信毎ニュース

やしょうまの温かみ伝われ 中野の原さん、指導に力

11月06日(金)09時46分

糸を使ってやしょうまを切る原さん

 中野市桜沢の食生活改善推進員原楫(かじ)さん(80)は、米粉を練って作る郷土食「やしょうま」を次世代に伝える活動に力を入れている。公民館や地元の小中学校で子どもらに作り方を指導しているほか、昨年10月には作り方を分かりやすく解説した冊子を作った。地域に根付いた食文化を通じ子どもたちに心豊かな暮らしを伝えたいと思っている。

 原さんによると、やしょうまは釈迦(しゃか)が亡くなったとされる日に合わせ、地元では毎年3月14日に仏壇に供える。うるち米の粉や白玉粉、砂糖、塩が原料だ。蒸した生地を直径5センチほどの細長い形に伸ばし、端を糸でくくるようにして1センチ弱の厚さに切る。

 昔はゴマや大豆を生地に混ぜるのが主流だった。昭和の終わりごろになると、自然素材を使って黄色や緑、赤などに着色した生地を組み合わせ、「金太郎あめ」のように断面に絵柄を出すやしょうまが登場した。原さんも「子どもに楽しく受け入れてもらいたい」と考えて、絵柄を考案。レパートリーはヒマワリやサザンカ、童(わらべ)など約50種類に上る。

 原さんが子どものころは、やしょうまを学校に持っていって友達と交換した。帰宅後は「友達はこんな作り方してたよ」と、親子の会話を楽しんだ。原さんは自宅でやしょうまを作りながら、「作っていると心がほっとする。勉強だけではなく、心の温かみも伝えられると思う。今の世の中は忙しいけれど、ふるさとにこういう郷土食があることをしっかりと残していきたい」と話す。

 作り方をまとめた冊子「たかがやしょうまされどやしょうま」(1冊2千円)は2千部作成。北信地方の小中学校や県内の高校などには無料配布した。このほか公民館の親子料理教室や地元の小中学校にも講師として出向き、やしょうまの作り方を指導している。

 原さんは食生活改善推進員として40年以上にわたり食育や健康増進に取り組んできた。この活動が認められ、今年秋の緑綬褒章の受章者に選ばれた。現在は、県や中野市の食生活改善推進協議会顧問を務める。「食生活改善推進員の仲間と一緒にやしょうまの魅力を伝えていきたい」と考えている。

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