「節穴」=意識の欠落


 『エピソードI 見えざる脅威』『エピソードII クローンの攻撃』に登場している、プリークエル時代のジェダイ(騎士)たち…「はみだし者」ことクワイ=ガン・ジン1人を除いて、彼らのほとんどに共通していると思われる傾向の1つが、いわゆる「負の感情」と呼ばれるものに非常に疎い事ではないだろうか…そう、私には思われるのですね。
 おそらくは、そういった感情を意識的に抑える訓練をしなければジェダイ(騎士)になれないという理由によるのでしょうが、それを裏返してみるならば、プリークエル時代のジェダイ(騎士)たちは、人間なら多かれ少なかれ持っているはずの嫉妬や羨望、欲望、さらには怨恨や憎悪などのような「負の感情」を、「理屈として理解はしているが、実感はできない」という状態に、いわば副作用としてなってしまっているのではないか…そしてさらに困った事には、そのような「負の感情」が引き起こす事態もまた、彼らにとっては想像さえつかない事になってしまっているのではないか…そうも感じているのですね。


 たとえば、『エピソードII』の冒頭で起きたアミダラ暗殺未遂事件…通常であれば直ちに、アミダラへの私怨(逆恨み)に燃える通商連合総督ヌート・ガンレイ、また分離主義者の頭目ドゥークー伯爵などが事件の黒幕として思い浮かんでも不思議はない、そう思われるわけですね。

 とはいえむろん、ドゥークーの方はアミダラに対し私怨など抱いてはいないでしょうが、分離主義者の頭目として共和国に対し優位な立場を確保するために、大規模かつ強力なバトル・ドロイド軍団を持つ通商連合と「組む」事をもくろむ可能性は、当然ながら考えられるわけですね。
 そして、仮にそれが実現した場合、その時点でジェダイ騎士団以外にまとまった武力を持たない共和国を「上回る」軍事力を手にできる可能性が高いと思われる以上、そのための「餌」「手土産」としてヌート・ガンレイに対し、「憎きアミダラを暗殺してやろう」とドゥークーが持ちかける可能性もまた、充分にあり得ると思われるわけですね。
 なので、狙われたアミダラ本人が黒幕として真っ先にドゥークーの名をあげたのは、こういった「政治的な」事情を元老院議員としてよく承知していたからではないか…そうも思われるのですね。

 ところがジェダイ(騎士)たちの方は、長であるメイス=ウィンドゥをはじめとして誰1人、具体的な黒幕つまり「敵」を「想定」できず、単に「ナブーの月のスパイス堀りという<情報が>(現在自分たちの所へ入ってきてはいるが、まだ確かではない)」という状況を、そのままアミダラに伝える事しかできなかったわけですね。
 ましてや、現在自分たち「ジェダイ(騎士団)が」置かれている状況を疑って(ニセ情報ではないか? 自分たちの捜査を混乱させるために、黒幕=敵がわざと流したガセネタなのではないか?)推理を深め、背後に隠されている真実を見抜くという「洞察」…ここでは、「敵と戦うために行う発想の転換」という意味あいで、この言葉を使っています…を行う事もできず、当然ながら黒幕=敵の正体を暴いて対決する事もできなかった、そうも思われるわけですね…残念な事ではありますが。

 そして、実際に事件の捜査を担当したオビ=ワンを始めとするジェダイ(騎士)たちは、黒幕=敵の隠された(真の)思惑をおしはかる事もないまま、犯人を追跡する事にのみ終始してしまったために…かろうじてヨーダ1人だけは、「陰謀の背後に潜む巨悪」の存在を危惧していたようではありますが…結果的に黒幕=敵(シスの事ですね、言うまでもありませんが)の張りめぐらしていた「罠」に落ちてしまい、みすみすジェダイ(騎士団)を滅ぼす口実を与えてしまったのではないか、そう私には感じられてならないのですね。
(しかも、ジェダイたちのほとんどは…これまた、ヨーダ1人を除いてという事になるのでしょうが…自分たちが「自ら」陥ってしまったと思われる危機的な状況を、『エピソードII』終了時点ではまったく自覚していないとも思われるわけですね…またもや、残念な事ですが)


 なぜ、このような結果になってしまったのでしょうか? よく言われているように、当時のジェダイ(騎士)たちが無能だったからなのでしょうか?


 確かに、「状況、あるいは人を疑う事ができない」という状態は、ある意味無能と言われても仕方がないかもしれない…そうは思うのですね。
 しかし「なぜ」、そのような状態になってしまうのか…オビ=ワンにしろ、メイスにしろ、ましてヨーダにしろ、ジェダイになるための厳しい修行を積み、厳しい掟のもとでさらに己を高めようと長年努力を続けている、能力的にも人格的にも無能とは程遠い優れた人材であるはずなのに、「なぜ」状況を疑って推理を深め、背後に隠された真実を見抜くという「洞察」、つまり「発想の転換」を行う事が「できない」のか…それはおそらく、彼らの意識に自覚なき大きな「欠落」=「節穴」があるためではないだろうか、そう私には感じられるのですね。

 ようするに、「ジェダイ(騎士)の本質」ともいうべきものと、そこから生じていると思われる「弱点」が、彼らの「限界」を作りだしていたのではないか…おそらくはそのために、当時のジェダイ(騎士)たちは状況、あるいは人を疑う事から始まる「洞察」つまり「敵と戦うために行う発想の転換」を行う事が「できなかった」のではないか…そうも感じているのですね。


 とはいえ、当時のジェダイ(騎士)たちにこの「弱点」=「意識の欠落」=「節穴」が存在するという事は、いわば「必要」悪…つまり避けては通れない事でもあったのではないか、そう私には思われるのですね。
 なぜなら、いわゆる「負の感情」というものは、言うまでもなくフォースの「暗黒面」と直結していると思われるので、ジェダイ(騎士)となるためにはそれを抑える必要があるでしょう。
 しかしながら、抑える事に成功してジェダイ(騎士)になると、今度はそういった負の感情を「実感」する事がなくなる…つまり「暗黒面」に近づく事そのものがなくなるので、結果的に「暗黒面」の存在を感じる事自体が難しくなる…これが、ヨーダの言う「暗黒面は見づらい」という状態なのではないか、そう感じられるのですね。

 つまり、ジェダイ(騎士)の「本質」…「負の感情」を抑えてフォースの「暗黒面」を遠ざける事により、ダークサイドを「見て」それに溺れてしまう危険を「前もって」防ぐ…が、しかし同時にジェダイ(騎士)たちの心の目をふさいでしまい、そういったものが存在しているという事を「理屈として」理解はしているが、実感はできない…いわば存在していないも同然の、「見えない」「見えざる」ものとしてしか感じられない状態にしてしまっているのではないか…まさに「長所と短所は背中合わせ」、諸刃の剣ともいうべき皮肉な状態なのかもしれない、そんな事を感じたりもするのですね。


 この事はまた、ジェダイ(騎士)たちがシスの暗躍に気づく事が「できなかった」…「気づかなかった」のではなく、必然として「気づけなかった」のではないか、そう私には感じられるのです…事、そして「銀河系(共和国)の平和と正義の守護者」という立場にありながら、共和国が滅亡する呼び水となった全面戦争=クローン大戦を回避できなかったばかりか、シスの罠にはまってその「引き金を引く」役を否応なく演じさせられてしまった事…そしてさらに、「予言の子」アナキンが同じくシスの罠にはまり、ダークサイドに転落してしまうのを阻止できなかった事とも、深く結びついているように思われるのですね…これも個人的な印象ではありますが。


ではまた ^^☆

(2002/07/23初稿、2004/10/24改稿)



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