開催趣旨:小杉武久(1938〜)は作曲家/演奏家として、約60年にわたる活動を行ってきました。しかし、その活動は当初よりヨーロッパの伝統音楽の継承ではなく、つねに既成の「音楽」という概念を拡張しようとするものでした。小杉は大学在学中の1960年に、演奏家たちの自主性に基づいた即興演奏をする「グループ・音楽」を学友たちと結成します。60年代には反芸術集団「ネオ・ダダ」や「ハイレッド・センター」のメンバーなどと協同する一方、ニューヨークを拠点とした芸術家集団「フルクサス」とも関わりつつ、「音」を超えた音楽のありかたを追求していきました。1969年には現代音楽、ロックなどのジャンルを超えた「タージ・マハル旅行団」を7人で結成し、海岸、コンサート・ホール、ロック・フェスティバルなどのさまざまな場所で演奏を行い、国際的な活動も展開することとなりました。さらに1977年からは、ジョン・ケージが音楽監督を務めたニューヨークの「マース・カニングハム舞踊団」の専属音楽家として、さらに、個人としても世界各地で活躍しています。
70年代末からの小杉は、音を基点としたオブジェやインスタレーション作品なども制作し、美術館やギャラリーを舞台に精力的な発表を続けてきました。当館でも1996年に小杉の個展を開催し、広範囲に及ぶ彼の活動の一端をご紹介しています。しかし、これまでジャンルを越境しながらグローバルに活動する小杉の全貌に迫ることは困難でした。本展では50年代から現在までの300点を超える貴重なアーカイブ資料(記録写真/チラシ/ポスター/プログラムなど)の展示と、これまでに発表されてきたオーディオ・ビジュアル作品の大規模な展示によって、小杉の活動を俯瞰的に捉えることを目指しています。それは決して難解なものではなく、世界的に高い評価を受けてきた小杉の音楽による「ピクニック」とでも形容すべき、きわめて軽やかな「音」による芸術であるといえるでしょう。
開館時間:午前10時-午後5時(入館は閉館の30分前まで)
会場:芦屋市立美術博物館 第1、2展示室、エントランスホール
休館日:月曜日(ただし1/8・2/12は開館、1/9は休館)、年末年始(12/28-1/4)
観覧料:一般800(640)円、大高生500(400)円、中学生以下無料
○フリーパス:一般:1,200円/大高生:800円
*ご本人様に限り、会期中何度でも展覧会をご覧いただけるお得なパスポートです。
()内は20名以上の団体料金
高齢者(65歳以上)及び身体障がい者手帳、精神障がい者保健福祉手帳、療育手帳所有の方
ならびにその介護の方は各当日料金の半額
※同時開催「昔のくらし」展の観覧料も含む
※観覧無料の日:2017年12月24日(日)、2018年1月8日(月・祝)
主催:芦屋市立美術博物館
後援:兵庫県、兵庫県教育委員会、公益財団法人兵庫県芸術文化協会、神戸新聞社、FM802
協力:株式会社ゴードー
企画協力:岡本隆子(HEAR sound art library)、川崎弘二、藤本由紀夫
■関連イベント
1.トークショー
高橋悠治(作曲家・ピアニスト) 聞き手:川崎弘二(電子音楽研究)
日時=2017年12月23日(土・祝) 14:00~ *約1時間を予定
会場=講義室
定員=80名
参加費=無料(ただし要観覧券)
*要事前申込(締切12月7日(木))
2.対談
小杉武久(音楽家)×藤本由紀夫(アーティスト)
日時=2018年1月13日(土) 14:00~ *約1時間を予定
会場=講義室
定員=80名
参加費=無料(ただし要観覧券)
*要事前申込(締切12月25日(月))
3.上映会
日時=2018年1月27日(土) プログラム1「小杉武久 演奏記録」
1月28日(日) プログラム2「現代美術とのかかわり」
2月10日(土) プログラム3「PR映画・記録映画・科学映画」
2月11日(日) プログラム4「マース・カニングハム舞踊団」
いずれも13:30より(開場13:00~)
会場=講義室
定員=80名
参加費=無料(ただし要観覧券)
*申込み不要、直接会場へお越しください。
*上映予定作品はこちら⇒【最新】上映会
4.ギャラリー・トーク
日時=2017年12月16日(土)、2018年2月3日(土) いずれも14:00~ *約1時間を予定
会場=展示室
参加費=無料(ただし要観覧券)
*申込み不要、直接会場へお越しください。
■資料、作品
1 |グループ・音楽 「即興音楽と音響オブジェのコンサート」 チラシ (1961年)
2 |マース・カニングハム舞踊団 神戸公演 リハーサル風景 (1964年)
3 |《マノ・ダルマ,エレクトロニック(キャッチ・ウェーブ)》 ドローイング (1967年)
4 |《キャッチ・ウェーブ ’68》 舞台風景 (1968年)
5 |タージ・マハル旅行団 ピット・イン,ニュー・ジャズ・ホール (1970年) 山崎博 撮影
6 |タージ・マハル旅行団 (1971年)
7 |タージ・マハル旅行団 「Free Rock in Ueno」 (1970年) 武重隆夫 撮影
8 |デイヴィッド・テュードア《レインフォレストⅣ》 演奏風景 (2003年)
9 |横浜トリエンナーレ 演奏風景 (2008年)
10|《マノ・ダルマ,エレクトロニック》 (1967/2015年)
11|《ライト・ミュージックⅡ》 (2015年)
■作家略歴
小杉武久
1938年東京生まれ。東京芸術大学音楽学部楽理科卒。
1960年「グループ・音楽」という日本で最初の集団即興演奏のためのグループを共同結成。60年代初めには、イヴェント作品が「フルクサス」によって欧米に紹介され、彼らによって演奏される。1965-67年ニューヨークに滞在し、ミクスト・メディアによる作品の制作と共に、ナムジュン・パイクらフルクサスのメンバーと演奏を行う。また、1965年/66年/67年の「ニューヨーク・アヴァンギャルド・フェスティヴァル」に参加。1969年よりミクスト・メディアによる集団即興演奏を行う「タージ・マハル旅行団」のメンバーとして活動。1971年には、ストックホルムの現代美術館で開催された「ユートピア&ヴィジョンズ 1871-1981」展に参加し、会期中複数回の演奏を行う。その後、1971年から72年にかけて、ヨーロッパ各地でコンサートを開催すると共に、ヨーロッパから中近東を経て、インドのタージ・マハルへ至る「トラベリング・イヴェント」を遂行した。
この間、1970年に大阪で開催された「日本万国博覧会」の委嘱により、「お祭り広場」のための音楽3作品を作曲した。
1977年、「マース・カニングハム舞踊団」に専属作曲家/演奏家として参加、ジョン・ケージ、デイヴィッド・テュードアらと活動を共にし、1995年から2011年12月のニューヨークでの最終コンサートまでの間、同舞踊団の音楽監督を務めた。
個人としても、様々なフェスティヴァルでの演奏やコンサートを開催すると共に、サウンド・インスタレーション作品を世界各地のギャラリーや美術館で発表している。
近年では、2015年に個展(アイコン・ギャラリー、イギリス、バーミンガム)、同年、2日間の自作コンサート(ホイットニー美術館、ニューヨーク)、2016年には「あいちトリエンナーレ 2016」(名古屋)の国際展とパフォーミング・アーツの両部門に参加した。
彼は1966年と1977年に「ロックフェラー三世基金」、1981年「DAAD」(ベルリン)、1994年にはファウンデーション・フォー・コンテンポラリー・アーツから「ジョン・ケージ・アワード・フォー・ミュージック」を受賞している。
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