海苔の品薄・高騰いつまで?生産地で異変も
お弁当の定番といえば「おにぎり」や「海苔(のり)巻き」。これらに欠かせない海苔が今、品薄となり値上がりしている。海苔の生産地を訪ねると、そこには思わぬ被害が広がっていた。
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■東京・文京区「おにぎりカフェ 利さく」
――今までの海苔の価格だと、その(今までの)クオリティーの海苔が入ってこないんですよ。なので、そのクオリティーの海苔を入れるためには(海苔の)値段を、ちょっと上げていかないといけない。
吉江重昭店主によると、九州の有明海産の海苔が不作で、価格が高騰しているという。そのため、海苔を使わないおにぎりの種類を増やすなど、対策をしていた。
4日、愛知県で行われた海苔の初セリでは、伊勢湾などでとれた約880万枚が取引されたが、今年は台風による収穫の遅れや、魚や鳥に食べられる被害が出て、品質には影響はないものの出荷量は去年より減少した。そのため、平均価格は去年よりも上昇し、中には、1枚70円あまりと初セリとしては過去最高値をつけたものもあった。
実は国産の海苔の卸値は4年連続で上昇していて、約5割もアップしている。そのため、大手海苔メーカーでは5月から値段を上げたり、値段を据え置き内容量を減らしたりするなど、実質的な値上げを行っている。
■新富津漁業協同組合所属「鈴藤丸」
――食害で短くなってしまった。育ってはいるんですけど、のびると、どんどん食べられて、短くなった状態。
鈴木和正さんによると、クロダイなどによって海苔が食べられてしまっているという。クロダイなど、魚のエサとなる海藻が減っているため海苔をエサにしてしまっていると、鈴木さんは話す。そのため、魚が海苔を食べないように海苔の網の下にネットを張るなどして対策しているというが…。
ネットを作るのにも経費や手間がかかる上、対策をしていても魚が学習するため、来年以降も同じ効果が出るかはわからないという。
■海苔生産量・全国7位の愛知県
愛知県では商品価値のない“色落ち”した海苔が増えているという。色落ちが起こる原因について、専門家は「海苔が育つ海の変化」を指摘する。
名城大学大学院・鈴木輝明特任教授「きれいな海ではあるが、豊かな海ではなくなっている。つまりそれは、きれいになりすぎたということじゃないですかね」
海苔の栄養分となるリンは本来、生活排水に多く含まれているが、下水処理施設で処理される過程で除去されている。しかし、処理の能力が上がりすぎて、海苔の栄養分であるリンがほとんど海に流れず、色落ちの要因になっているという。
これを受け、愛知県では先月からこれまでの2倍ほどのリンを海へ放出する対策に乗り出した。効果が上がれば、来シーズン以降も続けていくという。
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私たちに身近な食材である海苔の価格高騰。この状況はいつまで続くのだろうか―。