る首の角度や姿勢の悪さ、スマホを含む電磁波問題のおかげでも体調不良や精神的に落ち込む人が増えてしまっているのでは?は、よく考えています。
現状、今までもお世話になっている素晴らしい整体の先生や、素晴らしい体の改善トレーナーと、生徒さんのスタッフチームと、みんなで話し合いながらタッグを組んで改善策をすすめています。
実は、本当は、改善している人もいて、希望の光が見えてきているところです。
もう少しだと思っています。
ただ時間がかかる場合が多々あるので、はっきりいつ治ります、とはいえないのがもどかしいですが。
コツコツが大事です。
この症状になってしまった人をそばで見ていて
どれだけ努力をしていて頑張っているか、どれだけ辛いかが、十分わかるので、これからも全力で研究し、サポートしていきたいと思います。
日本の音楽を敬愛しておりますので。
生徒さんのファンの皆様、音楽関係者の皆様に、この現状をご理解いただけたらと思い、
長々書かせていただきました。
生意気にすみませんでした。
ボイストレーナー りょんりょん