明けぬ闇はなく、暮れぬ日はない


 プリークエルの第二作である『エピソードII クローンの攻撃』と、トリロジーの第二作である『帝国の逆襲』…この2つの作品同士が、「対」「対比」を意識して「合わせ鏡」のように作られているという事は、すでによく知られている話であるわけですね。

 数多くある「対」「対比」の中から、例えば目に見える形で現されているものを取りあげてみると


  • 『エピソードII』のパドメの告白に対する、アナキンの反応と返答

「僕を愛している?」(本気で驚いてしまう、余裕も何もない若さそのまま)


  • 『帝国の逆襲』のレイアの告白に対する、ハン=ソロの反応と返答

「知ってたさ」(本気をジョークに紛らわしてしまう、大人の余裕と貫禄)


  こんな例がすぐに思い浮かんでくるわけですね。


 ちなみに、目に見えない形での「対」「対比」として最も大きな意味を持っているのは、『エピソードII』におけるシミの死=「母の喪失」 VS 『帝国の逆襲』におけるヴェイダーの告白=「父の出現」という事になるだろう…そう、個人的には感じています。


 さて、話を戻しますと…『エピソードII』VS『帝国の逆襲』の、「対」「対比」「合わせ鏡」という性格が目に見える形で最もはっきりと現れているのは、やはりそれぞれのラストシーンではないか…そう、私には思われるのですね。


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1.『エピソードII クローンの攻撃』ラストシーン … 結婚式を終えたアナキンとパドメ 右には2人を見守るC3POとR2-D2


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2.『エピソードV 帝国の逆襲』ラストシーン … 宇宙船を見つめているルークとレイア 左には2人を見守るC3POとR2-D2


 一見して分かるように、『エピソードII』のラストシーンが「昼」つまり「光」の中のシーンであるのに対し、『帝国の逆襲』は「夜」つまり「闇」の中のシーンとなっているわけですね。
 ともにラストシーンであるという事を考えあわせてみると、この「昼」VS「夜」=「光」VS「闇」という背景には、その後のストーリー展開を暗示する重要なメッセージが隠されているのではないか…そう、私には思われるのですね。
(とはいえむろん、宇宙空間には「昼も夜もなく、常に闇である」という常識ぐらいはわきまえているつもりなのですが…物語を演出している「対」「対比」の問題を考えていくために不可欠なので、あえてそのまま「夜」「闇」という表現を使っていきたいと思います)

 『エピソードII』のラストシーン…アナキンとパドメの今後が「お先真っ暗」になるだろうという事は、考えるまでもないと思われるわけで…なのに、破滅の原因の1つとなるはずの結婚式のシーンは、不思議なほど明るい陽射しに包まれている…これはいったい、何を意味しているのでしょうか。
 もしかしたら、昼間ではなく夕方、いわゆる「黄昏時」なのかも知れませんが…個人的には、その方が「演出の上からも」より効果的なのではないかとも思っていますが…いずれにしても、光のある時間帯には違いありません。
 つまり、この「光に包まれた」ラストシーンは「これから日が暮れていき、やがて夜になる…そしてやってくるのは『闇の時代』なのだ」という事を暗示しているのではないか…そう、私には感じられるのですね。

 対して、「帝国の逆襲」のラストシーン…ルークとレイアは、宇宙空間=「闇」を見つめて立っています。 かなり追いつめられた状態でのラストだったわけで、『エピソードII』とは違った意味あいにはなるでしょうが、やはり「お先真っ暗」な状態だったと思われるわけですね。漆黒の宇宙空間=「闇」は、そんな2人の心のうちを、映像として示しているようにも感じられるわけで…まさに「どん底」と言ってもよいだろう、そうも思われるわけですね。
 しかし、2人を包んでいる「闇」が明ける時…つまり「光の時代」の到来は、実はもうすぐそこだったわけですね…というより、2人と仲間たち、そして志を同じくする多くの人々が、力を合わせて勝ち取っていく事になると言った方が、より正しいかもしれませんが。


 個人的な話になりますが、私は未だに『新たなる希望』そして『ジェダイの復讐(帰還)』を観てはいないのですね…とはいえ、断片的に知っているあらすじやエピソードなどから察するに、トリロジー…そして『スター・ウォーズ・サガ』最後のエピソードである『ジェダイの復讐(帰還)』は、「光」と「希望」に満ちたラストを迎えるのだろう、そう強く感じています…願っていますと言った方が、気持ちの上では近いのかもしれませんが。
 したがって、プリークエル最後の『エピソードIII』から本格的に始まると思われる「闇(と絶望)の時代」は、しかし最終的にはトリロジーを経て「光(と希望)の時代」へと昇華していく事になるのだろう…なので実は、『帝国の逆襲』の「闇に包まれた」ラストシーンはその「直前」…「夜明け前の闇が最も深い」という状態を現しているのではないだろうか、そんな事も感じているのですね…これも個人的にではありますが。


 この文章の題名とした「明けぬ闇はなく、暮れぬ日はない」という言葉は、『スター・ウォーズ・サガ』という物語のテーマ(の1つ)をよく現しているように感じられるもので、個人的にはとても好きな言葉なのですね。
 ただ、「暮れぬ日はないが、明けぬ闇もない」といったような表現にした方が、『スター・ウォーズ・サガ』という「夢と理想」の物語には、よりふさわしいかもしれないとも感じていますが…「どれほど苦しい時でも、世界のすべてが絶望と闇に塗りつぶされているように感じられる時でも、決して希望が失われる事はない」…そのようなルーカス監督からのメッセージが、この物語には託されているのではないだろうか…そんな事を思ったりもするのですね、これも個人的な印象ではあるのですが。


ではまた ^^☆

(2002/07/27初稿、2004/02/20改稿)


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