国宝や重文の管理 首長のもとで 文化庁審議会が答申

国宝や重文の管理 首長のもとで 文化庁審議会が答申
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国宝などの文化財を、地域の観光資源などとして活用しやすくするため、文化庁の審議会は、管理などを今の教育委員会から、知事や市町村長の下に移すことなどを認めるべきだとする答申をまとめました。専門家は「行政が主導して観光や町おこしに文化財を活用しやすくなる一方、文化財の価値が損なわれないよう、慎重な運用が必要だ」と指摘しています。
これは8日、文化庁の文化審議会が宮川文部科学政務官に答申しました。

国宝を含む文化財は、今の法律では教育委員会が一元的に保存・管理するよう定められています。答申では、一部の自治体から文化財の保存を重視するあまり、観光や町おこしなどに活用しづらいという要望があることなどを踏まえて、管理や保存を知事や市町村長の判断で、首長部局に移すことを認めるべきだとしています。

さらに、国宝などを一般公開する日数も、現在の年間60日以内という一律の基準を見直し、材質が石や金属などの文化財は150日まで認めるとしています。

奈良県では、寺院や古墳など数多くの文化財を観光資源などに活用するため、2年前に知事部局に「文化資源活用課」を新たに設置しました。

今月から県庁に展示されているのは、世界遺産の春日大社で去年、20年に1度、社殿などを修復する式年造替の際に、本殿の板塀から剥がされた壁画です。いずれも昭和50年に描かれたものを修復したということで、県の担当者は「まちの魅力を高めるために柔軟に文化財を活用したい」と話しています。

一方、答申では文化財が損失することがないよう専門的な職員を配置するなど、環境の整備が必要だとも提言しています。

国立文化財機構東京文化財研究所の亀井伸雄所長は「活用によって文化財の普及が進むことは望ましいが、建造物から絵画、書物など文化財の種類はさまざまで、活用に適さないものもある。文化財の価値が損なわれないよう、慎重な運用が必要だ」と指摘しています。

多くの文化財抱える奈良県は

国宝などの文化財が豊富な奈良県では、地域の資源として積極的に活用しようと、おととし4月、知事部局に「文化資源活用課」を新設しました。

文化資源活用課では、県内各地に数多くある文化財の情報を集約したデータベースを作成して広く一般にも活用してもらうためホームページで公開しています。

さらに、観光プロモーション課でも、今月から奈良公園に近い県庁の玄関ホールに、春日大社の国宝の本殿を修理した際に剥がされた壁画を展示して、観光客などが間近に鑑賞できるようにするなど、文化財の活用を積極的に進めています。

奈良県の一松旬副知事は「知事部局に移管することで、国やほかの自治体との連携や情報発信力をより強化できる。文化財の保存と観光振興のために活用を進める上で知事部局に移管するメリットは大きい」と話しています。

国宝や重文の管理 首長のもとで 文化庁審議会が答申

国宝などの文化財を、地域の観光資源などとして活用しやすくするため、文化庁の審議会は、管理などを今の教育委員会から、知事や市町村長の下に移すことなどを認めるべきだとする答申をまとめました。専門家は「行政が主導して観光や町おこしに文化財を活用しやすくなる一方、文化財の価値が損なわれないよう、慎重な運用が必要だ」と指摘しています。

これは8日、文化庁の文化審議会が宮川文部科学政務官に答申しました。

国宝を含む文化財は、今の法律では教育委員会が一元的に保存・管理するよう定められています。答申では、一部の自治体から文化財の保存を重視するあまり、観光や町おこしなどに活用しづらいという要望があることなどを踏まえて、管理や保存を知事や市町村長の判断で、首長部局に移すことを認めるべきだとしています。

さらに、国宝などを一般公開する日数も、現在の年間60日以内という一律の基準を見直し、材質が石や金属などの文化財は150日まで認めるとしています。

奈良県では、寺院や古墳など数多くの文化財を観光資源などに活用するため、2年前に知事部局に「文化資源活用課」を新たに設置しました。

今月から県庁に展示されているのは、世界遺産の春日大社で去年、20年に1度、社殿などを修復する式年造替の際に、本殿の板塀から剥がされた壁画です。いずれも昭和50年に描かれたものを修復したということで、県の担当者は「まちの魅力を高めるために柔軟に文化財を活用したい」と話しています。

一方、答申では文化財が損失することがないよう専門的な職員を配置するなど、環境の整備が必要だとも提言しています。

国立文化財機構東京文化財研究所の亀井伸雄所長は「活用によって文化財の普及が進むことは望ましいが、建造物から絵画、書物など文化財の種類はさまざまで、活用に適さないものもある。文化財の価値が損なわれないよう、慎重な運用が必要だ」と指摘しています。

多くの文化財抱える奈良県は

国宝などの文化財が豊富な奈良県では、地域の資源として積極的に活用しようと、おととし4月、知事部局に「文化資源活用課」を新設しました。

文化資源活用課では、県内各地に数多くある文化財の情報を集約したデータベースを作成して広く一般にも活用してもらうためホームページで公開しています。

さらに、観光プロモーション課でも、今月から奈良公園に近い県庁の玄関ホールに、春日大社の国宝の本殿を修理した際に剥がされた壁画を展示して、観光客などが間近に鑑賞できるようにするなど、文化財の活用を積極的に進めています。

奈良県の一松旬副知事は「知事部局に移管することで、国やほかの自治体との連携や情報発信力をより強化できる。文化財の保存と観光振興のために活用を進める上で知事部局に移管するメリットは大きい」と話しています。