東京のオフィス不足が続いている。仲介大手の三鬼商事(東京・中央)が7日発表した都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の11月末時点の空室率は3.03%。10月とほぼ同水準で、08年3月以来の3%割れが目前だ。好業績を背景とする企業のオフィス拡張の動きが根強いうえ、「働き方改革」も需要拡大につながっている。
「丸の内の主要ビルはほぼ満室」。不動産サービス大手JLL(東京・千代田)の赤城威志氏はこう指摘する。東京駅前の丸の内ビルディング(東京・千代田)など主力ビルは空室がほとんどない。1月に完成した大手町パークビルディング(同)も大手弁護士事務所の入居が決まり、ほとんど埋まった。
丸の内以外も空室が不足している。ヤフーの本社がある東京ガーデンテラス紀尾井町(東京・千代田)は入居を希望する企業が多いが、空きがないという。日本橋三井タワー(東京・中央)など日本橋エリアでも満室の大型ビルが目立つ。新宿や渋谷も主要ビルに空室がほとんどない状況だ。
業績拡大に伴って従業員を増やした企業がオフィスを広げている一方、今年は大型ビルの供給が限られた。今年前半には「年後半には上昇が止まる」との見方も多かった都心5区の募集賃料は、空室不足を背景に11月まで47カ月連続で上昇。3.3平方メートル当たり1万9064円と10月から31円上がった。
最近は生産性向上など「働き方改革」をにらんで大型ビルに本社を移す企業も多い。
ソフトウエア開発のセゾン情報システムズは11月、東京・池袋などのビルから赤坂インターシティAIR(東京・港)に移転した。このビルは1フロアが約2600平方メートルと広い。固定席のないフリーアドレス制を導入したほか、オフィス内に階段も設けて異なるフロアに移動しやすくした。社員同士の交流を促進して仕事のアイデア醸成などにつなげる狙いだ。
面積当たりの賃料は移転前より上昇したが「人材育成などに必要な投資と判断した」(経営推進部の豊田あかね担当部長)。今春に住友不動産麻布十番ビル(東京・港)に移転した服飾雑貨大手、サマンサタバサジャパンリミテッドが社内に「すし屋」の設備を設けるなど、広いビルを借りて社員の士気が上がりやすいオフィスをつくる企業も増え始めている。
18年は東京都心部で大型ビルが相次ぎ完成するが、入居企業が順調に決まっている例が目立つ。現状では「空室が少なく賃料が上昇する傾向は当面変わらない」(三幸エステートの今関豊和氏)との見方が多い。