2018年1月、アメリカで最大人口を誇るカリフォルニア州で“嗜好用”大麻が解禁される。

 昨年11月、大統領選挙と同時に行われた大麻合法化を問う住民投票の結果、新たに4つの州が加わり半数を超える28の州で医療用大麻の使用が許可された。アメリカ最大の医療用大麻販売センターでは、医師の許可証と身分証のチェックを受ければ大麻を購入することができる。同センターのアンドリュー本部長は「大麻の花だけで毎日40種類以上用意している。食べたり、飲んだり、塗ったり、吸ったりあらゆる方法で服用できる」と説明する。

 日本では規制されている大麻が、なぜ海外では“合法化”の動きがあるのか。『けやき坂アベニュー』(AbemaTV)では、国際ジャーナリストとして活躍するモーリー・ロバートソン氏がこの話題を解説しつつ、「知る防衛」の必要性について訴えた。

■日本では“所持”のみの罰則

 一部の諸外国で、大麻は酒やタバコよりも依存性が低く、さらに含まれる成分がエイズやがんなどの大病に役立つと認識されている。しかし日本では、2人組ヒップホップグループ・ヒルクライムのDJ KATSUこと斎藤桂広容疑者が大麻取締法違反の疑いで逮捕されたように、法律で厳しく規制されている。

 世界の大麻利用状況を見ると、“医療用”として使用されている国は多い。医療用とは、リウマチや末期がんなどで生じる痛みを緩和するケアのために使われるもの。場合によっては偏頭痛にも効くとされ、「医療においては害は少ない」と認識されている。

 “嗜好用”としては、アメリカでは8つの州で許可され、その他の国では犯罪ではあるものの罰金で済むなどグレーであることが多いのが実態だ。日本は医療用における研究・輸入は不可(例外あり)、嗜好用も違法と厳しく取り締まっている。

 とはいえ、日本でも「大麻取扱者」の免許があれば扱うことができる。大麻取扱者でない場合、大麻の所持・譲り受け・譲り渡しについては「5年以下の懲役(営利目的の場合7年以下)」と厳しく罰せられる。

 しかし、他の薬物の取締法と異なり“使用”に関しては罰則規定がない。「麻」は線維として洋服に使用されているほか、七味唐辛子には麻の実(発芽防止処理がされたもの)が含まれ、神社のしめ縄などにも使われている。所持が禁止されている一方、様々な場面で使用されている状況について、モーリー氏は「ほころびがある」と指摘する。

 「日本とアメリカの関係が影響している。日本は1945年に敗戦しGHQに占領されていた。当時、アメリカでは大麻撲滅キャンペーンを行っていて、大麻は『絶対ダメ』『悪魔の草』『人間がおかしくなる』というムードが強かった。日本では麻が自生していても大して服用していなかったが、その影響で徹底して取り締まるよう指令が出たとされている」

 その後、アメリカでは大麻が身近にある社会に変化していった。前オバマ大統領も自叙伝で高校生の時に大麻を使用していたことを明かしている。取り締まりを命じた本国内で“大麻合法化”、日本が戦後70年法律を守り続けていることにモーリー氏は「押し付けた本国が変わっているのに日本は1940年代の常識のまま進めていっていいのか、というほころびが見えている。その議論の扉を開きたい」と主張した。

■賛成派と反対派の主張とは?

 では、大麻「賛成派」と「反対派」の考えはどのようなものなのか。

 賛成派が主張しているのは、「合法化した方が適切に管理できる」「新たな税収になる」「医療面、科学面の研究で他国に遅れをとらないため」といったもの。さらに、モーリー氏は「知ることの防衛が必要」と補足する。

 「どの国も若い人から広まる傾向があるが、日本のテレビで大麻の話題はやっていない。やるのは逮捕された時だけとなってしまうと、大麻がどういったものなのかわからなくなる。実際、覚せい剤との違いをすぐ言える人は日本に少ないと思う。毒性のレベルが覚せい剤とは全然違って、それがわからないまま大麻から覚せい剤にいってしまう。知ることの防衛が必要。」

 一方、反対派が主張しているのは「他の中毒性の高い薬物の入り口“ゲートウェイドラッグ”になっている」「管理が困難」「報告書によって効果がばらついている」といったこと。薬物への入り口が反対派の根拠にあり、栽培したものを他人に売るのではないか、脳に悪い・がんに効くと報告にばらつきがありリスクがある、と懸念している。

 双方の主張に対しモーリー氏は「科学者同士でもメリット・デメリットの見解が分かれている。その実情を広く社会でも知ってほしい。議論の対象に載せたいと思っている」と自身の考えを述べる。

 「お酒とタバコは日本人の社会に普通にあって、アルコール依存やタバコの中毒性などのデメリットもあるのに、我々はあることに慣れてしまっている。それは管理できているから。日本では『わざわざ寝た子を起こすな』『子供が大麻に興味を持ったら大変じゃないか』という反応ももちろんある。しかし、若い人はちゃんと毒性を知った方がいい。大人の価値観で縛らずに広い所で議論をした方がいいと思う」と問題提起した。

(AbemaTV/『けやき坂アベニュー』より)

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