神戸市の世界最大のクリスマスツリープロジェクトが賛否を呼んでいるが、アメリカでもクリスマス・デコレーションが話題になっている。
近年、欧米では、クリスマスはそれなりにデリケートな問題になっている。
多くがキリスト教を国教としてきた欧米では、クリスマスを中心に休暇をとる習慣がある。日本のお正月休みのような感覚だろう。デパートなどの小売店にとっては絶好の商機であり、店のディスプレイや装飾はクリスマス仕様に一変する。
しかし、公的な場面となると話は別だ。大統領が聖書に手を置いて宣誓し、演説でしばしば神に言及するといった点では日本とは異なるが、米国は政教分離を掲げる国だ。国家が特定宗教集団だけを益するような振る舞いは基本的には認められない。
だが、イエスの誕生日を祝うクリスマスは間違いなく宗教的な慣習だ。価値観・世界観が多様化した社会において、特定宗教の信仰対象の祝祭は問題にならざるをえない。
このあたりについては、クリスマスがそもそも消費文化として定着した日本では、むしろルーズになっているのかもしれない。
近年、欧米においては、公的な場面では「メリー・クリスマス」ではなく「ハッピー・ホリデイズ」と言い換えるべきではないかといった議論も起きている。
2015年には、スターバックスのクリスマス・シーズンのカップデザインが問題になった。それまでスタバはサンタクロースやもみの木などをあしらったカップをリリースしてきたが、同年、非キリスト教徒にも配慮して赤一色のデザインにした。
だが、これに対して保守的なキリスト教徒から批判が生じたのである。
さまざまな調査があって正確な数字は不明だが、米国民の半数以上は「メリー・クリスマス」と言うことに違和感はなく、「ハッピー・ホリデイズ」と言い換えるべきだ、あるいは何も言うべきではないといった意見は少数派のようだ。
ただ、高齢の人々はクリスマスにこだわり、若年層ほど中立的な「ハッピー・ホリデイズ」を好むという世代間の違いもあるようだ。政治的な立場によっても有意な差異がでるだろう。
一見、呼称をめぐる些細な問題のように思われるが、つまりはキリスト教文化を卓越した伝統として特別扱いするかどうかということであり、保守かリベラルかといった政治観とも結びつく問題なのである。
この点に関して、トランプ大統領の立場は明確で、米国の伝統である「メリー・クリスマス」を使うべきだと主張している。
11月末には英国の極右団体による反イスラーム的な動画をリツイートして批判を集めたが、ここでも保守的なキリスト教徒の立場を打ち出している。