「借り」の意味するもの その1 「なぜ」パルパティーンとシディアスが、同一人物だと思うのか…個人的には『エピソードI 見えざる脅威』の終盤において、ナブーを訪れたパルパティーンがオビ=ワン…そしてオビ=ワンのパダワンとなったアナキンにかけた言葉が、その最大の理由なのですね。 その言葉とは、 「We are "indebted" to you for your bravery, Obi-Wan Kenobi. And you, young Skywalker. We will watch your career with great interest.」 「君には大きな<借り>ができたな、オビ=ワン・ケノービ。そして君だ、スカイウォーカー…君の将来を楽しみに見とるよ」(日本語吹替より) これなのですね。 形の上では申し分のないあいさつであり、おほめの言葉であるにも関わらず、この一言を聞いた瞬間に、「こいつ=パルパティーンこそ、シス卿ダース=シディアスだ」…そう感じたのですね。 したがって、このあいさつがおほめの言葉に聞こえるのは、パルパティーンがそう見せかけているからに過ぎないのではないか…この言葉の隠された「真意」とは、実はシス卿ダース=シディアスのジェダイ騎士オビ=ワンに対する、ひそかにして巧みな「宣戦布告」なのではないか、そうも感じたのですね…あくまでも、私的な印象ではあるのですが。 (ちなみに、個人的には初めて観た『スター・ウォーズ』がこの『エピソードI 見えざる脅威』だったので、この時点ではトリロジーに登場する皇帝の名前が「パルパティーン」だとは知らなかったのですね…後からそうと知って、驚くとともに「やはり」とも思いましたが) とはいえ、オビ=ワンがこのような言葉をかけられることそのものは、特に不思議なことではないだろう…そうは思うのですね。< br> なぜなら、オビ=ワンとそのマスターであるクワイ=ガン・ジンが、ナブーの解放に尽力し…その結果クワイ=ガンが命を落としたことは、かなりの人が知っていたはずだろう…そう思われるからですね。 ただ、私が引っかかったのはこの言葉を、当事者であるはずのナブー女王アミダラを「さしおく」形で、「パルパティーンが」口にしたこと…これだったのですね。 たとえば、アミダラが先にあげたような言葉をオビ=ワンにかけたとしたら、それはごく自然なことだろう …そうは感じているのですね。 なぜなら、ナブーに協力して戦ったばかりにオビ=ワンは、結果としてマスターであるクワイ=ガンを失ってしまったわけで…「銀河系(共和国)の正義と平和の守護者」であるジェダイとしての役目とはいえ、ナブーの解放と引き換えに、あまりにも大きすぎる犠牲を払ってしまった…そう思われるからですね。 なのでたとえば、ナブーを代表する立場にある女王アミダラが、オビ=ワンに大きな「借り」ができたと思ったとしても、当事者として不思議はないだろうと思われますし…そのことに対し、せめて感謝とおわびの気持ちだけでも表したいと思ったとしたら、表現は多少異なるでしょうが、内容としては先にあげたパルパティーンの言葉に近いものになるのではないだろうか…そうも思われるのですね。 (個人的には、特定のジェダイ個人に対し金銭などの具体的な「謝礼」をすることは、おそらく共和国においては認められていないことではないかと思っていますので…とはいえ騎士団そのものへの「寄付」という形でなら、あるいは認められているのかも知れないとも思ってはいるのですが、これはまったくの推測に過ぎないので、ここまでにしておきますね) しかし、ナブーで一緒に戦ったわけでもないパルパティーンが、オビ=ワンに対しどのような「借り」があるというのでしょうか? とはいえ確かに、パルパティーンはナブー選出の元老院議員だったので、出身地であるナブーを解放してくれたこと…また前議長ヴァローラムの依頼だったとはいえ、騒動の収拾を果たしたことに対して、新しい最高議長としてオビ=ワンに感謝の気持ちを伝えたとしても、不思議はないだろう…そうは思われるのですね。 しかし、その言葉はおそらく「借り」がどうのといった「不自然な」表現にはならないのではないだろうか…オビ=ワンに対して実際には「借り」などないと思われるパルパティーンが、ごく普通にかける言葉として考えられるのは、たとえば 「お手柄だったな、オビ=ワン・ケノービ…マスターにはお気の毒なことになってしまったが、その分もよく働いてくれた…それに私事とはいえ故郷のナブーを解放してくれて、感謝しているぞ」 こういった感じになるのではないかと思われますし、その方がはるかに「自然な」表現ともなるのではないだろうか…そう、私には思われるのですね。 なのでおそらく、良い意味においても悪い意味においても何1つオビ=ワンに「借り」などないことを承知の上で、パルパティーンは「あえて」そういった表現を選んでいるのではないか…そうも思われるのですね。 ちなみに、このパルパティーン(シディアス)の「宣戦布告」が「形の上では」申し分のないあいさつ、そしておほめの言葉でなくてはならない理由ですが…おそらくパルパティーンとしては、『エピソードI』終了の時点ではオビ=ワンを含む登場人物の誰にもまだ自分の正体を悟られてしまうわけにはいかなかったので、表面的には儀礼にかなっている表現を「あえて」選び、その裏に真意=「宣戦布告」を潜ませたのではないだろうか…そうも感じているのですね、これも個人的にではありますが。 では、パルパティーンの言う「借り」とは、いったい何でしょうか。 『エピソードI』の終盤において、オビ=ワンはいわゆる「番狂わせ」によって格上の敵ダース=モールを討ち取ったのではないだろうか…そう、個人的には感じているのですね。 しかしこの事実は、おそらくオビ=ワン本人のまったくあずかりしらぬ所で、シディアスの陰謀を邪魔する結果になってしまったのではないか…完全に阻むことこそできなかったものの、シディアスとしてはこのおかげでかなり陰謀を軌道修正するというか、予定を変更したり先送りをしなくてはならないはめになったのではないか…そうも感じているのですね。 つまり、見せかけの姿である政治家パルパティーンとしては、おそらく最低限の狙いであった最高議長の地位こそ手に入れたものの、ナブー(VS通商連合)紛争…また、それをきっかけに行われることになった新議長選出に伴う元老院の混乱に乗じて、できれば同時に手にしてしまいたかったのではないかと思われる、非常時大権=絶対的な権力および強力な軍隊=武力を、『エピソードI』の時点ではつかみとることができなかったのではないか…つまり、肝心の紛争そのものがオビ=ワンの「番狂わせ」によって予想外の速さで収束してしまったために、口実を失ってしまったのではないか…そう思われるのですね。 このことはおそらく、真の姿であるシス卿ダース=シディアスとしても、千年来の宿敵であるジェダイ(騎士団)を上回り、その打倒=復讐を実現するために必要と思われる権力・武力・財力・Etc.の中でも、おそらくはもっとも重要ではないかと思われる「絶対的な権力および武力」を、『エピソードI』の時点では手にすることができなかったことを意味するのではないだろうか …その原因はやはり、オビ=ワンによって引き起こされた「番狂わせ」による所が大きかったのではないか…そうも思われるのですね。 したがって、オビ=ワンに「借り」ができたと思われるのは、アミダラを除けば…とはいえ、「借り」の意味はまったく異なるわけですが…シディアスしかいない、そう思われるのですね。 なのでオビ=ワンに対し、仮に形の上ではどれほど申し分のないあいさつであり、おほめの言葉に聞こえるものであったとしても、アミダラ以外に「借り」について口にする人物がいたとしたら、それこそがシス卿ダース=シディアスである…そうも思われるのですね、個人的にではありますが。 …続きます ^^☆ (『「借り」の意味するもの』2002/08/07初稿、2003/11/15改稿)
|