ビジネスホテルチェーン国内最大手のアパホテルの宿泊満足度をめぐって、ビジネス誌2誌のアンケート調査結果が真っ二つに割れる珍現象が起きた。「週刊ダイヤモンド」11月4日号の特集「1万人が選んだ ベストホテル&エアライン」では、同ホテルの満足度は20ホテル中トップ。その1週間前に発行された「日経ビジネス」10月23日号特集「ビジネスパーソンに聞く 後悔しない航空&ホテル 5000人満足度ランキング」では、同ホテルの満足度は35ホテル中最下位だった。
なぜ正反対の結果が出たのか。その原因を探るには、ホテルの評価方法に目を向ける必要がある。
まず評価方法について。ダイヤモンドでは、直近2年間に宿泊したビジネスホテルについて、満足したホテルを上位3つ、不満だったホテルを1つ挙げる形だった。そして満足したホテルには1位5点、2位3点、3位1点を付与し、その総計でランキングしている。
一方、日経ビジネスでは、「客室」「共用部」「接客サービス」「コストパフォーマンス」の4項目について、「非常に満足」100点、「満足」50点、「普通」0点、「不満」-50点、「非常に不満」-100点の5段階で評価してもらい、各項目の平均を算出。4項目の合計値でランキングしている。
一店舗当たりの得点ではダイヤモンドでもランキングは下位に
トランスコスモスアナリティクス副社長の萩原雅之氏は、「ダイヤモンドの評価方法では、店舗数や宿泊経験者数の多いホテルの数字が高く出やすい。店舗数が多いアパホテルと東横インは当然宿泊経験者も多く、結果的に高得点になったのではないか。仮に1店舗あたりの得点を計算すると順位が大きく逆転し、アパホテルはワーストに近くなる」と指摘する。
過去2年の出張宿泊がアパホテル1回だけで、特段の不満はなかった回答者の場合、ダイヤモンドの評価方法では自動的に1位の5点が付くわけだ。2位、3位であっても、宿泊者が多いので塵も積もれば高得点になる。
なお本誌がダイヤモンドの調査結果について各ホテルの店舗数と得点の相関関係を調べたところ、決定係数(R2)は0.748と非常に強い相関を示す値が出た。すなわち、ホテルの満足度は店舗数で7割方決まる、ということである。
ダイヤモンド編集部は次のように説明する。「このアンケート調査では、出張で利用して良かったホテルを自由記述で挙げてもらっている。確かに全国展開している店舗数(部屋数)の多いホテルが上位にきやすい傾向はあるが、不満に感じたホテルが『泊まって良かったホテル』として挙がることはない。したがって得票を集めたホテルは、それなりの評価が集まっていると考える」。
本誌では、正誤のジャッジはしない。お伝えしたいのは、一見、真っ当そうな設計に見える2つの満足度調査で、正反対の数字を出せてしまう衝撃である。調査を手掛ける立場で、またデータを分析する立場でも、数字を左右する別要因などに目を光らせる必要がある。
当初、「相関係数(R2)は0.748」と掲載していましたが、「決定係数(R2)は0.748」の誤りでした。本文は修正済みです[2017/12/05 12:30]