ここが変だよJASRACのコンサート使用料計算方式

出典:いらすとや

チケットキャンプが警察に捜査された問題は、推測どおりジャニーズの名称(登録商標)をサイト上で使ったことが問題とされただけで、チケットの転売そのものを警察に問題視されたわけではなかったようです(とは言え、転売問題でジャニーズを怒らせていたことにより、ジャニーズが商標問題でも強い態度に出て、それが警察を動かしたという間接的影響はあると思われます)。

転売行為そのものについては、ネットでの高額転売もリアル「ダフ屋」と同様に規制する動きも出ていますので期待したいと思います。

需要があれば価格が上がるのは当然なのでチケットも市場原理に任せるべきであるというような主張をする経済学系の人もいるかもしれませんが、プラチナチケットを取るのはちょっとした暇と運さえあれば投資もリスクもなくできてしまう行為ですし、たとえば、ジャニーズのチケットが中高生のお小遣いをはるかに越えるような金額になってしまうのは問題なので、市場原理に任せればすむ金融商品等と同一視するわけにはいかないでしょう。

とは言え、コンサートのチケットにも格闘技でいうリングサイド席のような高額の特別席を少数設けることで、市場主義的な考え方と平等主義的な考え方のバランスを取ることは考えられます。金はいくらでも出すから絶対見たいという人と、お小遣いの範囲で見られるチャンスをできるだけ上げたいという人の両方をある程度満足させられます。しかし、JASRACのコンサートにおける音楽著作権使用料の現時点での計算法はこのような考え方に向いていません。

コンサートにおける著作権使用料の基本的計算方は以下のようになっています。

(入場料×会場の定員数×80%) × 使用料率5%

ここで「入場料」はチケットの種類間の算術平均(単純平均)であって、枚数で重み付けをしているのではない点に注意が必要です。たとえば、キャパ1万人のホールでコンサートをする場合に、全部5,000円のチケットの場合と100枚だけ10万円のVIPチケットを追加する場合とを比較すると、後者ではJASRACへの支払いが10倍くらい増えてしまいます(後者の平均入場料は(100,000+5,000)/2=52,500円として計算されます(加重平均した (100,000×100+5,000×9,900) / 10,000=5,950円ではありません)。

また、ついでに書いておくと、乗数はチケット実売数ではなく「会場の定員数」なので、大きい会場を借りてチケット実売数が少ないと著作権料の負担が大きくなります。

たまに聞かれる話として、アマチュアの音楽サークル等がホールを借りてコンサートするときにチケットを(たとえ500円でも)有料にしてしまうとJASRACに払う著作権料で足が出てしまうので、いっそ無料にしてしまった方が負担が低いというようなことがあるようです(非営利・無報酬・無料の実演は著作権の許諾が不要なため)。

ちなみに、米国の著作権管理団体のASCAPの計算法ですとチケット総売上の何パーセントという計算方法になっています。したがって、高額のVIP席を設けつつ、子供向けの安いチケットを販売しても著作権料金の点では大きく不利になりません。また万一、チケットの売上げが低迷しても著作権料で足が出るということにもなりません。

たぶん、JASRACが現在のような仕組みにしているのはチェックのしやすさが理由なのではと思います(チケット売上げベースにすると過少申告されるリスクがあるのをいやがっているのかもしれません)。しかし、公平性という観点からはASCAP方式の方が明らかに適切と思います。

この話、ちょっと前にネットで話題になりましたのでご存じの方も多いかもしれませんが、この機会にご紹介しておきます。