自宅開業する場合
自宅で開業する場合の事務所についてご紹介します。
恐らく、初めは自宅事務所で開業しようと考えている方が多いのではないでしょうか。
私自身も自宅事務所からのスタートでしたので、その経験を交えて解説していきたいと思います。
まずはメリットから見ていきましょう。
行政書士事務所 自宅開業のメリット
事務所の賃貸料がかからない
行政書士事務所の自宅開業のメリットは何と言っても、賃貸料がいらないという点です。
専用事務所を借りた場合、その規模や立地にもよりますが、かなりの金額になります。
また、月々の賃貸料だけでなく、敷金礼金や保証料などの初期費用も必要です。
自宅で開業する場合はこれらがいりませんので売上が安定していない開業当初は非常に助かります。
しかも、自宅の家賃や光熱費の一部を経費として計上することができます。
通勤しなくていい
自宅で仕事をするので通勤する必要もありません。
満員電車や渋滞のストレスからも解放されます。
私はサラリーマン時代、電車で通勤していましたが、とても苦痛でした。
本やスマホを見れればまだいいのですが、身動きが取れないのでじっとしているしかないという地獄です。
また通勤の必要がないということは通勤費用もかからないということです。
専用事務所をどこかに借りる場合は、そこまで通勤する必要があり、遠ければ費用もかかります。
サラリーマンは交通費が支給されますが、自営業者はそれも自分で払わなければなりません。
少額でも毎日のことですから、意外と馬鹿になりません。
時間を有効に使える
通勤時間がないということは、その時間を他に使えるということです。
仕事をしてもいいですし、自宅なので家事や子どもの送り迎えなどに充てることもできます。
仮に通勤に往復1時間かかったとして、1時間×52週×5日=260時間。
年間260時間も有効に使えます。
その時間を金額にすると、260時間×時給2,000円=520,000円です。
年間、これだけの時間とお金を損していることになります。
時間に縛られることなく仕事ができる
自宅開業の場合、時間に制約されることなく仕事をすることができます。
起床して、すぐに仕事をすることも、寝る直前まで仕事をすることも可能です。
仕事を中断して、家の用事を済ませたり子供を迎えに行くこともできます。
では次にデメリットについて見ていきましょう。
行政書士事務所 自宅開業のデメリット
信頼性に欠ける
自宅開業の1番のデメリットは信頼性に欠けることです。
行政書士事務所は自宅で開業している先生も多いので行政書士の立場からすると自宅事務所と聞いても抵抗はありません。
しかし、一般の方は、オフィスビルや店舗型の事務所をイメージしていますから、「自宅でやっているの!?」と思う方も少なくないでしょう。
オフィスビルや店舗型の専用事務所で営業している事務所と、自宅事務所を比べられてしまうと、専用事務所の方が信頼度は高いです。
どんな自宅事務所にするかにもよりますが、都会の方がこの傾向はより強いものとなっています。
また来所されるお客様にとっても自宅事務所より、専用事務所の方が落ち着いて相談することができるでしょう。
立地が悪い
次に自宅開業の場合、立地が良くないという点が挙げられます。
商業店舗やオフィスは駅前や役所の近くなど交通の便が良い場所に集中しています。
それは、お客様や利用者が来やすいからです。
逆に住居はそういった場所から遠いところにある場合が多いでしょう。
行政書士事務所も意外とお客様が来所することが多いです。
特に民事系(B to C)の業務をメインにしようと考えている場合は注意が必要です。
民事系の一般のお客様は、プライベートな内容や、かなり込み入った話などをする場合もあります。
そんな時は自宅ではなく、事務所でしたいというお客様も多いものです。
事務所が住宅街の一角にあるとなると、お客様にとってわかりづらいでしょうし、駅などの交通機関から遠いと負担にもなります。
また地方であれば、車で移動する方も多いでしょうから駐車場の確保も必要となります。
仕事効率が低下
次に、仕事の効率性が悪くなる可能性があるという点が挙げられます。
メリットである「時間に縛られることなく仕事ができる」という点と矛盾するように見えますが、自宅だと、いつでも、何時まででも仕事をすることができますので、それが仕事の効率性を悪くする要因となってしまう危険性があります。
限られた時間だと、その時間内に仕事を終わらせようとするので、自然と作業効率が上がっていきます。
しかし、時間に縛られない状況だと、ダラダラと仕事をしてしまう危険性があります。
行政書士の仕事は1件の案件で数か月かかるものもあります。
なので、1件あたりの報酬に対してどのくらいの時間をかけたのか、時給換算することも大事です。
作業効率が悪くなればなるほど、時給が下がることになりますので、注意が必要です。
住まいを公表するリスク
自宅を事務所にするということは、自分の住まいを公表するということになります。
特に女性の場合は住所を公表することに抵抗がある方もいるでしょう。
行政書士は宣伝が必須ですので、名刺はもちろんのこと、自身のホームページにも事務所住所を記載します。
行政書士会のホームページにも事務所住所は掲載されますので、女性の場合は不安なところもあるのではないでしょうか。
自宅事務所の注意点
最後に自宅事務所の注意点を説明します。
自宅事務所にする場合、事務所が独立している状態が望ましいとされています。
簡単に言うと、3LDKの物件であれば、その1室を事務所にするということです。
リビングをパーテーションなどで区切って事務所にする、などというのは独立しているとみなされません。
また居住区域と事務所がある程度分離している状態が良いでしょう。
例えば自宅の入り口と事務所の入り口が別になっているとか、玄関から住居スペースを通ることなく事務所に行けるといった状態です。
行政書士登録の際には、事務所の写真や平面図を提出しますし、所属した支部による事務所調査もあります。
事務所として、適していないと判断されれば、何かしらの修正が必要となりますし、最悪の場合、その場所では事務所を構えることができません。
次に、マンションなどの集合住宅の場合、規約によって商業利用が禁止されていることがあります。
その場合は原則、その物件では事務所を構えることはできません。
しかし、交渉次第では可能な場合もありますので、どうしてもそこで事務所を構えたいというときは交渉してみましょう。
そして、行政書士事務所は事務所の表札又は看板などを設置しなければなりませんので、その設置についても確認もとりましょう。
どんな表札をどのように設置しようと考えているのか、きちんと確認をとっていないと、いざという時に許可がおりず設置できないなんてことにもなりかねません。
また、自宅で事務所が構えられるという場合でも周りの方への配慮は必要です。
特に集合住宅の場合は、そういうことを嫌がる方もいますので、何かしらの配慮をしておくのが良いでしょう。
自宅事務所のメリット
・コストを抑えられる
・通勤費用がない
・時間を有効に使える
・時間に縛られることなく仕事ができる
自宅事務所のデメリット
・信頼性に欠ける
・立地が良くない
・仕事の効率性が悪くなる可能性がある
・住所を公表する
自宅事務所の注意点
・事務所として独立させる
・プライベート空間と分ける
・賃貸の場合、規約を確認する
・周りの住居人への配慮
単位会によっては事務所の設置基準を設けているところもありますので確認しておきましょう。
参考までに東京都行政書士会の設置基準のリンクを貼っておきます。
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