3冊を貸し出し中止に
神奈川県海老名市にある市立中央図書館が、タイなどの風俗に関する観光案内の本を、貸し出し中止としたことが分かった。
産経新聞の報道によると、同市の教育委員会が5日に決定したもので、貸し出し中止に該当する本は3冊。
教育委員会関係者の言葉として「(本の)前半部分はグルメや観光について書かれていたが、(性的サービスを提供する風俗店の紹介は)見切れなかったところもあった。選定基準内だが、疑念を抱かせる可能性がある」を掲載している。
また共同通信の記事では、同じく教育委員会関係者の発言として、「選定基準で不適切としている成人向けではなく、他の地方自治体の公立図書館では貸し出されている」や「内容が望ましくない上、選定に疑念を抱かせないようにするため、中止を決めた」と掲載している。
苦しい言い訳
産経新聞の記事に「見切れなかったところもあった」とある。
海老名市議会などで、選書に問題があるとして、オープンの延期を求める声もあったが、予定通りに進めて無理が生じた格好だ。
共同通信の記事にある「他の地方自治体の公立図書館では貸し出されている」も、選書にあたっての判断基準の1つとしてはともかく、改めての主張には「他がやっていれば良いの?」との疑念や、「前例踏襲」「横並び」との批判を浴びそうだ。
エンブレム問題と同じ根っこ
産経記事の「選定基準内だが、疑念を抱かせる可能性がある」と、共同記事の「選定に疑念を抱かせないようにするため」は、表現こそやや異なるものの、同じ内容だろう。
「選定基準内」とするのであれば、「疑念など関係ない」と突っぱねて貸し出しを続ける手もあったはずだ。
しかし貸し出しを中止したことで、選定基準や関係者のチェックに問題があったことを認める形になる。
この辺りは東京オリンピックのエンブレム問題における、責任所在のあいまいさや、公募手続きや選考基準の不透明さに通じるものがある。
リニューアルにあたって購入した本の選択のどこに問題があったのか、きちんと確認しなければ、また同じ問題が起きるに違いない。それとも「指摘されたら外せば良い」と考えているのだろうか。
本は心の栄養
海老名市のホームページには、教育委員会のコーナーがあり、今回の選書でチェックに関わった伊藤文康教育長が、定期的に「教育長メッセージ」を発表している。
10月6日のタイトルは「本」だ。全文は直接サイトを読んでもらうとして、次の内容がある。
(前略)私は、すべての子どもたちに、読書家になってほしいとは望みませんが、自分の好きな本の一冊に出会ってほしい、見つけてほしいと思っています。
子どもたちの心の栄養になるような素敵な本に。
(中略)子どもたちと本との出会いを演出することが、私の大事な仕事だと思っているところです。
海老名市の市立中央図書館は、子供だけが利用するところではないが、この考えを持っていて、あの選書になるのだろうか。