2017-12-06

電車がきます

電車、くるかな?」

突然、きみが言った。

「そりゃあくるよ。まもなく…」

そう言って接近表示を指すと、そこには「つうか」の文字が光っていた。

ごう、と音を立てて、特急電車が目の前を通り過ぎていく。

きみの髪がなびいた。

「…」

「えっ」

かき消された声の方を見たとき、きみはとても晴れやかな顔をしていた。

「私、少しほっとしているみたい」

遠ざかる電車の音を聞きながら、「そう」としか言えなかった。

「それじゃあ」

「うん」

ようやくきた上り列車に、わたしは乗る。

何も言えず、わたしときみとを隔てる白線を眺めていた。

「ありがとう」

ドアが締まる直前になんとか絞り出した声が、届いたかは分からない。

しかったよ。

きみは発車を待たず、トランクの向きを変えた。

いつものバスに乗って帰るのだろう。きっとすぐにくるよ。

もしあの時、電車がきていたら(しゃがしゃが)

きみは(しゃがしゃが)わたしは(しゃがしゃが)

 
 
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