mizzyと申します。フリーランスのソフトウェアエンジニアで、ServerspecというOSS(オープンソースソフトウェア)の開発者として少しだけ知られています。
この記事では、DevOpsやInfrastructure as Codeについて……ではなく、私が経験した家づくりについてお話します。
2016年初頭、私は神奈川県のとある街に一軒家を建てました。現在は法人化していますが家を建てた当時は個人事業主。しかも妻と5人の子供がいる7人家族。そんな私がどうやって家を建てたのか、お金の面に着目して振り返っていきます。
家づくりのきっかけは「仮面ライダー」だった
2015年のゴールデンウィークに近所の住宅展示場で仮面ライダー関連のイベントがあり、それ目的で三男と四男を連れて行きました。当時は「家を建てる」なんて考えてもいなかったので、モデルハウスを見るつもりは一切ありませんでした。
住宅展示場の各社モデルハウス前では、ヨーヨーすくいやポップコーンなど、子供をおびき寄せるための“エサ”が用意されています。そのエサに釣られた息子たちに、さらに釣られる形で仕方なくモデルハウスに近づくと「中に入って冷たい飲み物でもいかがですか」という誘いが。暑いし喉が渇いていたのもあって、中に入って話を聞くことに。
そもそも子供が5人いるので、当時住んでいた3LDKの賃貸マンションでは限界だな、と思っていて、ずっと引っ越し先を探してはいました。が、ファミリー向け物件はほとんどが3LDK、たまに4LDKといった感じで、家族7人で住むには狭く、希望の条件に合う物件を見つけるのに苦労していました。
このような状況だったのもあって、ハウスメーカーの話を聞いた結果、 今まで考えたこともなかった「家を建てる」という選択肢が浮上することに。というか、希望の条件がそろった家に住むには建てるしか選択肢がなさそうだ、と考えるようになりました。
ちなみに、そんな重大な決断をした当時、我が家は「貯蓄なし」でした。誇張なしで本当に。もともと家を建てるつもりはなかったので頭金を貯めることはしてなかったですし、子供が5人もいると、貯蓄するのはなかなか厳しいです。
ただ、たまたま収入のよい仕事が当時入っていて、それがしばらく継続する目処が立っていたので、ある程度の自己資金を用意することができました。本当にたまたまでまったく何の参考にもならない方法なので、少しでも「家が欲しい」と思っている方は、ある程度の貯蓄をおすすめします。
我が家の家づくりの方針
というわけで「家を建てる」という決意をした我が家。どのような方針で建てたのか、家や土地に関する情報も合わせて、簡単にまとめました。
- 早く引っ越したいので、できるだけ早く進めたい
- 手間をかけるよりお金をかける
- ローンや土地探しもサポートしてもらいたいので、大手ハウスメーカーで
- 木造がいい
- 家族7人、大人から未就学児まで、それぞれ生活のペースが異なるので、ストレスにならないようお互いのペースは守りつつ、それでいてコミュニケーションがとりやすいような間取りに
- 私は家で仕事をすることが多いが、書斎にこもるのではなく、仕事しながらも家族とコミュニケーションがとれるようにしたい
- 夫婦ともに会社勤めしておらず毎日の通勤というものがないので、駅から遠くてもよい
- 次男が絶対に転校したくないというので、通ってる中学の学区内で土地を探す
- アレルギー持ちが多く、ハウスダスト、シックハウス、花粉などが気になるので、なにかよい対策や設備などがあれば導入したい
この方針をもとに、「大手ハウスメーカー」に依頼し「ツーバイフォー」工法で「延べ床面積45坪2階建ての家」を「駅から徒歩25分ほどの土地」に「全館空調とオープンな間取り」で建てることになりました。
実際にはいくつかのハウスメーカーを巡って、あれこれ検討して決めたのですが、そのあたりの経緯については端折ります。
家づくりとお金のタイムライン
家づくりを進めると、お金に関する意思決定をしたり、お金を借りたり支払ったり、といったことが当然発生します。どういった時期に、どういうふうにお金に関するイベントが発生するのか、時系列に沿って思い出しながら書き出してみます。
2015年5月上旬:情報収集&ハウスメーカー選び
スーモカウンターの家づくり講座を聞きに行く。ローンについて説明してもらい、自分の収入や毎月支払える金額を元に、総額でどれぐらい借りることができるのか、という感触をつかむ。
その後、スーモカウンターでいくつかハウスメーカーを紹介してもらい、モデルハウス巡り。情報収集フェーズで掴んだ予算感と照らし合わせながら(もちろんそれ以外の要素も考慮しながら)、どこにするか絞り込んでいく。
2015年5月中旬:ハウスメーカー決定と打ち合わせ&住宅ローン仮審査
予算をはじめ、さまざまな面からハウスメーカを1社に絞り、より確度の高い予算を出すため打ち合わせを重ねる。土地がまだ決まらないので、建物も完全には決められず不確定要素が多い。このタイミングで住宅ローン仮審査を行う。
2015年6月上旬:土地探しと買い付け
借りられるローンの金額目安と建物予算はほぼ出ているので、自己資金でどれぐらい出せそうかを算出。「ローン+自己資金ー建物予算」を土地予算として土地を探し、買い付ける。土地が決まると、建物の詳細も決まるので、この段階で建物予算もかなり確度が高くなる。
2015年6月中旬:土地&建物の各種契約とローン増額申請
土地の契約を行う。手付金として自己資金から50万円を現金手渡しで、元所有者へ支払う。土地契約後、ハウスメーカーと建築請負契約を結ぶ。翌日にこちらも自己資金から契約金101万円を振り込む。
土地代や建築請負金額を元に、仮審査時よりも400万円増額してローンの本審査。1週間ほどで内定が出た。もしローンの本審査が通らなかったら、既に支払った151万円はどうなるのかというと、ローン特約というものがあり、契約が白紙に。支払ったお金は全額戻る。
2015年7月上旬:インテリア打ち合わせ
インテリアコーディネーターと打ち合わせ。詳細を詰めていく段階で、当初予算より180万円ほど上がることになった。
予算オーバーした一因が、キッチンに施工したタイル。名古屋モザイク工業の「コラベル」というもので、これだけで14万円ほどアップした。
もう一つはトイレの壁紙。『仮面ライダー電王』の主人公の姉・野上愛理が経営するカフェ「ミルクディッパー」で使われているものと同じ、ウィリアム・モリスの「デイジー」。ここにも仮面ライダーの影響が。
ちなみに、バックマージンがコーディネーターに入るという情報をインターネット上で見かけ、否定的な意見も多かったが、同じ個人事業主としては、そういった形でお金を稼ぐのは当然のことに思えたので、すべてコーディネーターさん経由で購入し、施主支給で安く抑えることはしなかった。
2015年7月下旬:土地の決済
住宅ローンの融資は、原則1回のみ、建物が竣工して初めて実行される。でも、住宅ローンで土地を購入し一軒家を建てる場合、土地を購入した時点と、建物が引き渡された時点の2回に分けて実行される。うちの場合は、ハウスメーカーに勧められて土地代から手付金50万円を差し引いた分をつなぎ融資で借り、それ以外の仲介手数料、登記代行料、固定資産税など計120万円ほどは手持ちの現金から支払うことに。
2015年9月下旬:着工
業者によってはこの時点で、請負金額の2〜3割を支払う場合がある。うちの場合は特に支払いはなかった。
2015年11月上旬:上棟打合せ
急遽ガス乾燥機を取り付けたい、ということになり、そのための部材の調達や工事などで10万円ほど金額がアップ。業者によってはここで更に工事費の3割ほど支払うこともあるが、うちの場合は支払いはなし。
2015年11月中旬:インテリアフェア1回目
国内外の家具メーカーが集うイベントで、ダイニングセット(テーブル、チェア、ベンチ)とスタンドミラーを購入。あわせて45万円ほど。
2015年12月中旬:土地の不動産取得税のお知らせ
土地の「不動産取得税のお知らせ」ハガキが県税事務所より届く。実際の支払いは翌年2月。そんなものが存在するとは知らず、想定してなかった出費が25万円ほど発生すると分かり、痛い……。
2016年1月上旬:外構の打合せと工事
当初の見積もりから、門柱や水栓を変更したので、6万円ほどアップ。家の方にお金をかけすぎて、外構に回すお金はあまりなかったので、オープンでシンプルな外構になった。
2016年1月中旬:インテリアフェア2回目
ダイニングセットと同じ「マスターウォール」のテレビボードのほか、妻用の椅子を購入。計25万円ほど。
2016年2月上旬:完成
このタイミングでハウスメーカーへ一括で支払い。金消契約を結ぶ。土地の場合と違って、自分の口座を経由せず、融資会社からハウスメーカーへ直接支払われた。ローンでは足りなかった440万円ほどは、手持ちの現金から支払った。
2016年2月中旬:土地不動産取得税の納税通知書
前述参考。県税事務所から納税通知書が届き、25万円ほど支払う。
2016年3月下旬:省エネ住宅ポイント
省エネ住宅ポイントのポイントと交換した現金30万円が自分の口座に振り込まれた。
2016年9月:土地の不動産取得税還付
2月に土地の不動産取得税を支払い済みだが、その土地で家を建てると軽減措置が受けられる。県税事務所に問い合わせて書類を送ってもらい、郵送で申請。申請から20日ほどで納付済みの25万円が全額返ってきた。
2017年9月:家屋の不動産取得税
県税事務所からお知らせハガキが送られてきて、その後納税通知書が届く。2万円ほど支払う。家屋の不動産取得税は、軽減措置により0になる場合もある。その場合、ハガキや通知書の類いは届かない。
家づくりとお金とフリーランス
続いて、家を建てる際にどのようなお金がかかったのか、参考までにハウスメーカーが作成した資金計画チェックリストの最終バージョンを載せます。
これ以外にお金がかかったのは火災保険ぐらいなので、ほぼ総額といってよい金額になっています。
ちなみに「フリーランスってローンの審査通るの?」と思われる方も多いでしょう。結果として私は通ったわけですが、やはり制限はあります。
都市銀行や地方銀行は、銀行にもよりますが最低2期分の実績がないと通りません。当時、自分はフリーランスになって1年ほどしか経っておらず、1期分の実績しかなかったため、都銀と地銀はダメでした。が、フラット35は通りました。
審査で見られる年収は、会社員であれば税込みの年収ですが、フリーランスの場合は収入から経費を差し引いた所得金額になります。下にある確定申告書B表の赤枠で囲った部分です。
上述の家づくりのタイムラインの中で、何度か自己資金から支払っているタイミングがありますが、最初に書いたとおり、当時たまたま収入のよい仕事が入っていて、それがしばらく継続する目処が立っていたので、自己資金から捻出することができました。フリーランスが家を建てるにはいろいろな障壁がありますが、こういったイレギュラーな収入は、会社員のままだったら無理だったでしょう。また、法人化して自分の会社から毎月一定額の役員報酬をもらう今の立場でも、やはり無理だったと思います。
毎月の源泉徴収がない、という点も会社員時代や法人化した現在とは違うところです。確定申告のタイミングで所得税を一括で支払わないといけないので、売り上げや経費から想定される所得税を常に計算しながら家づくりを進めていきました。
所得税以外にも、長男の高校入学や筆者の大学の学費(筆者は学生もやってます)など支払いが必要なイベント、学資保険の祝い金、児童手当、省エネ住宅ポイントなどお金が入るイベント、これらのイベントが発生するタイミングと想定される金額をGoogleスプレッドシートに全部書き出していました。支払いや収入、突発的なイベントの発生(洗濯乾燥機の乾燥機能が壊れて急遽ガス乾燥機を買うことになった)など、状況に変化があればスプレッドシートを更新して、キャッシュフローに問題がないかを常に確認しました。
また、申告所得税の納付期限は通常であれば3月中頃ですが、振替納税すれば4月下旬まで引き延ばせるので、少しでも支払いを先延ばしてキャッシュフローに余裕を持たせるため、振替納税の手続きを行いました。
「マイホーム」で働くフリーランスの仕事風景
最後に、普段仕事で使っている部屋を中心に、少しだけ家の中を写真で紹介します。
モデルハウスで見て一発で気に入って取り入れたオープン書斎。ここで仕事をしていることが多いです。
玄関がすぐ隣なので、来客や宅配便などが来たときにもすぐに対応できます。子供部屋は2階にあるので、子供たちは学校から帰ってくると、仕事している父の横を通って自室へと向こうことになります。
リビングでソファに座って、テレビを見ながら仕事をすることも。
オープン書斎はキッチンとつながる小窓があるので妻と会話しやすい。
集中したいときにこもるためのクローズドな書斎も。黒板がある。
三男と四男は自分の部屋がないので、この書斎で勉強させつつ、自分は隣で大学の勉強をこなす。
おわりに
お金の面に着目、といいつつ、家や土地の具体的な金額が書いてねーじゃねーか、と思われる方もいらっしゃると思いますが、そこはご容赦を。不特定多数の方の目に触れるところではさすがに書きづらいですね。
とはいえ、詳しい方であれば、断片的な金額から総額を推測することができるかもしれません。ぜひ推測して楽しんでみてください。
以前の狭い家では、お互い必要以上に干渉せざるを得なく、それがストレスとなっていましたが、今の広い家だと家族7人、お互い干渉し合うことなく好きなことができ、かつ間取りがオープンなので適度にコミュニケーションもとれる、という最高の環境になりました。また、駅から遠くなったことで、以前は不要だと思っていた車を購入したのですが、気軽にあちこち行けるようになったのも良いですね。駐車場代もかからないし。40歳を過ぎてからの35年ローンかつ収入が不安定なフリーランス、と不安がないわけではないですが、家を建てて本当によかったです。
著者: 宮下剛輔(id:MIZZY)
フリーランスのソフトウェアエンジニア。著書に「Serverspec(O'Reilly Japan)」、監訳書に「Infrastructure as Code(O'Reilly Japan)」がある。
サイト:mizzy.org