井川ダム、電力生む“洞窟” 水力で生活支え60年
(2017/12/6 07:40)-
中部電力の井川ダムと井川水力発電所(静岡市葵区)がことし9月、1957年の運用開始から60年を迎えた。当時、高価だったコンクリートの使用量を減らすため、内部を空洞にする「中空重力式」を国内で初めて採用した。11月中旬、かつて工事作業員と資材を運ぶために敷かれた大井川鉄道井川線に乗り込んでダムを訪れ、ダム内部に入った。
大井川上流部を目指し、静岡駅から鉄道を乗り継いで約4時間。終点の井川駅に降り立つと、森に囲まれ豊かな水をたたえた井川ダムが姿を現した。高さ103・6メートル、放水ゲートは3門。周辺景観について「見頃は新緑の春か紅葉の秋」と井川水力管理所の杉本公成所長(57)は言う。
最上部からエレベーターで約90メートル下がり、洞窟のような暗いダムの底に到着した。ひんやりとした空気と、反響する足音や声。道を進むと、身長の2倍はありそうな2本の水圧鉄管が視界に入ってきた。鉄管は直径約3・6メートル。手のひらを当てると、ものすごい勢いで中を流れる水の振動が伝わる。鉄管の先は発電所に続いていた。
発電所は24時間稼働だが、今は遠隔操作で運用しているため、無人状態。タービンの回る音と水流音が部屋いっぱいに響く。発電機の中をのぞき込むと、高速で回転する直径2・5メートルのタービンの軸が見えた。1秒当たり最大80トンの水を使い、年間約1億8千万キロワット時の電力を生み出す。点検の際には、100分の1ミリ単位で調整する必要があるという。
水力発電は、再生可能エネルギーの中でも安定供給と出力調整に優れている。中電はさらなる効率的な発電を目指し、井川ダムの下流部に建設中の新奥泉発電所を来年3月に運用開始予定。水を一滴でも無駄にしたくないという杉本所長は「100年と言わず、使える限り大事に運用していくつもりだ」と話し、ダムを見上げた。
<メモ>井川ダム 中部電力の初代社長で、ダム建設の指揮を執った井上五郎氏の名前を取り「井川五郎ダム」との愛称でも親しまれる。ダム建設に伴い、当時の井川村の193戸が水没した。完成時の総貯水容量は約1億5千万立方メートルで、現在は土砂堆積などのため約1億立方メートル。約3年間にわたったダム建設と周辺工事を合わせて72人の犠牲者が出た。
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