トルコのエルドアン大統領、ギリシャ国境線引いた条約に異論
トルコ大統領として65年ぶりに隣国ギリシャを訪問したレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は7日、第1次世界大戦後にトルコ国境線を決めた1923年のローザンヌ条約が公正に適用されていないと主張し、ギリシャの反発を読んでいる。
ギリシャのプロコピス・パブロプロス大統領は、ローザンヌ条約を見直す必要は全くないと反論した。
両国とも北大西洋条約機構(NATO)に加盟するものの、互いの関係は長年にわたってぎくしゃくした状態が続いている。
両国間の緊張の背景
トルコとギリシャは数多くの対立を抱えている。1996年には、エーゲ海にある複数の無人島の領有権をめぐって戦争の瀬戸際にまでなった。
南北に分断されたキプロスの和平をめぐっても対立が続く。トルコは1974年に、ギリシャ政府の後押しを受けた軍のクーデターがキプロスで起きたのを受けて、島に侵攻した。
トルコは、ギリシャ北東部に住むトルコ系の少数派イスラム教徒の権利が守られていないとギリシャ政府を非難している。エルドアン大統領は訪問先のアテネで、政府指名ではなく、住民たち自らムフティ(イスラム法学者)を選べないことを問題視した。
トルコ政府はさらに、昨年のクーデター未遂事件に関わったとされる兵士8人についても、ギリシャの対応に不満を表明。ギリシャに逃亡した兵士たちについて、トルコは強制送還を求めたものの、ギリシャの最高裁判所が差し止めた。これについてエルドアン大統領は今回、8人の強制送還をあらためて要求したと述べた。
一方のギリシャは、トルコが繰り返し領空や領空を侵犯していると非難している。
2国間の対立はギリシャがオスマン帝国から独立した1830年代までさかのぼることができる。
エルドアン大統領のギリシャ訪問
ローザンヌ条約をめぐる率直なやり取りは、エルドアン大統領のギリシャ訪問初日に開かれた記者会見で起きた。
2日間の日程でギリシャを訪れたエルドアン大統領は、ギリシャ国内のイスラム教徒の扱いは、ギリシャ政府による条約不履行の証拠だと主張した。
エルドアン氏は、「投資という面で必要な支援が提供されていない。(中略)また差別も存在する」と述べ、条約内容の一部はさらに明確にする必要があると語った。
これに対し、ギリシャ有数の法律学者でもあるパブロプロス大統領は、「我々にとってこの条約に再交渉の余地はない。この条約に欠落はなく、見直しや改訂の必要もない。この条約は今の状態で有効だ」と語った。
会見でエルドアン氏の隣りに座っていたパブロプロス大統領はさらに、「我々の間の意見の相違や対立は、大げさな物言いや挑発のない、お互いの意見を尊重する態度を持って、建設的なやり方で語られるべきだ」と述べた。
エルドアン大統領が「歴史的」と呼ぶ今回の訪問では、インフラ整備の共同計画などに署名が行われる予定で、アテネで取材するBBCのマーク・ローウェン記者は、両国の政府は2国間関係の新たなページを開きたいと考えていると指摘した。
(英語記事 Turkey's Erdogan calls for border treaty review in Greece visit)