当時ぼくが働いていた企業には上海支社があり、現地で登用した中国人支社長と、彼が雇用した10人程度の中国人IT技術者が、日本の本社の開発を手伝ってくれていた。
入社三年目の下っ端だったぼくは、新サービスをイチから彼らに任せるため上海に赴き、一週間ほど滞在して企画説明を行った。
鬱も晴れて会社に戻ると、それまでの間に上海支社でハイスピードな人員整理が行われ、ぼくの説明を理解できなかった3人のIT技術者が解雇されていた。
ぼくは中国支社長に連絡を取り「なぜ解雇したのですか。」と聞いた。
中国人支社長の返事は「あなたの説明を理解できなかった従業員は不要で、代わりはいくらでもいる。求人には20名以上が応募しており問題ない。」とのことだった。
ぼくの知らないうちに、ぼくのせいで、人が仕事を失った。そこに責任を感じたが、何もできなかった。
しかしながら、この失敗がきっかけで、会社でのポジションは徐々に悪くなっていった。
なんとなく3年ほどしがみついたが、結局その会社を去った。
転職はうまくいったが、ぼくのせいで解雇された3人の技術者のことはずっと忘れられないでいた。
さらに3年経ち、偶然、都内の携帯ショップで、解雇された技術者の1人と再会した。
普通に店員として働いているようだが、いや、まさか? と思い、本人確認書類を提示すると
そしてぼくは、当時の非礼を詫びた。
すると
「あの日にワタシは解雇されていないだったら、ワタシは日本に来るチャンス無いでした。アナタも解雇されたを知っている。あの会社だめだめね。ははは。」
そう言いながら、慣れた手つきで機種変更を終えた。
「ワタシの代わりは中国にいくらでもいます。だから日本に来た。」
ぼくは未だ何も変わっていない。