OECDは12月6日、教育機会の格差に関する新たな報告書を公表した。同報告書によれば、社会経済的に恵まれない環境にある子供や成人は、学校教育や生涯学習の機会においてほとんど支援を受けられず、PISAの結果分析からも、大半の加盟国で、経済格差が教育格差に影響している状況が明らかとなった。
教育における公平性に関しては、OECD加盟国のうち、恵まれない環境にある人々に、より裕福な人々と同じ成功機会を与えている国は、エストニア、日本、韓国、オランダだった。一方、チリ、フランス、イスラエル、ポーランド、スロバキア、トルコ、英国、米国では、社会的に恵まれている人と、そうでない人の間に大きな格差があるとした。
報告書では、PISAのデータを時系列で分析した。その結果、加盟国の恵まれない学生は、優秀な学生に比べて科学的理解の学力水準を下回る割合が3倍高い。両親が高等教育を受けた児童と、中等教育を受けていない児童との間では、科学的理解における平均得点差は84点もあった。このギャップは、成人に移行するときに広がり、成人の技能調査では、数学の実質的な差は46点だった。OECD平均で、高等教育を受けた両親を持つ成人は、親が教育を受けていない成人と比べて、高等教育の学位を取得する可能性が4倍高かった。
また、同様にPISAの分析からは、大半の国において、平成18年から27年にかけての学習成果の公平性格差はほとんど変化していなかった。フィンランドと韓国では、他のOECD加盟国と比べると成績の公平性格差は依然として小さいものの、拡大した。
報告書では、▽社会の包摂性を高めるために、公平性と質の高い生涯学習を支援▽教育の格差解消に向けた目標を設定し、優秀な校長や教師が恵まれない環境にある学校で働きたいと思えるようにする施策▽貧しい家庭の子供を対象とした、早期の幼児教育・保育や、補習などの学習支援▽政府や雇用主、地域社会などの共同による成人学習プログラムの提供――などが有効であると指摘した。