[特別国会閉幕] 論議深まらず疑惑残す
( 12/9 付 )

 特別国会はきょう閉幕する。6月に終わった通常国会から5カ月ぶりの本格論戦の場だったが、論議は深まらず実りは乏しかった。
 安倍晋三首相は当初、質疑なしでしのごうとしていた。森友・加計学園問題でどう説明責任を果たすかが一番の焦点だったが、追及を避けようとする姿勢だけが目立った。
 首相は「丁寧に説明する」と繰り返すものの、これでは真相解明に至るはずもない。疑惑は深まるばかりだ。
 森友問題では一定の成果があった。
 財務省は森友学園への国有地売却を巡る交渉の音声データの存在などを認めた。データは、先の通常国会で理財局長だった佐川宣寿国税庁長官が売却の適切さを明言した答弁と矛盾するものだ。
 さらに、購入を希望した別の学校法人に財務省近畿財務局が2012年、撤去費を約8430万円と見積もっていたことを示す資料が明らかになった。森友学園に示した約8億円をはるかに下回る。
 会計検査院も売却額の算定をずさんと指摘した。
 国有地売却が不適切とされているにも関わらず、首相は野党が求めた売買契約の検証や再調査を拒否した。
 佐川氏の昇格人事に対しては「適材適所」と述べたが、到底理解できない。
 この問題に対する国民の不信や不満は払しょくできていない。
 政府は幕引きを図ることなく全容を明らかにする必要がある。売却手続きが不適切であれば、売却にかかわった担当者の責任を問うべきだ。
 一方、与野党は質問時間の配分で紛糾した。従来の割合は与党と野党で「2対8」だが、自民党の要望により与党分を増やした。
 法案の作成過程で議論する機会のある与党の時間が少ないのは当然だ。
 衆院選を機に野党第1党が分裂した野党側は、政府を追及するテーマにばらつきがあり、連携不足が目立った。
 党首討論は00年の制度導入以来、初めて年間を通じて行われなかった。衆参両院の憲法審査会は各1回にとどまった。
 首相の言う「建設的な政策論議」とは程遠い国会だったといえよう。
 看板政策「人づくり革命」の財源確保や観光促進税構想で、官邸主導が顕著だったことも懸念材料だ。自民党は官邸に対し、影響力を失いつつあるのではないか。行きすぎた「官高党低」では、活発な議論は期待できない。

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