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南北海道ニュース〈特集〉

〈監督人脈記4〉「変化」と向き合って

2007年06月21日

 本場の味は格別だ。

写真渡辺伸一監督
バットを手に指導する込山久夫監督(左)
写真佐藤茂富監督

 北海道栄(胆振支庁白老町)の野球部寮で、4、5台のたこ焼き器がフル回転する。熱々のたこ焼きが次々と、選手の胃袋に収まっていく。切り盛りするのは、関西人の渡辺伸一監督(35)だ。

 渡辺監督は強豪・報徳学園(兵庫)の選手として89年の選抜大会に出場。01年に北海道栄の監督になった。このたこ焼き器は帰省した時に買ってきた。冬には鍋パーティーも開き、自ら「鍋奉行」を買って出る。

 報徳時代は練習に次ぐ練習。「やってる練習の意味なんて、監督にも先輩にも聞けなかったし、聞こうともしなかった」。しかし監督になってからは、練習のやり方を百八十度変えた。

 「理解して練習するほうが身につくから」。この練習は何を意図しているのか、説明するようにしている。試合が終わると、関西弁を交えて選手を褒める。「あのプレーは、良かったなぁ」

 少子化で大事に育てられた生徒たち。「すぐ緩んでしまうから、厳しく指導はする。ただ、頭ごなしに言うだけでは駄目。その加減が難しい」

 駒大苫小牧の香田誉士史監督(36)や北海の平川敦監督(36)とは、71~72年生まれの同学年。練習試合などで顔を合わせる度に指導方法を相談したり、悩みを打ち明けたりすることもある。

 「自分たちの高校時代と比べ、指導方法は大きく変わっている」が共通の感想だ。

    ◎

 ベテラン監督も、今どきの生徒と懸命に向き合っている。胆振支庁むかわ町。シシャモの特産地として知られる人口1万人余のこの町には、佐藤茂富監督(66)がいる。「元気、本気、一気」で打ち勝つ野球「三気野球」をモットーに、砂川北と鵡川を春夏合わせて5回、甲子園に導いた。野球指導歴は35年近い。

 昔と比べ、朝食を取る習慣のない子が多くなったという。「生まれて15年間、朝食を取ったことがない、なんて子もいたよ」。世の中や家庭がなんだか変わってきた、と思うこともある。

 鵡川は小さな学校だ。3学年合わせて194人。うち野球部員は半分近い80人にもなる。札幌など町外出身の生徒も多く、本州から来た選手もいる。寮生活をする野球部員も多いが、携帯電話は禁止だ。「真剣に野球をやっているなら、携帯に費やす時間はないと思うよ」。高校生を取り巻く急速な環境の変化にどう対処するか。模索は続く。

    ◎

 旭川実(旭川市)のグラウンドには練習前、「カチャ、カチャ、カチャ」というはしの音と、しょうゆの香りが漂う。「頂きます」。どんぶり飯に卵をかけ、一斉に食べる選手たち。込山久夫監督(60)はその姿を確認してから、練習を始める。

 「昔は入学前に体が出来ていた子が多かった。今は線が細い」。3食しっかり取るように説いても、自宅での生活までは指導しきれない。3、4年ほど前から保護者に卵と米を差し入れてもらい、練習前に食べるようにした。選手たちを後ろから見つめ、「入学時に比べ、ずいぶんしっかりしてきたな」。

 若い監督から指導法のアドバイスを求められることもある。向き合い方に悩んでいたら、「生徒と同じ目線で指導し、歩む。何より生徒も僕も、野球が大好きなのは変わらないんですから」。そう話すことにしている。=おわり

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