日本を代表するアレルギーの名医が解説する研究成果アトピー対策 と注目の「L-92乳酸菌」
夏の汗や秋冬の乾燥、ストレスや食事など、様々な刺激にあふれる現代社会。あらゆる刺激によるアトピー性皮膚炎でお悩みの方が増えているといわれています。そんな皆様のために、近年のアトピー性皮膚炎の傾向や発症メカニズム、最新の対策まで、アトピーの名医が詳しく解説いたします。
鳥居先生:アトピーなどアレルギーを引き起こす物質であるアレルゲンは食べ物や化学物質などみなさまの生活環境の中に、ごくふつうに存在しています。また、アトピーの発症には環境因子に加え、個人の体質も大きく影響してきます。環境の変化やライフスタイルの多様化がめまぐるしい現代においてはその影響もなおさらです。
ここ20年ではアトピーの発症傾向も変わってきたんです。以前は乳幼児の発症が多く、学齢期になると自然に治っていましたが、最近では成人になっても自然に治ることなく症状が続く人や、悪化する人が増えてきています。
このようにアトピーの有病率が年々高まる中、その対策は発症してからのアトピーケアだけでなく、日頃から皮膚ケアや免疫バランスを崩さないよう心がけていくことが重要になってきているのです。
鳥居先生:アトピー性皮膚炎などのアレルギーは免疫バランスのくずれによって発症します。ヒトの免疫システムには、司令塔の役目をするTh1(主として感染に働くT細胞)とTh2(主としてアレルギーに働くT細胞)、Treg(主として免疫調節に働くT細胞)が関わっているといわれています。これらのT細胞は互いにバランスをとりながら免疫をコントロールしています。しかし環境や生活習慣によって、Th2が過剰になったりTregが弱まったりすると、免疫バランスがくずれ、アレルギーが発症してしまいます(図1)。つまり、アレルギー対策のポイントは、免疫バランスを整えることだといえそうです。
さらにもう1つ、「皮膚バリアー障害」にも注意が必要です。皮膚には表面に角質層と呼ばれる部分があります。正常な皮膚なら、この角質層とそのすぐ下の表皮がバリアーとなって細菌やアレルゲンの侵入を防ぎ、皮膚内部の水分の過剰な流出を防いでくれます。しかし、ふだんの生活の中でこの皮膚のバリアー機能が傷つけられると、そこからアレルゲンが入り込んでアレルギーを発症しやすくしてしまいます。皮膚バリアーを守るためにも、日頃からスキンケアを中心に皮膚の清潔と保湿を心がけるようにしてください。
鳥居先生:いま、新たなアレルギー対策として専門家からも注目されているのが「L-92乳酸菌(ラクトバチルス・アシドフィルスL-92株)」です。この特別な乳酸菌は、免疫をつかさどる細胞に働きかけ、抗アレルギー作用を引き出してくれることがいくつもの研究から明らかにされています。
神奈川県の横浜市大で池澤善郎先生らによって行われた試験では、中等症以上の難治例が多い成人のアトピー性皮膚炎に対しても、有効性を確認することができました。
試験では18歳から54歳のアトピー性皮膚炎患者49名のうち、24名に「L-92乳酸菌」を含んだ食品を、25名に「L-92乳酸菌」を含まない食品(プラセボ)を、通常の投薬治療は継続したまま8週間摂取してもらい、その経過を比較しました。その結果、図2のように、「L-92乳酸菌」を摂取したグループでは皮膚炎スコア(SCORAD)が有意に低下したことが確認されました。また、図3ではアレルギー性の炎症に伴って増加する血液中の好酸球数がプラセボ群に比べて、有意に低下したことが示されました。さらに図4では「L-92乳酸菌」を摂取したグループは、Treg誘導因子の一つであるTGF-βが有意に増加したことがわかりました。
SCORADとは、Scoring atopic dermatitisの略語で、アトピー性皮膚炎の重症度(皮膚症状とかゆみ)を指数化したもの。英文の文献では、現在、最も広く採用されています。
4歳から15歳までのアトピー性皮膚炎患者20名を対象に、「L-92乳酸菌」を8週間摂取してもらい、その経過を比較していきました。図5では「L-92乳酸菌」を摂ることで重症度スコアが低下し、皮膚のかゆみや皮膚症状が改善してきていることがわかります。また、ステロイド軟膏の使用量が減ったことが示されました。図6でも有効と感じる割合が90%にも達しています。
1歳から12歳のアトピー性皮膚炎患者50名を対象に、「L-92乳酸菌」を含む食品を摂取するグループ(26名)と「L-92乳酸菌」を含まない食品(プラセボ)を摂取するグループ(24名)に分けて、8週間にわたり試験を行いました。
その結果、図7のように「L-92乳酸菌」を摂取したグループでは摂取していないグループに比べて、皮膚症状+治療スコア(SMS)が改善しました。
16歳から49歳のアトピー性皮膚炎患者50名のうち、24名に「L-92乳酸菌」を含む食品、26名に「L-92乳酸菌」を含まない食品(プラセボ)を摂取してもらいました。
通常の投薬治療は継続したまま24週間摂取してもらい、経過を比較しました。
その結果、「L-92乳酸菌」を摂取した群では摂取していない群と比較して、皮膚炎スコア(SCORADおよびEASI)が改善しました。
図8のように、皮膚症状とかゆみなどの自覚症状から算出される皮膚炎スコア(SCORAD)は8週から24週にかけて継続して改善が確認されました。また、図9では皮膚症状から算出される皮膚炎スコア(EASI)は24週で改善が確認されました。
「L-92乳酸菌」の摂取によって、かゆみなどの自覚症状が早期に緩和され、続いて皮膚症状などが緩和される可能性が示されました。
あいち小児保健医療総合センターの伊藤浩明先生が行った最新の研究では、生後10ヶ月以上3歳未満の乳幼児のアトピー性皮膚炎でも有意な緩和が確認されました。その有効性データについては第63回日本アレルギー学会秋季学術大会(2013年)でも発表されています。
図10は、皮膚炎の重症度を示すスコアの推移を表したグラフで、「L-92乳酸菌」(20mg)を摂取した群で有効であることがわかります。また、図11は血液中のアトピーに関連する2つの因子を調べたものです。TARCとは免疫バランスを崩す原因となるTh2が活性化することで産生される因子です。また、総IgE値はTh2が過剰な状態で産生されるものです。これらがどちらも下がっているということは「L-92乳酸菌」が過剰になったTh2を抑え、Th1とTh2で免疫バランスを整えた可能性が示唆されます。
鳥居先生:幅広い年代で「L-92乳酸菌」の効果が示されたといえます。この結果には非常に驚きました。今後のアトピー治療において、大変意義のある研究成果だと思います。
鳥居先生:カラダの中の免疫バランスを整える「L-92乳酸菌」には、アトピーだけでなく、通年性アレルギー性鼻炎や花粉症といったアレルギーへの有効性も確認されています。それぞれの症状において、「L-92乳酸菌」を8週間摂取したグループは有意な改善が確認されています。
通年性鼻炎を持つ49名を2つのグループに分け、25名に「L-92乳酸菌」を含む食品を、24名に「L-92乳酸菌」を含まない食品(プラセボ)を8週間摂取してもらい、症状の変化を測定しました。その結果、図12、図13のように「L-92乳酸菌」摂取群では、摂取していない群に比べ、鼻は有意に改善、眼は改善傾向にあることが確認されました。
花粉曝露試験施設(所在地:和歌山県有田郡有田川町、所有:NPO日本健康増進支援機構)において、「L-92乳酸菌」を用いたスギ花粉曝露試験を実施しました。試験では花粉症の症状をもつ人80名を「L-92乳酸菌」配合食品を摂取する3グループ(菌末量20mg、60mg、180mg)と「L-92乳酸菌」を含まない食品(プラセボ)を摂取するグループの計4グループ(各20名)に分け、花粉曝露を行いました。その後、8週間摂取してもらった後、再び花粉曝露を行い、摂取前後の眼や鼻などの花粉症の症状の変化を解析しました。
その結果、「L-92乳酸菌」摂取グループで、花粉再曝露後の「眼の症状」、「鼻の症状」に緩和が認められました(図14・15)。
スギ花粉シーズンに、花粉症の症状を持つ被験者23名のうち、12名に「L-92乳酸菌」を含む食品を、他の11名には「L-92乳酸菌」を含まない食品(プラセボ)を、6週間摂取してもらいました。その結果、「L-92乳酸菌」を含む食品を摂取したグループで、眼の症状スコアが有意に改善し、医薬品の使用頻度も減りました。 (図16・図17)
鳥居先生:アトピー症状の改善のために、すぐに実践できるアトピー対策をご紹介します。私が診ている患者さんにもアドバイスしている、簡単な方法なので、ぜひ普段の生活の中でもやってみてください。
強い界面活性剤の入っているシャンプーや洗剤は避け、昔風の石けんを使ったり、綿やシルクといった自然素材の衣服を着るなどを徹底しましょう。保湿など意識的に皮膚をケアしてあげることも忘れないでください。また、食生活では、肉を少なくして、魚を食べること、野菜は根菜類を多く摂るようにしてください。具体的には昔ながらの和食に近づけた献立で、それを1日3食摂ること。
このように従来の西洋医学的な薬を用いたアプローチに加え、食生活などの習慣を見直しカラダ全体のバランスを整えることをおすすめしています。臨床医としての経験からも、その方が症状の緩和や治癒に結びつきやすいように実感しています。身近なところからアトピーケアを実践して、刺激に負けないカラダづくりを心がけてください。