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富士山の事故報告

今回の我々の行動を記載します。12月1日(日)天気:晴れ 気温:山頂付近氷点下約15度 風速:約5mスタート口:御殿場コース 同門よりスタートする。スタート時間:早朝4:00仲間2人でスタート 4合目辺りで後からスタートした仲間2名と6時半ごろ合流4名でブル道から通常の登山道を登る。5合目辺で7合目近くにテントが見えました。その先を5名のパーティーを発見8時50分頃、7合目、日ノ出館に到着。先行者5名は7.9合の赤岩館にいるのが確認出来ました。彼らはそこで少し休憩しているのを確認しました。我々が7合目から山頂に向けて移動すると同じ時間帯に彼らも動き出しました。我々は10時ごろ8合目に到着、少し休んだ後、山頂を目指しました。8合目からは先行者の確認は出来ませんでした。恐らく8合目の上の大弛沢を登っているとの認識でした。10時20分頃、8合目の見晴らし館に到着。先行者5名は九十九折りの下側、雪の浅い場所を登っていました。見ていると我々の半分くらいのゆっくりした登りでした。凍りついている場所では立ち止りそろそろ歩きでどうみても氷の山は慣れていないのが見ていて分かりました。我々が登り始めてすぐに、その中の1名が理由は分かりませんが下りてきて途中、すれ違いました。後で分かったことですが、気分が悪くなったようです。

9合半辺りで先行者が止まり、下からは休んでいるのか分かりませんが止まっているのを確認しました。我々は先行者がいる直下およそ70~80m下まで来ました。その時に上から5cm~10cmくらいの氷の塊がバラバラ落ちて来ました。彼らは氷の斜面をピッケルで掘っていました。休憩するバケツ掘りです。我々はそれを直接受ける羽目になりたまらず、大声で叫びました。3回ほど叫んだのですが、気がつかないのか最後に大声で叫んでやっと止まりました。彼らとお会いしたのは、恐らく11時ごろかと思います。そのすれ違う時に氷を掘っていた方々はすみませんでしたと誤ってきました。ただリーダーらしき人は少し離れた場所にいて横を向いていました。彼らの足元にはザイルが置かれていました。場所が岩場でしたので恐らくこの岩場を登るのだとその時は思っていました。10~15分くらい、我々は登山道伝いに登り何気なく振り返った時は、4名がザイルでつながれた状態で滑落して行くのを目撃しました。物凄いスピードで雪の斜面を滑り落ち、そのあと岩場の有る場所に突っ込み転がりながら落ちて行きました。一瞬でした。その時、仲間が岩場から落ちたと言っていました。なんでこんな凍っている場所でアイザイレンなんだと驚きました。通常は経験豊富な人が先行して足場を確保して1名ずつ釣りあげます。凍っている場所でのアイザイレンはありえません。

落ちた彼らは身動きしないのがわかり、その場で即、警察に連絡をしました。我々もすぐに救助に行かないと行けないと分かっていましたが、我々の中に女性がおり彼女は滑落の現場を目撃したので怖くなり動けなくなりました。場所は凍りついた斜面です。警察から安全を確保して山頂から電話を下さいと言われ固まった仲間を落とさないように山頂に連れて行きました。山頂には11時45~50分頃到着しました。山頂から警察に連絡をとり落ちて行った状況を詳しく話しました。我々は同じ所を下りるは危険と判断して富士宮コースを見に行きました。コースを覗くと1名登ってくるのが見え、その方にコース状況を伺うとアイゼンの爪が浮いたと言われ危険と判断して剣ヶ峰下側の馬の背からのブル道を確認しに行き通れそうなのでそこを下り9合半までおりました。そこからブル道はバリバリに凍りついていたので少し通常の登山道と途中、沢が吹きだまりでしたのでそこを利用し8合目少し上までおり、そこからブル道を使い御殿場コースにトラバースしました。12時40分頃現場に到着しました。滑落現場に行くと知らない女性がいました。彼らの仲間のようでした。また、たまたま通りかかった私のブログを見てくれている方がおり一緒に救助を始めました。現場の状況は悲惨の一言です。皆さん血だらけです。1名は少し上で心肺停止状態で残りの3名はかたまって横たわり動けない状態でした。でも意識はあり彼らと会話することが出来ました。

一人は背中が寒いと言ったので皆で持ち上げ下にオレンジのシートを引き隣の黄色いウエアーの方は足が折れているように見えました。寒そうに震えていましたので私が持っているブリザードバックを取り出し彼の体をみんなで持ち上げ胸のあたりまで何とかいれることができました。又、予備のダウンがありましたのでそれも彼にかぶせました。彼は我々に申し訳ないと言っていました。そのあと警察に連絡をとり現場の状況を話しました。警察は始め3~4時間で富士宮から救助隊が行きますと言っていました。13時近くの我々からすると16時から17時では怪我人の体力が持たないと感じました。もう少し早まらないかと言うと逆に場所が8合目ですからもう少し時間がかかるかもしれないと言われました。最後はことによると二次災害の危険性もあるので明日になるかも知れないと言われました。その間、救助用のヘリが何度も接近してきました。風速約15~16mでは機体は大きく揺れていました。そのうち、来なくなり電話したところ気流が悪くおまけにガスが出て視界が悪いので行けませんと言われました。私は感情的になり彼らを見殺しにするのかと言いました。その時に風とガスが収まればもう一度くらいは行けるかも知れないと言ってくれました。我々の場所は沢で日陰でしたので風速約15~16mと氷点下14度では耐えられない状態でした。通常なら予備のダウンでしのぐのですが、それも怪我人に使ってしまい身体に巻きつけるものはなく、皆震えだしました。でも必死に怪我人に言葉をかけ励まし続けました。この高さでは登ってくる救助隊では間に合わないことは分かっていました。期待していたヘリも来なくり我々の置かれている立場は非常に危険な状態になりました。周りの雪も気温の低下で凍りだしました。このままでは我々自身も危険と判断して警察に電話をしました。警察は、皆さん、大変だと思いますが、引き上げてくださいと言われました。救助に当たっている人がそこで死んでは大変だと言う事です。そこで私は残しておく彼らのためにテントをヘリで落としてくれるように話しました。テントの中に収容出来れば救助隊が来るまで持ちこたえる事が出来るかもしれないと思ったからです。しかし、帰ってきた答えは気流とガスの関係で無理だと言われました。

そこで皆と相談してここを離れることにしました。彼らの仲間の女性は泣いていました。決断がつかない感じでした。私は話していた警察官に彼女を説得してもらい私も降りるように言いました。話がすんで怪我人の所に行くと、怪我した女性が歩けそうだと言われ、本人も大丈夫と言っていましたので仲間がアイゼンを履かせました。彼女はよろけながらも歩けましたので全員で協力しながら降りることにしました。ただ女性は胸をやられているらしく背負うことは出来ない状態でした。わかれる際、残した彼らに言葉が無くただただ土下座して泣きました。心が裂けそうでした。別れる際もう一度彼らに必ず救助隊が来るから頑張ってくれと言いました。黄色いウエアーの方は有難うございましたと言ってくれました。そのあと、我々は怪我をした女性と仲間の女性、計7名で凍りついた斜面で怪我人を支えながらおりました。途中、私は警察に電話してせめて宝永山まで迎えに来てくれないかと頼みました。宝永山から来てくれれば駐車場まで1時間、そのあと救急車で即、対応できたからです。でも警察は全ての人が救助に出払って対応できる人はいないと言われました。仕方なく御殿場コースを下りました。途中何度も怪我人のために休憩をとり、お茶や食べ物を女性にやりました。暗くなり女性の足元を照らし続けておりました。夜、8時に御殿場の駐車場に到着し待っていた救急車に女性を乗せました。全員、疲労困憊でした。以上が今回の状況です。

怪我をされた女性は現在面会が出来ませんが近々警察が事故の原因を聞きに行きます。その時になぜ落ちたのかハッキリ分かります。

今回救助に当たりまして亡くなられ方には心からご冥福を祈ります。また怪我をされた方々は、のりちゃんも言ってますが、あの悲惨な過酷な環境の中で、誰一人泣きごとを言わず本当に立派な方々でした。自分達が置き去りにされるのが分かっていながら、有難うございますと言ってくれました。私だったら恐怖で恥ずかしいですが言えません。最後の最後まで素晴らしい登山家でした。また怪我をされて一緒に下りた女性、胸と骨盤骨折をしながら、6時間も泣きごと一つ言わず歩きました。普通の人では出来ません。一日も早くご回復する事を心から願っています。

救助活動に当たられた多くの警察と消防の方々の懸命の救助活動に心から感謝申し上げます。強風とガスと極寒の状況下での救助隊活動には本当に頭が下がります。また家族の心中は想像絶するものがあったと思います。今回、ヘリで本当に残念な事故がありましたが、あの状況の中では残念としか言えません・・・救助に当たられた方への批判は現場を知る者として出来ません。懸命に命がけで頑張ってくれたからです。

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本当にお疲れ様でした!! 削除

2013/12/6(金) 午前 8:10 [ 三平 ] 返信する

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三平ちゃん、有難うございます。今でも滑落していく彼等が脳裏に焼き付いて困っています。これが残っている間は登山は危険ですので今しばらく冬山は控えようかと思っています。
今回は悲惨な現場で色々学びました。頭で考えてると全く違ったからです。怪我人を目の前にしては冷静になれません・・・。今回、私なりに次回同様な事故を目撃してもどのように対処すればいいのかまとめます。亡くなられた方々に対してもやらなくてはいけないと思っています。

2013/12/6(金) 午前 8:32 やまちゃん 返信する

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ホント、お疲れ様でした。
現場を目の当たりにして自分たちのことを後回して救助にあたられ、
頭が下がるばかりです。
救助のためにはみんな!命のために必死ですもの><
そんなやまちゃんさん達のことを考えると
富士山にいっぱい登っているやまちゃんさんたちですから
メンタルも強靭だとは思っていましたが
精神的に辛い思いをしているのでは。。。と弱い私はなんだか
とっても心が痛かったんです。
でも、こうやって新たな事故報告をみて安心しました。
富士山を眺めるのが辛かった。。。
色んな事、考えさせられました。
これからもお気をつけてくださいね。
そして富士登山の良さと怖さを発信してってくださいm(__)m

2013/12/6(金) 午前 9:08 ぴかり 返信する

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ぴかりちゃん、ご心配をおかけし申し訳ないです。現場では冷静さが必要ですが、実際は難しいですね。幾つもの判断をこなしていかなければいけないからです。基本的には自分たちの安全を確保してからの行動しなくてはいけないと思いました。あの滑落シーンは凄すぎました。また怪我人の様子も半端ではありませんでしたから気が動転します。お医者さんなら冷静に出来たかもしれませんが、一般の我々にはきつかったです。これから多くの方々が登ると思いますが、何度も書きますが絶対に無理しないでほしいと願っています。
山の事故は基本的に自己責任です、だれが悪いわけではありません。人に迷惑を掛けない登山をして頂きたいですね。
これからはこの経験を生かそうかと思っています。また冬富士の情報を発信します。

2013/12/6(金) 午前 9:39 やまちゃん 返信する

お久しぶりです

やまちやん先生にご教示頂いて、人生初の富士登山を果たしてから間もなく3年になります
今も登山を楽しんでいます

東日本大震災で津波にのまれ亡くなった友人の供養に富士山を選択して本当に良かったと思っています

この事故から無事生還された方々の
救われた命を大事に生きて欲しいと願います

不運にもお亡くなりになられた方々の
ご冥福を心からお祈りしています

2013/12/6(金) 午前 10:08 papicom 返信する

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パピコムさん、お久しぶりです。もう3年ですか・・・早いですね。
本当にそう思います。今回、事故には会わなかった女性がどうすればいいのかと私に聞いて来ました。冬山が如何に危険であるか皆さんに知らせて下さいといいました。これから今回の事故の原因を詳細に検討しこれから登る方々に生かしてほしいと思います。
一部報道では、今回の事故で山の規制が益々厳しくなるような事が書かれていました。私個人的には、規制をいくら厳しくしても色んな抜け道を使って登ります。逆に危険な方に追い込むだけです。それよりも冬山に対して必要な情報を装備も含め各方面で発信するべきだと思います。

2013/12/6(金) 午前 10:47 やまちゃん 返信する

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パピコムさんから寄らせて頂きました。
本当に貴重な体験談肝に明示させて頂きます。

現実を知らない人は好き勝手に話しますが、どうしてこんな日本人になってしまったんでしょうか・・・・

でも、本当にぎりぎりまでの救助作業。
私は第三者ですが本当にありがとうございました。
そしてお疲れ様でした。

2013/12/6(金) 午後 1:18 [ トシヒコ ] 返信する

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トシヒコさん、初めまして。現場にいませんとパソコンの前で座ってる人には伝わりません。好き勝手なことを言ってますが悲しいですね。
もう、このような現場は二度と見たくないです・・・その為にも今回の経験をブログを通して山の危険性を訴えたいと思います。
有難うございました。

2013/12/6(金) 午後 1:26 やまちゃん 返信する

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やまちゃんさん、はじめまして、いつも(お疲れ中をおして)タイムリーで魅力的な富士山情報を発信いただきありがとうございます<m(__)m>
今年夏より本ブログ愛読させていただいている前期高齢者(富士登頂暦3回ぽきり)です。
”やまちゃん”さん、この度は大変お疲れさまです。ご心労は(パソコン画面の前の者には)とても計り知れません!文面中、『文才云々…』のくだりがあります。が!
小生は以下文面を読む最中、画面が涙でかすみ訳もわからず号泣(1分余り)至りました。
▼ここから 引用開始
あの悲惨な過酷な環境の中で、誰一人泣きごとを言わず本当に立派な方々でした。自分達が置き去りにされるのが分かっていながら、有難うございますと言ってくれました。私だったら恐怖で恥ずかしいですが言えません。最後の最後まで素晴らしい登山家でした。
▲引用ここまで
今は、ただただ(山のお仲間含め関係皆様の)お心の疲れを癒していただけることをパソコン画面の向こうから願うばかりです。
#突然のコメント 大変失礼しました。
あらためてご心労お見舞い申し上げます<m(_ _)m>。どうぞお大事に。

2013/12/7(土) 午前 7:43 [ のりおやじ。 ] 返信する

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nor*oy*j*nさん、コメント有難うございます。今回の様な事故が二度と起きないようこれからもブログを通して発信していきたいと考えていますので応援宜しくお願い致します。

2013/12/7(土) 午後 0:29 やまちゃん 返信する

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今回は、お疲れ様でした。いつも拝見してます。

2013/12/22(日) 午後 9:37 [ のり ] 返信する

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のりさん、有難うございます。良い年を迎えて下さいね。

2013/12/24(火) 午前 11:51 やまちゃん 返信する

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