スリガオ戦艦発見
海底探査で戦艦が発見されたことで新たな史実も判明したと米調査団
スリガオ海峡で太平洋戦争末期に米軍に撃沈された戦艦などの探査を行った米国探査チームは7日、ミンダナオ地方スリガオ市に停泊中の調査船「ペトレル号」で、調査方法や発見された船体の詳細を公開した。同チームは魚雷などの攻撃で船体が二つに引き裂かれたというのが定説だった戦艦扶桑は、折れ曲がりながらも、船全体が形を留めていたことなど「新たな史実も明らかになった」とした。調査の詳細は、防衛省の防衛研究所(東京都新宿区)と呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム、広島県呉市)にも提供される。
米マイクロソフト共同創業者のポール・アレン氏が率いる探査チームは、10月末ごろから申請や事前調査などを開始。海底6千メートルまで探査できる最新技術装備を有したペトレル号を使用して11月22〜29日の8日間調査を実施、戦艦山城、扶桑、駆逐艦満潮、朝雲、山雲の計5隻を海底で発見した。いずれも1944年10月のレイテ沖海戦で南方からレイテ湾を目指した西村祥治中将率いる艦隊の船。
▽調査踏まえ日本訪問も
同号のポール・メイヤー調査員によると、扶桑は船体が90度折り曲がってはいたものの、真っ二つに引き裂かれた状態ではなかった。船体右側に魚雷攻撃を受けたという説もあったが、実際には左側に魚雷の攻撃を受けた痕があったという。
船体発見位置は船体の保護・保存のために一般には公表されない予定。情報は日本側のほか調査に関わったフィリピン国立博物館に提供され、スリガオ市や比政府も保存する。国立博物館のジェレミー・バーンズ館長は「日本にいる元乗組員や遺族のためにも船体の保存に努めていきたい」と語った。
ペトレル号のロバート・クラフト船長は「自ら日本を訪問し、呉市の博物館関係者や元乗組員、遺族と会って、調査結果を伝えることも考えている」と話す。
▽オルモック沖で発見も
発見された駆逐艦3隻のうち、満潮と山雲はまだ識別されていない。地元団体「スリガオ海峡海戦祈念協議会」のジェイク・ミランダ代表は「今後の調査は自治体と日本側の大学や機関などが協力して行っていくことも可能だろう」と話す。
調査団はまた、7日までにスリガオ海峡調査後にレイテ州オルモック沖で行った探査で米海軍の駆逐艦ワードとクーパーの2隻を発見したと発表。さらに、2隻の調査中に、駆逐艦島風とみられる船体も見つかったという。調査団は今後も、島風と特定する調査とボホール沖に沈む重巡洋艦最上の調査を行っていくとしている。(スリガオ=冨田すみれ子)