開発資金確保が目的か スパコン助成金詐取事件

社会
2017/12/5 22:21
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 スーパーコンピューター開発ベンチャーによる助成金詐取事件で、詐欺容疑で逮捕された斉藤元章容疑者(49)らが、助成金の上限である5億円ぎりぎりまで受け取れるように事業費用を水増しした疑いのあることが5日、関係者への取材で分かった。安定した開発資金の確保などを目的に不正を行った可能性があり、東京地検特捜部は全容解明を進める。

逮捕された斉藤元章容疑者

逮捕された斉藤元章容疑者

 「PEZY Computing」(ペジーコンピューティング、東京・千代田)の社長を務める斉藤容疑者は同社の元事業開発部長、鈴木大介容疑者(47)と共謀。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2013年に公募した助成金約4億3100万円をだまし取った疑いが持たれている。

 同助成金は3~5年以内に実用化が見込まれる技術開発を手がけるベンチャー企業に対し、事業費の3分の2以内を年5億円を上限に支給する。交付が決まった企業にはいったん金額の一部が支払われ、事業終了時に実際の事業費を報告して全額が支給される仕組みだった。

 特捜部によると、2人はメモリーデバイスの開発に絡み14年2月、事業費を約7億7300万円とした内容が虚偽の実績報告書をNEDO職員に提出し、助成金額はほぼ上限の約4億9900万円に確定した。翌3月、すでに支払われた約6800万円を除いた約4億3100万円が同社に支払われた。

 事業費は本来の経費より水増しされており、特捜部は助成金を上限まで受け取れるよう逆算して水増し額を決め、実績報告書に記載していたとみている。

 業界関係者によると、ペジー社は半導体チップの製造などで最先端の工程を採用。相当な開発費用が必要という。こうした事情を背景に安定した開発資金の確保を目的に助成金を詐取した可能性もあり、特捜部は動機を含めた実態解明を進める。

 NEDOによると、同社は今回のものも含め、スパコンに搭載するデバイス開発に絡み10~17年度に計5件約35億2400万円の助成金を受け取っている。

 同社などが開発した省電力のスパコン「暁光(ぎょうこう)」は毎秒約1京9千兆回(京は兆の1万倍)の計算速度を記録し、11月に発表された世界のスパコンランキングの計算速度部門で4位になった。

    ◇

 ベンチャー企業のペジーコンピューティング(東京・千代田)について、日本経済新聞社は11月1日付朝刊「ニッポンの革新力」や同20日付「NEXTユニコーン調査」などの記事で取り上げました。

 同社のスーパーコンピューターは理化学研究所情報基盤センターに納入されており、性能を評価した理研は「問題はない」と説明しています。スパコンの計算速度を競う国際ランキング「TOP500」で4位に入り、省エネ性能の「グリーン500」でも首位になるなど外部の評価や独自の取材を踏まえて掲載しました。

 また2016年、学識者の評価に基づいて日経地球環境技術賞を授与しています。

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