カルチャー
ああ、それはオレたちが愛した「ドクターマーチン」じゃないんだ…|日本での大ヒットに、英国人の自虐と皮肉
Photo: Simon Dawson / Bloomberg / Getty Images
厚底に黄色いステッチのワークブーツで有名な英国発のシューズブランド「ドクターマーチン(Dr.Martens)」が、日本での売り上げを急激に伸ばしている。そのニュースに、本国のマーチンファンが猛烈に反応。記事のコメント欄には、どういうわけか自虐、皮肉、嘆き節が殺到し……。
日本だけ「88%増収」の大躍進
欧米のメディアが、日本のドクターマーチン人気に注目している。
英国の「ガーディアン」紙は「ドクターマーチンが日本で人気」の見出しで、同社の好調な業績を紹介。米国のオンラインメディア「クオーツ」も次のように報じた。
「ドクターマーチンといえば、ロック界のレジェンドやスキンヘッズ、1990年代のティーンたちに愛された靴。だが、カルチャーシーンでの知名度に、売り上げは長いこと追いついていなかった。いま、それが変わろうとしている。意外なことに東アジアで、あのイエローステッチの靴の人気が再燃しているのだ」
現在、世界全体で年間約600万足売れているというドクターマーチン。2017年3月期通期の収益は前年比25%増の2億9100万ポンド(約422億円)で、うちアジア地域からの収益が約4分の1(23%)を占めた。韓国でもドクターマーチンの人気は高いが、新たに5店舗をオープンした日本での売上が88%も伸びたのが好業績につながっているという。
一方、米国での収益の伸びは16%にとどまった。
快進撃が続くドクターマーチンだが、2000年代初めには低迷していた時期もあった。2002年には、英国内で働く従業員1000人を解雇し、製造拠点を中国に移す決断を下した。前年に2000万ポンドの赤字を出したことが原因だった(現在は英国での拠点も再開し、年に6万足を生産している)。
2007年には、広告代理店「サーチ・アンド・サーチ」が手がけたキャンペーンが大不評を買った。問題となった広告は、天国にいるシド・ヴィシャスやカート・コバーン、ジョー・ストラマーやジョーイ・ラモーンにドクターマーチンを履かせたものだった。
激高した遺族とファンを前に、ドクターマーチンはこの広告を撤回。広告代理店との契約を打ち切った。
考案者はドイツの博士
ドクターマーチンのブーツが誕生したのは1960年4月1日のこと。1901年から英国中部ノーサンプトンシャー州ウォラストンで作業用ブーツの製造を手がけてきたグリッグス家が、ドイツ人医師クラウス・マルテンス博士考案の「エアクッションソールのブーツ」のライセンスを取得して作り出した。
「ドクターマーチン」の商品名は、このマルテンス博士の名前を英国人のために読みやすくしたものだった。
価格が安く、頑丈なつくりのドクターマーチンは、英国の工場労働者や郵便配達人などの労働者階級、とくにヒッピー文化に対抗していたスキンヘッズたちの間で人気となった。
スキンヘッズは8ホールマーチンを好んで履いた
Photo: PYMCA / UIG / Getty Images
ミュージシャンでは「ザ・フー」のピート・タウンゼントが履いたのが嚆矢(こうし)となった。その後も、パンクやスカのミュージシャンたちに愛用され、ドクターマーチンは「カウンターカルチャーのブーツ」として知られるようになった。
もっとも、近年の人気再燃はマイリー・サイラス、エリー・ゴールディング、グウェン・ステファニー、ファレル・ウィリアムス、デヴィッド・ベッカムなどが履いたことがきっかけである。
グウェン・ステファニーはステージでもプライベートでも愛用
Photo: David Wolff – Patrick / WireImage / Getty Images
2013年には、プライベート・エクイティ・ファンドの「ペルミラ」が、ドクターマーチンの事業を3億ポンドで買収。同族経営の企業からグローバルブランドへと変貌をとげた。
ペルミラ傘下になって起ち上げられた「ディーエムズ・ライト(DM’s LITE)」は、従来の頑丈そうなブーツに、スニーカーのような軽くて柔軟性の高い靴底を合わせたのが特徴の新シリーズだ。ドクターマーチンのブーツといえば、履き慣らして足に馴染むまでに時間がかかったものだが、このシリーズは革がやわらかいので、最初から快適に履くことができる。
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