【M&A戦略】国内外の物流会社を次々と買収
日立物流の主なM&A | |
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発表年月 | 内容 |
2005年7月 | カーオーディオ大手クラリオンの子会社であるクラリオン・エム・アンド・エルの物流部門事業を譲受ける。 |
2006年12月 | 資生堂から物流子会社である資生堂物流サービス(売上高183億円)を28億円で譲受ける(90%)。 |
2007年10月 | 東欧チェコの物流会社であるESA s.r.o(売上高130億円)に資本参加することで合意(51%)。 |
2007年12月 | 東北地区を中心に物流事業を展開しているセンコン物流(売上高126億円)と業務提携し、資本参加(8.8%)。 |
2008年11月 | 中国における物流事業を一層強化するため、中国内陸部の中心都市である河南省鄭州市において河南省豫鑫物流股份有限公司と鄭州新和華科貿有限公司の3社で合弁会社を設立する(51%)。社名は河南新鑫日立物流有限公司、資本金は1000万元。 |
2008年12月 | トークツ・グループの物流子会社でシューズ配送を中心に事業運営を行うスミダロジネットの事業を譲受ける。 |
2009年5月 | オフィス家具什器大手の内田洋行の東日本エリアの物流子会社であるオリエント・ロジの株式を一部譲受ける(86%)。 |
2009年10月 | 米国インディアナ州の物流会社である J.P.Holding Company,Inc.(売上高100億円)の株式を譲受することで合意(51%)。 |
2010年5月 | インドの大手フォワーディング会社である Flyjac logistics Pvt. Ltd. (売上高73億円) の全株式を譲受することで基本合意 |
2010年10月 | インキ等の化学業界大手のDICと、その物流子会社であるDICロジテック(売上高177億円)の株式を譲り受けることで合意(90%)。 |
2010年11月 | DCMホールディングスの連結子会社でホームセンター事業を展開しているホーマックの物流子会社であるダイレックスの株式を譲り受ける(90%)。 |
2010年11月 | 上海航空股份有限公司、香港正大企業船務有限公司との合弁会社である大航国際貨運有限公司(売上高64億円)について、上航航空が保有する 55%の株式を日立物流が取得し、日立物流の子会社とする(30%→85%)。 |
2011年4月 | バンテック(売上高1136億円)の普通株式及び新株予約権を公開買付けにより取得(84.75%)。取得価額は489億円。 |
2011年4月 | 子会社である Hitachi Transport System (Asia)Pte.Ltd. と Hitachi Transport System (Thailand),Ltd. が、タイの証券取引所に上場している Eternity Grand Logistics Public Company Limited(売上高27億円)の株式を、大株主との相対取引及びタイ証券取引所での公開買付けにより取得する(100%)。 |
2011年8月 | 麺類メーカー大手のシマダヤの連結子会社であるシマダヤ運輸(売上高3億円)の全株式を譲り受け。 |
2011年11月 | 印刷インキ、有機顔料、合成樹脂等の化学業界大手の DIC の連結子会社で物流業を行っている DIC 通運有限公司(売上高1.5億円)の株式 41.86%を、日立物流の連結子会社である日立物流ファインネクストが譲り受け、90%保有することで合意。 |
2012年8月 | 日立電線の物流業務を行う連結子会社である日立電線ロジテック(売上高141億円)の全株式を譲り受けることで合意(100%)。 |
2013年5月 | 米国の物流会社である James J.Boyle & Co.(売上高100億円)の株式を 87%譲受けること、子会社である JJB Link Logistics Co.Limitedの株式を約 23%譲受けることについて合意。 |
2013年6月 | 香港の物流会社である CDS FREIGHT HOLDING LTD(売上高140億円)の株式を 85%譲受けることについて合意 |
2013年7月 | トルコの物流会社である Mars Logistics Group (売上高200億円)の株式 51%を譲受ける |
2016年3月 | SGホールディングス及び佐川急便と戦略的資本業務提携を行う。日立物流が佐川急便の20%の株式を663億円で取得、SGホールディングスが日立物流の29%の株式を日立製作所より875億円で取得。これにより、日立製作所の所有割合は59.02%から30.01%となっている。 |
日立物流が過去に実施した主なM&Aの特徴は、①国内における物流子会社の買収と②クロスボーダーM&Aである。
①国内物流子会社買収 顧客と人材を確保
日立製作所の物流子会社として、日立製作所から安定した業務収入があるものの、日立製作所の業績に左右されることや、業績の拡大や経営改革が進まないといった課題もあった。この課題を解決するために、日立製作所の物流業務の一括受注で培った3PLのノウハウを活かして、日立製作所以外の業務の受注を進めていく。その拡大方針に沿った形でM&Aも位置付けられた。特に、日立物流と同じ境遇、すなわち物流子会社のM&Aを重ねていく。
物流子会社のM&Aは、日立物流のノウハウが最も活かせるM&Aである。外部の仕事を競合他社から奪い取るには時間と労力が必要となる。既に業務を行っている競合他社は、蓄積された顧客情報や独自のノウハウに基づきサービスを提供することで顧客から信頼を得ており、競合他社を上回るソリューションを提案するのは容易ではない。この点、M&Aを行う事で、顧客とともに、その顧客にフィットしたノウハウや人材を確保することができ、スピード感をもって業績の拡大を行う事が可能となる。
国内における物流子会社の買収の中では、2011年4月のバンテックの買収が特徴的である。バンテックは、自動車部品輸送を中心としたロジスティクスと航空・海上フォワーディングの二つを事業の柱とする総合物流会社である。1954年に日産自動車の物流子会社として設立され、2001年にMBOにより日産自動車から独立した経緯のある会社と、1976年東京急行の子会社として設立され、2004年に同じくMBOで独立した経緯のある会社が2005年に統合した誕生した。2007年9月に東証1部に上場しており、2010年3月期の売上高が1,131億円であった。買収は公開買い付けにより行われ、84.75%を取得、買収価額は489億円となった。
日立物流の2011年3月期の売上高が3687億円であったのに対して、当時の経営目標は2012年度に連結売上高5000億円、バンテックの買収がなければ、達成はまず難しかったであろう。2010年9月頃より、交渉が進められていたようであるが、日立物流としては必ず成約させなければいけない案件であったに違いない。
その後、バンテックは完全子会社化されるとともに、日立物流グループ内においてフォワーディング事業を分割により統合するなどの変遷を経て、現在においても、日立物流グループにおける重要な子会社として位置づけられている。
バンテックの買収以外では、2005年にカーオーディオ大手クラリオンのグループの物流部門、2006年に資生堂の物流子会社(売上高183億円)、トークツ・グループの物流子会社でシューズ配送を中心に事業運営を行う物流子会社、2009年オフィス家具什器大手の株式会社内田洋行の東日本エリアの物流子会社、2010年インキ等の化学業界大手のDIC株式会社の物流子会社(売上高177億円)、2011年に麺類メーカー大手のシマダヤの物流子会社 (売上高3億円)、2012年日立電線の物流子会社(売上高141億円)と次々と買収を進めている。これらの親会社の業務が獲得できている事は容易に想像できる。日立物流の3PLのノウハウを活かしシナジー効果を発揮できる案件をターゲットにする姿勢が明確だ。