AI防災、つぶやき分析 ビッグデータ活用進む

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2017/12/5 6:30
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 ビッグデータや人工知能(AI)が防災を変えようとしている。全国に張り巡らされた地震観測網や交流サイト(SNS)上の膨大なデータを瞬時に解析し、被害軽減や迅速な救助・救援に役立てる技術開発が急進展してきた。IT(情報技術)を駆使した「電脳防災」は災害対応を一変させる可能性があり、ビジネスチャンスとみる企業も増えている。

■陸・海の地震計2100台つなぐ

太平洋沖の地震計がネットワークで結ばれ、地震発生直後に揺れや津波の予測が可能に(防災科技研提供)

太平洋沖の地震計がネットワークで結ばれ、地震発生直後に揺れや津波の予測が可能に(防災科技研提供)

 11月16日、日本列島や近海に設置された約2100台の地震計を結ぶ世界最大の地震観測ネットワークが稼働した。国立研究開発法人・防災科学技術研究所が運用する「陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS=モウラス)」だ。

 防災科研は1995年の阪神大震災後、全国に高精度の地震計を配備してきた。陸では800カ所の高感度地震計からなる「Hi―net」など、海でも東北地方太平洋沖や紀伊半島沖・四国沖に「S―net」「DONET」と呼ぶ海底地震観測網を敷設。モウラスはこれらを一体運用し、膨大な観測情報がビッグデータとして集まる。

 期待されるのが、緊急地震速報の信頼性を高めて被害軽減につなげたり、地震発生直後に被害を予測したりすることだ。

 2011年の東日本大震災は太平洋沖が震源だったが、海に地震計や津波計がほとんどなく、気象庁の地震速報や津波予報は大きく外れた。モウラスは震源近くの地震計で地震や津波の発生をいち早くとらえて警報を出すことができ、特に震源が海にある海溝型地震で威力を発揮する。

 工場では揺れ始める前に生産ラインを止めれば被害を軽減でき、産業界もモウラスに期待を寄せる。最初に利用を決めたのがJR東日本、東海、西日本の鉄道3社だ。地震時に新幹線を自動停止するシステムを導入しており、これまでは主に自社の地震計で地震の初期微動を検知し、新幹線を緊急停止していた。

 JR東日本はこれにモウラスを接続し、11月から運用を始めた。「列車停止までの時間を最大20秒ほど短縮でき、その間の脱線リスクなどを減らせる」(同社)

 モウラスはほかにも各地の震度分布をもとに建物の倒壊や負傷者、避難者の数などを予測し、迅速な救助や救援に役立てる用途も期待される。防災科研は地震直後に詳細な震度分布を示す「強震モニタ」を開発し、昨年の熊本地震の被災地支援でも活躍した。

 津波の遡上や浸水範囲などもリアルタイムで予測できるようになり、「ライフライン系の企業から引き合いが来ている」(防災科研の青井真・地震津波火山ネットワークセンター長)という。

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