釣りと魚を愛するライターの玉置です。銀座8丁目にある「羽田市場」という魚屋さんをご存知でしょうか。
ざっくりいうと、産地でしか食べられていない隠れた宝のような魚や、旬を迎えた本当に美味しい魚を、全国の漁師さん達からなるべく高く買って、飛行機など最速の輸送手段で羽田空港内にある自社の荷捌き場へと集め、その価値を理解してくれる販売店や飲食店へと卸している流通屋さんの直売店です。
この店は銀座界隈の飲食店さんから、実際に魚を見てから買いたいという要望に応える形でオープンした業務用販売が中心のお店ですが、私のような一般客でも購入可能です。
驚いたのはその個性的な品揃え。誰でも知っている一般的な魚だけではなく、普通の魚屋ではまず並ばないような魚達が、獲れたてピッカピカの状態で並んでいるのです!
▲「え!」ってなったラインナップ
スズキやキンメダイならともかく、イトヒキアジやヘダイやなど、それなりに魚を食べてきた私でもピンとこない魚が堂々と並んでいる様子に、胸がときめかない訳がありません。
羽田市場を名乗るだけあって、北海道や九州、あるいは八丈島などの離島からは、飛行機に乗った魚が集まってくるそうです。そしてその魚を仕分ける荷捌き場が羽田空港内にあるからこそ、どの流通経路よりも早く魚が届くという仕組みを聞いて、鮮度の良さに納得です。
▲全国から本当に旨い魚を集めています
これまでの鮮魚流通に比べて、時間と中間業者を大幅にカットした“超速”の魚が、この羽田市場の商品。漁師さんからダイレクトに仕入れているので、「いつ」「どこで」「だれが」「どのような漁法で」獲ったのか、さらにどのような鮮度管理と流通経路でここに運ばれてきたのかまでを、店員さんがしっかりと把握しています。
朝獲れの魚がその日のうちに運ばれてくるため、魚が一番揃うのは午後2時くらい。私が訪れたのはお昼時の魚が一番少ない時間帯だったので、次は大きめの保冷バックを持って入荷時間に合わせてこなくては!
▲北海道、九州、八丈島など、飛行機に乗ってやってくる鮮魚たち
まずは海鮮丼に圧倒されてみてください
今回は魚を買うのではなく、いろいろな味が楽しめる「羽田海鮮丼」で、羽田市場のポテンシャルを味わってみたいと思います。
▲これが食べたくてお昼にやってきたんです
この日のネタはマグロやアマエビなどに加えて、フエフキダイ、ヘダイ、チカメキントキなど、たぶん日本中でここだけというラインナップでした。いいぞいいぞ。
「そりゃ知名度は低いかもしれないけれど、うまい魚は日本中にたくさんあるんだぞ!」という熱い想いが伝わってくる一杯です。
▲ちゃんと魚の名前が書いてあるのが嬉しい
▲様々な魚が入ったアラ汁がうまい
いやー、すごかったですよ。
今までに何杯も海鮮丼を食べてきましたが、1,000円以下でこのクオリティというのは初めてです。魚に興味のある人にこそ試してみてほしいのですが、パッと見は似たような白身の刺身でも、しっかりとその個性の違いが味わえます。これが楽しい。
そして魚の質だけではなく、料理としての完成度が高いのにも驚きました。赤酢のシャリがうまいんだ。
▲うまそうでしょう。うまいんですよ
待望の立ち飲み業態スタート!魚屋さんの本気を見た
ここの鮮度抜群の魚で一杯やりたいなー。
海鮮丼もいいけど、刺身もやってくれないかなー。
さらにひと手間加えて、焼き魚や煮魚なんかも出してもらえないかなー。
できれば持ち帰りではなく、この場で食べられた最高なんだけどなー。
なーんて思っていたら、まさかの立ち飲み屋がオープンしたんですよ!
魚屋の営業が終わる午後6時から、羽田市場銀座直売店は立ち飲み屋になったんでーす!
▲やったー!
という長い前振りを踏まえまして、ただの立ち飲み屋とは魚のレベルが違うこの店を、熱くレポートさせていただきます。
同行いただいたのは、私の適当な呼びかけに手をあげてくれたカメラマンの坂さんと、カメラ映えする池田さん。お二人には取材であるということはあまり考えず、好き放題に注文していただきました。ただし割り勘で。
▲お酒好きという以外の共通点が一切ない初対面の二人
店内に入ると、魚が並んでいたカウンターには小皿と箸が置かれ、産地が書かれていたホワイトボードには魅力的なメニューの数々が!
▲この雰囲気、楽しそうでしょう
▲メニューをじっくりと拝見する前に、とりあえず生ビールで乾杯しましょうか。池田さんの飲みっぷりがフォトジェニックだな
さあさあ、まずはなにをつまみましょうか。
せっかくなのでこの記事を読んでくれているあなたも、この店にきたと思って、一緒にツマミを選んでみてください。
▲一つ一つを音読したくなる魅力的なメニュー
ホワイトボードの左側には、ひと手間加えた自家製料理の数々が並んでいます。魚屋が遊びでやっている訳じゃないぞという、羽田市場の本気度が伝わってくる迷い放題のラインナップ。
正直なところ、立ち飲みにしては値段がちょっと高いかなとも思いましたが、ここの鮮魚がどんなクオリティなのかを知っているので、期待は高まるばかりです。
▲迷う、これは迷うね
そしてホワイトボードの右側は、本日のお刺身と鍋に煮魚。さすがは魚屋直営というラインナップに興奮が止まりません。できることなら刺身は全種類制覇したいところですが、まずはおまかせ5点盛りを頼んで、心を落ち着かせましょう。
こうしていくつか料理を注文したところで、二人が壁を見ながら腕組みをしてニヤついています。
▲「この酒のラインナップたるや。これは腰を据えてかまえねば」いや、立ち飲みだし
二人の目線の先には、こだわりの蔵元を口説いて仕入れたという日本酒や焼酎の数々。
あのフードメニューとこのドリンクメニューの組み合わせを考えていたら、そりゃ腕組みもしたくなりますね。
▲もう財布のひもは全開だぜ
しばらくしてやってきた刺身の5点盛りは、羽田市場の本領発揮ともいえるマニアックさ。
写真の左上から時計回りに、マグロ、マハタ、ホラガイ、ヒラメ、タカノハダイ。しっかりとエッジの立った切り口が素敵!切れてる!(ボディービルの応援のように)
秋田出身の池田さんが「ハタ?あ、ハタハタですか!」と聞いていましたが、マハタは南の海に多い高級魚ですよ。
▲魚の鮮度と包丁の冴えが伝わったでしょうか
これこれ、これです。私がこの店で食べたかった刺身がまさにこれ。よく知ってる魚だけど高品質なものと、よく知らないけれど食べるとうまい魚の組み合わせが最高じゃないですか。ホラガイなんて店内の水槽から出したばかりですよ。
店長「うちの店は、一般の人が名前を聞いたことのないような魚も積極的に扱っています。たとえば今日ならメイチダイやタカノハダイ。これが美味し~いんですよ。ニシンも刺身で食べてもらいたかったんですけれど、引き合いが多くて全部売り切れてしまいました。どの魚も鮮度がいいから生でうまいのはもちろんですが、熱を入れるとまた旨味が増します。だから料理は刺身だけという訳にはいきません。魚屋ですが糠漬けまで自家製ですよ!」
▲貝好きにはたまらない味がするホラガイ
▲落ちそうになるほっぺを抑える坂さん
いくら魚の質が最高でも、それを捌く料理人の腕が悪かったら台無しです。その点、この店は立ち飲みスタイルとはいえ、お一人様ウン万円の寿司屋で働いていてもおかしくないという料理長の柳さんが、熟練の技で調理を担当しているという贅沢仕様。
ちなみにたまたま同席したここの社長の話では、5点盛りの1,200円は原価割れだとか。ツマのワカメやミョウガもおいしかったです!
▲聞けばなんでも説明してくれる料理長の柳さん
▲料理長の手つきにほれぼれしている池田さん
店長「この店の立ち飲み営業は10月20日にオープンさせたばかりです。本業は漁師と販売店を結ぶ鮮魚の流通ですが、この直売店を構えることで、魚を買ってくれる人の顔が直接見えるようになりました。そうすると、次は食べている人の顔が見たいってなりますよね。我々は自信を持って新鮮で価値のある魚を扱っていますが、お客さんがおいしそうに食べているシーンを確認できる事業のひとつに入れることで、モチベーションがぐっと上がるんです。仕入れさせてもらっている漁師さんは、何十年と魚を獲っているのに出荷した魚を食べている人の姿を想像すらしたことがないと言います。そういう人に私たちからお客さんの様子を届けられるし、お客さんにどんな漁師さんが獲っているのかを伝えることもできます。それがうれしいですよね」
▲メガハイボールを運んできてくれた店長の石井さん
こういった熱い話を聞いた後だと、酒もつまみもさらにおいしく感じられますね。
さあここからは、取材であることを忘れて楽しませていただきましょう。
それでは怒涛の注文をご覧ください!
▲貝好きなのでツブガイのオリーブオイル炒めを注文。生とは違う旨味がビールに合う!
▲鮟肝の酒蒸しもあるけれど、あえて旨煮を頼んでみた。これがフワフワの絶品なんだ
▲まだ海水が温かいこの時期だけしか味わえない、とろけるような自家製イクラ
▲「やばい…これは日本酒だ!」
▲「どれくらい注いでくれるのかな~」
▲「こぼしちゃう系かな~、ビクターの犬みたいに待ちますよ~~」
▲「く~~~~!ジャスティス!正義!!」
▲ほっとする味の自家製トビウオのさつま揚げとひじきの煮物
▲ホヤとこのわたで作るばくらいまでも自家製!
▲そして全種類頼むんじゃないかというペースで消費されていくお酒
▲明らかに獲れたてのアマエビがやばかった
▲ちょっとちょっと、東京でこの鮮度はなかなかないですよ
▲このように内臓をチューっと吸い尽くしても臭みはゼロ
▲天然のマダイを使ったカブト煮がまたうまいんだ
▲捌いたイカからとった墨袋を使った、イカスミ入りの寄せ鍋なんてのも
▲肝が乗ったカワハギの刺身に食べる前から悶絶!
▲我が人生で一番美味しかった気がするタラ白子ポン酢。張りがすごいのよ
▲いやー、楽しい酒だ
▲マナガツオの西京漬けなんて、高級料亭クラスの味ですよ。いったことはないけれど
▲立ち飲みだけど、池田さんの目が座っているな
▲メニューにはなかったけれど、〆に寿司を握っていただきました。ザギンでシースーですよ
▲この日、同じ時間を過ごした人たちと記念写真。ついでにキノコ狩りの約束をしたりして
そんなこんなですっかり長居をさせていただきました。
普通の立ち飲み屋と比べると、ちょっとお高い値段にはなってしまいますが、それは比べる方が間違いというものです。素材のクオリティと料理のレベルを考えると、決して高くはないと思います!
紹介したお店
羽田市場 銀座直売店
住所:東京都中央区銀座8-15-6 クリスタルスクエア1F
TEL:03-4582-2394
公式ページ:Tokyo Haneda Market 羽田市場 銀座直売店
プロフィール
玉置標本
趣味は食材の採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は古い家庭用製麺機を使った麺作りが趣味。