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【経済】教育無償化 財源に不安 「人づくり」閣議決定政府は八日、持続的な経済成長を目指す「人づくり革命」と「生産性革命」の具体化に向けた政策パッケージを閣議決定した。人づくり革命は二兆円の予算規模で、二〇一九年四月に幼児教育の無償化を五歳児など一部で開始。二〇年四月には三~五歳児で全面的に実施する。生産性革命では、賃上げに積極的な企業の法人税の引き下げなどを盛り込んだ。 人づくり革命の財源は一九年十月に予定する消費税率10%への引き上げに伴う増収分の一兆七千億円に加え、経済界が三千億円を負担する。子育て世代の家計負担を減らし少子化に歯止めをかける狙い。ただ無償化の対象の線引きなどについては結論が出ず、詳細な制度設計は来夏に先送り。各政策の予算の内訳についても明記しなかった。 幼稚園、認可保育所、認定こども園の無償化は親の所得を問わず三~五歳児全員が対象。サービスが多様で線引きが難しい認可外保育所の対象範囲は来年夏までに決める。ゼロ~二歳児は住民税が非課税の年収約二百五十万円未満の低所得世帯に限定し無償化する。 大学や短大、専門学校など高等教育の無償化は、住民税非課税世帯を対象に二〇年四月から実施。国立大は授業料を免除し、私立大はこれに一定額を上乗せして助成する。政府が授業料を肩代わりする「出世払い」制度は検討を続ける。 公明党が求めていた私立高校の授業料の無償化は対象を年収五百九十万円未満とし、財源は二兆円とは別に捻出する。このほか待機児童対策として保育士の賃金を一九年四月から月額で約三千円引き上げる。 生産性革命は設備投資した中小企業の固定資産税の減免措置などを掲げ財源や予算規模は示さなかった。 ◆将来の負担増懸念 改憲もにらむ政府は看板政策に掲げる「人づくり革命」の大枠を決めた。だが、政府や与党内で無償化の中身を議論しないまま、安倍晋三首相が十月の衆院選の主要公約にしたため、詳細な制度設計を後回しにした「バラマキ」に近い内容となった。 教育の無償化は衆院選直前になって突如、消費税の増税(二〇一九年十月を予定)による増収分を財源として実行することになった。政府の有識者会議で制度の詳細な中身と財源が検討中だったが「選挙で票が得られる政策」とみて、安倍首相がトップダウンで実施を決めた。 確かに教育無償化が進めば、子育て世帯では家計の圧迫要因が減る可能性がある。もとは公明党の公約だった私立高校の無償化も財源にあてのないまま、安倍首相が衆院選前に検討をすんなり約束した。首相は悲願の憲法改正にこぎつけるため国民だけでなく、公明にも配慮しているようにみえる。 無償化の範囲だけがどんどん拡大し、財源は国民生活に打撃となる消費税の増税分だけでは足りず、既に当初予定の二兆円を超えている。憲法改正をにらんだ安易な無償化は結局、国の借金を膨らませ、未来の子どもたちの負担を増やしかねない。 (桐山純平) 関連記事ピックアップ Recommended by
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