てつこは信頼していた人物から愛想をつかされてしまった。
ちょっとした失敗から、相手の信頼を失ってしまった。
先日から涙が止まらない。
泣いても泣いても出てきてしまう。
こうなると思考回路が停止してしまう。まともなことが考えられない。
気持ちが悪い。胃がキリキリと痛む。
親しい人間が少ないてつこにとって、その人物との縁が切れれば本当に一人になる。
ふと気付く。
ああ、てつこもてつ父&てつ母と同じ状況になっているな、と。
てつ父は友人を元々作らず、会社を辞め、国の保護を受け、独身で生活している。
てつ母も友人親戚とは縁が切れ、仕事もせず、独身で生活している。
てつばあとてつじいも、てつ母に振り回され、親戚にも相談できず、搾取される日々だった。
てつ家の登場人物は、いつもひとりぼっち。
てつこは会社に勤めてこそいるが、ひとりぼっち。
こんなにも、親や親友といった大事な後ろ盾がないのが厳しいことなのかと痛感する。
こんなにも、不安定で身寄りがない寂しさが辛いのかと痛感する。
てつこには何もない。
得てきたものも、自身が大切にしてきたことも。
上手く生活していると思っていたのに、そんなことなかったのだ。
ただ何も見えていなかっただけ。
親と同じになりたくないと、あんなにも子どもの頃から強く願っていたのに
何一つ実現できていなかった。
てつ父にもてつ母にも、逃げ込める場が無かった。
悪循環の原因はわかっていた。
なのに、てつこは自分自身にそれを生かせなかった。
何も学べていなかった。
手を差し伸べてくれた友人の、その手を払ったことを今後悔する。
ざまあみろと黒いてつこが罵る。
「一人でも大丈夫と一瞬でも思ったんだろ?なら一人で生きて見せろよ」
今ここで心が折れて仕事を休めば、てつこは社会との繋がりすら無くなる。
必死で鬱や幻聴妄想に立ち向かう。
「暗黒面」に落ちればもう戻ってこれない気がする。
それくらいとても辛い。
心が安定して穏やかに生活していた数日前が羨ましい。
またあんな日々に戻ってこれるのだろうか。
ただ、これからもこんなに辛い日が来るのであれば全てが嫌になってしまう、
そんな気持ちすら芽生え始めている。
てつ家の負の連鎖は断ち切れるのだろうか。