アナキン転落(の原因)について



 アナキンがダークサイドに転落した最大にして直接の理由は、愛する人に「裏切られた」ことではないでしょうか。

 もちろん、それだけではないとは思っていますが…アナキンの抱えていると思われる、孤独・不安・嫉妬・不満・絶対的な力の渇望、愛を求めずにはいられない傾向、性格の偏りによる問題、生まれ育ちによる問題、まだまだあるだろうとも思われますが…その中でも、いわば「決定的な」要因として「裏切り」があるのではないか、そう私には思われるのですね。


 愛する人を「失う(喪失する)」ことは、言うまでもなく非常に大きな苦しみであるわけで…遠く離れてしまって会えなくなるだけでもつらいのに、まして相手が死んでしまったとしたら、苦しみはますます深くなる…まさに言うまでもないことですね。
 ことに、愛する人を理不尽にも殺されてしまったとしたら…深い喪失感に加えて、怒りや憎悪といった負の感情にも翻弄されることになってしまうと思われるわけで、非常に苦しいことではないかと思われるわけですね…これまた、言うまでもないことではありますが。

 アナキンはすでに、『エピソードI 見えざる脅威』における、シミとの別れ=「母の喪失」によって…そしておそらくは、「理想のジェダイ」=「理想の父」とみなして憧れを抱いたのではないかと思われるクワイ=ガン・ジンの死によっても、非常につらい思いをして苦んだのではないか…そう感じているのですね。。
 そして『エピソードII クローンの攻撃』においては、母シミがなぶり殺されるという悲劇によって、怒りや憎悪という負の感情に翻弄されて爆発し、タスケンを虐殺するというジェダイにあるまじき暴挙に走ってしまい、一気にダークサイドに近づいてしまった…そうも感じているのですね、これまた言うまでもないことではありますが。

 とはいえ、アナキンはまだダークサイドに落ちきってはいないわけで…少なくとも『エピソードII』の時点では、首の皮1枚だけ残してといった危うい状態ではありますが、なんとか踏みとどまっていると思われるわけですね。それはなぜでしょうか…おそらくは失う=喪失することにまさる苦しみが、人生にはあるからではないでしょうか。
 愛する人に「裏切られる」こと…これにまさる苦しみは、おそらくこの世には存在しないのではないか
…そう、私には思われるのですね。


 『エピソードII』の時点において、アナキンがかろうじてダークサイドへ転落するのを免れた最大の理由は、言うまでもなくパドメの存在があったためと思われるわけですね。
 おそらくは唯一の心の拠り所であったと思われる母シミを喪失してしまったアナキンにとって、パドメは残された最後の希望であり、シミに代わる心の拠り所であり、そして命綱そのものと言ってもよい存在ではないか…そう、私には感じられるのですね。

 ちなみに、マスターであるオビ=ワンは…心から慕い・愛し・信頼しているのではないかとは思われるものの、
おそらくは「価値観の相違」という越えがたい「壁」の存在によってお互いに対する理解が妨げられてしまっているために、アナキンにとっては心の拠り所とまではなりえてないのではないか…そう思われるのですね。
 このことはおそらく、オビ=ワン1人にとどまらずジェダイ(騎士団)という存在そのものが、アナキンにとって本当の意味での「心の拠り所」とはなりえていないということをも、意味するのではないか…そうも感じているのですね、これも個人的にではありますが。



 アナキンにとってはおそらく、自分を産みだしてくれた母シミ…父が存在しない以上、この世と自分をつないでくれる、ただ1つの確かな絆であり心の拠り所でもある存在を、「死」による別離によって「完全に」喪失してしまったことは、この世にただ1人で取り残されたことを意味したのではないか…そう、私には感じられるのですね。
 したがって、この上パドメまで喪失してしまうことは…まして、パドメをシミと同じく「殺されてしまう」という形で、喪失してしまったとしたら…おそらくアナキンは絶望し、「死んだ方がましだ」と苦しむことになるだろう…そうも思われるわけですね、言うまでもないことではあるでしょうが。

 しかし、もしパドメに「裏切られた」としたら? アナキンの絶望は、より深いものになるのではないだろうか…そして絶望にまさる怒りと憎悪を抱いたとしても不思議はないというか、むしろ当然ではないだろうか…そう、私には思われるのですね。
 アナキンでなくとも、そんな状態でまだ生きていたいと思うなら…自分を「裏切った」相手を、そして相手が自分を「裏切る」原因となったと思われる人間または存在があったとしたら…それを死ぬほど憎むより他に、生きるすべなど見いだせないのではないでしょうか。

 死ぬほど憎まなくては、生きられない…この状態こそまさに、ダークサイドそのものではないでしょうか? 
私には、そう感じられてならないのですね…悲しいことではあるのですが。


 ただ、この先もし不幸にも、こういった状況になってしまったとしても…それはおそらく、本当はアナキンの誤解というか、思い込みによるものだろう…そうも感じているのですね。
 パドメは心からアナキンを愛していると思われますし、彼女の性格からいってもおそらく、愛する人を裏切ることなど決してありえない…そうも思われるからなのですね、個人的な印象ではありますが。
 したがって、こういった誤解あるいは思い込みが生じるとしたら、その原因はおそらくアナキン自身の性格の偏りにあるだろう…そう感じているのですね。
 おそらくは、アナキンの情緒不安定な部分が、「自分は裏切られたのだ」「パドメに見捨てられたのだ」という思い込みを作りあげ、自分自身に信じこませてしまうのではないか…そうも感じているのですね、これも個人的にではありますが。

 そして、アナキンを手に入れたいと企んでいる者がいるとしたら…当然ながら、シディアスですね…この思い込みをますます煽って、確信に変えさせてしまうだろう…そうも思われるのですね。
 シディアスがアナキンに対し、さまざまな罠を仕掛けていたとしたら…事実仕掛けているとも、私には思われるのですが…その最大の目的は言うまでもなく、アナキンの心が憎悪で塗りつぶされてしまうように仕向け、「自分から」ダークサイドに落ちてしまうように仕向けること、これに尽きるのではないか…そう、私には思われるのですね。
 アナキンは罠に落ちるのですが、最終的にはあくまでも「自分から」ダークサイドにやってくることになる…絶望と、それにまさる怒りと憎悪の化身となって…おそらくはそれこそが、シディアスの望みではないだろうか…そうも思われるのですね、これまた個人的にではあるのですが。


 
個人的には、悲しみや絶望だけでヴェイダー…怒りと憎悪の化身であり、同時に「生ける死者」「機械」である存在と化してしまえるのだろうか? そう感じているのですね…やはりそれだけでは、アナキンでなくてもダークサイドへ転落してしまい、シスと化してしまう動機としては、少々弱いのではないか…そうも感じているのですね。
 なぜなら、おそらくはあまりに絶望してしまうと、生きる力そのものが失われてしまって…人は時に死を選んでしまうこともあるだろう、そう私には思われるからなのですね。
 とはいえ、アナキンに死なれてしまったのでは、罠をかけていると思われる存在としては当て外れもいい所ではないかとも思われるわけで…なのでアナキンを、「ジェダイは、そして人間はもうやめてしまいたい、しかし死ぬ気はない…なんとしても生きのびて、自分を苦しめるすべてのものに復讐してやりたい」…こういった状態に追い込んで、「自分から」ダークサイドにやってくるよう仕向けることこそ、罠をかけている存在=シディアスの狙いなのではないか、そうも思われるのですね…あくまでも個人的にではありますが。

 絶望を上回り、「死んだ方がましだ」という想いを「なんとしても生きのびて、自分を苦しめるすべてのものに復讐してやる」という想いにねじ曲げてしまうことができるもの…それはやはり、憎悪なのではないか? もし、「裏切り」があったとしたら…それも、最愛の人からの…たとえ事実は違っていたとしても、そう思い込んでしまうことで、「上には上」…絶望にまさる怒りと憎悪という、すさまじいものが生じることになるのではないだろうか? そう、私には思われるのですね。
 そして、絶望にまさるほどの怒りと憎悪があれば、アナキンでなくてもとりあえず生きていくことだけはできるのではないだろうか…そうも感じているのですね。
 なぜなら、言うまでもなく憎悪はエネルギー…それも、すさまじいばかりの力を持ったエネルギーだからなのですが…とはいえ、いわば負のエネルギーである憎悪が心を満たしてしまうと、おそらくは人としての感情は死んでしまうことになるのではないか…身体だけは生きているものの、心は憎悪のあまりに「凍りつき」死んでしまっている状態…ヴェイダーと化していた時のアナキンは、おそらくはこのような状態だったのではないだろうか
…私にはそう感じられるのですね。

 このような状態、つまり「生ける死者」「機械」のような状態になってしまったとすれば、おそらく虐殺だろうとなんだろうとまったく平気になってしまい、非道の極みを尽くしてしまえるようになってしまうのではないか…憎悪のあまりに「凍りつき」死んでしまった心は、もはや痛むことなどないだろうから…そうも思われるのですね。
 仮にそういうことであれば、それほどの怒りと憎悪を生みだせるきっかけも、相当なものでなくてはならないはずで…なのでやはり、アナキンがダークサイドに転落した最大にして直接、そして決定的な理由は、愛する人=パドメの「裏切り」(とアナキンが思い込んだこと)なのではないか、そう感じているのですね…これまたあくまでも、個人的にではありますが。


…続きます ^^☆

(『アナキン転落について』2002/07/27・『心が凍りつくということ』2002/07/28初稿、2003/11/15改稿)



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