アメリカはポートランドに来ております、るってぃです。
1年半前、Airbnb(エアビーアンドビー)を通じてポートランドのゲストがウチに来ました。彼女の名前はBethany、デートという名の東京案内をしたのが懐かしい記憶。
関連記事:Airbnb使えば可愛い外国人とデートできるんだぜ(ドヤ顔)
今回逆に僕がボートランドに行くということで、彼女に連絡し久しぶりに会うことに。
Bethanyにガイドブックには載ってないオススメスポットに連れてってもらいました。これぞAirbnbの魅力ですよね。
オールドゲームが揃ったアーケードに連れてってもらいました。
最後にBarで飲みながら「来年なにする?」という話になりました。
するとBethanyは「Adoptionって知ってる?」と聞いてきました。
僕はいきなり出た聞きなれない単語に「なにそれ?」と陽気に答えるだけでした。
Bethanyは英語が上手くない僕のために1から丁寧に説明してくれてようやく理解できました。養子のことなんだと。
そして彼女は「私、お母さんになるの!」と笑って言うわけです。日本のごく普通の家庭に育ってきた僕にとって、昨夜のBarでの一件はこれまでの価値観を大きくひっくり返すものになりました。
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アメリカでは珍しくないAdoption(養子縁組)という制度
正直、養子なんてブラットピットなどのセレブが受け入れてるイメージしかありませんでした。それが自分の友人から、そしてあまりにも身近な感覚でその言葉が出たものですから日本人の僕からしたら衝撃が大きかった。
サイトを通じて条件にあった孤児を養子として受け入れることができるそうです。
「いつお母さんになるの?」と聞いたら「それは明日かもしれないし何年も待たないといけないかもしれない」と。突然仲介サイトから電話がかかってくるというのです。
多様性を受け入れるアメリカでは特別なものではなくなっているこのAdoption。色々調べてみると、いまの我々日本人の考えからははるか遠い存在のように感じます。
人口コントロールによる孤児や黒孩子の増加
まずBethanyには兄と姉がいます。どちらもAdoptionで北京と上海の子供を養子として迎え入れ、アメリカで育ててるそうです。
その背景として「一人っ子政策」などの政府による人口コントロールが原因で、2人目以降にできた子供を捨てるケースが相次いだそう。
結果として、孤児院送りにされる子や戸籍上登録されない子供(黒孩子:ヘイハイズ)が増えたのです(その数は3000~4000万人と言われてる)。もちろんこれは中国だけのケースではありません。
そうした孤児の子供を養子として受け入れたBethanyの兄と姉。その背景があるからこそ、彼女自身も「Adoption」という選択肢を選んだのかもしれません
フリーランスの彼女が取ったAdoptionという選択肢
また、びっくりしたのですが彼女は現在37歳(全然見えない)。これから結婚、そして出産となると高齢出産が考えられます。しかしAdoptionならその心配はありません。
また、フリーランスにとって子育ては仕事との両立が求められます。育児休暇といった福利厚生もないわけですから。
「Adoptionで5歳以上の子を受け入れるつもり」というBethanyは、出産後の育児の最も大変な期間をパスすることができるのです。
こういう考え方があることにめちゃくちゃ驚かされました。なんとも合理的というか、日本にいたら絶対に触れることのない考え方だなぁと。
そしてAdoptionする夫婦はいるが、シングルでのAdoptionはアメリカでも少ないそうです。
失礼かもしれないが「結婚したいと思う人、いなかったの…?」と聞くと「愛せる結婚相手を見つけられなかった」と話すBethany。彼女はシングルマザーになるのです。
「結婚できなかった(もしくはしたくない)、でも子供は欲しい」、そんな人にとってAdopotionはひとつの手段なのかもしれません。
もちろんAdoptionは良い面だけではない。子供が商品のように扱われる場合も…
アメリカでは一般的に広がっているAdoptionも美しい話ばかりではないようです。こちらの記事が非常に参考になります。
Adoptionの世界には、さまざまな条件によって、引き取られやすい子供と、最後まで残ってしまう子供がいます。
まず、子供の年齢が低ければ低いほど、条件が良くなります。
さらに、人種によっても変わってきます。もし私がAdoptするとしたら、自分がアジア人なので、アジア系の赤ちゃんがいいな、と思いますが、Adoption 全体を見ればアジア人より白人の赤ちゃんのほうが人気なのだそうです。
障害があるかどうか、によってもまた大きくかわります。生まれたときに障害がなくても、妊娠中の母親が薬物など摂取していないか、アルコール中毒だったかどうか、などを重要視する人も多いようです
まるで子供の命が商品として扱われているような、なんとも悲しく冷酷な現実です。
白人の、新生児の、健康な両親から生まれた、健康な女の子。
これが、Adoptの対象としては一番人気の条件なのだそうです。そんな条件のそろった赤ちゃんは、争奪戦の対象となります。
逆に、すでに大きな子供になってしまっている子、障害のある子の場合は、むしろ、引き取ることで州や国から財政援助があったり、課税を優遇してもらえる制度さえあります。
こんな話を聞くと「ひどい」と思うかもしれませんが、では、仮に自分がAdoptすると考えたらどうでしょうか?
可愛い赤ちゃんが欲しいのに、授からない、ではAdoptはどうだろう?と考える両親だったら、当然のように新生児を望むのではないでしょうか。
そのこと自体は、決して責められるようなことではありません。
生物学的な我が子でさえ、子育ては大変です。可愛い赤ちゃん時代が終わってだんだん生意気になってくると親も苛立つことが多いのですが、それでもその子が生まれたときの感動や赤ちゃんのときの可愛さを思い出して頑張ります。
そういう思い出や培った絆がなく、もうある程度成長してしまった子供を育てる場合、親にも相当な精神力が必要です。ましてや障害がある、すでに成長した子供の場合。医療費がかかるなどの実質的な大変さだけでなく、子供が受けた心の傷が、さらに子育てを大変なものにします。
実際に心に傷を負った孤児は多いので、そういう子供をAdoptするには、両親も知識をつけ、トレーニングを受けなければなりません。そのような心構えなしに、ただ「かわいそうだから私が育てる」という気持ちで引き取ってしまったら、その後さらに大きな悲劇につながりかねません。
難しい話ですよね…けっして綺麗事だけの世界ではないということです。特に外国の子供を自国で受け入れるのは相当な労力と費用を要します。軽い気持ちだけで受け入れられるものではないのです。
血縁関係を重視する日本。無痛分娩で議論が起こるこの国でAdoptionは受け入れられるのか
血縁関係を重視する文化のある日本。その誇りが日本固有の伝統を作り上げてきたのは間違いないけれど、これからの時代、その価値観がどういう方向に進んで行くのか。
僕は周りに「養子」として引き取られ育って来た人を見たことありません。もし昔、そのような人たちが身近にいたら特別視していたかもしれません。
無痛分娩ですら議論が巻き起こる国です。「自分の子供は腹を痛めて産め!」という声がネット上には上がっています。また、出産費用をクラウドファンディングで集めようとしただけで、関係ない人からのバッシングが浴びせられます。
血が繋がっていない他人が産んだ子供を、自分の子供のように愛情を注ぐ。
他人の子供でも愛情を注げば家族ではないでしょうか。逆に自分の子供に虐待したり育児放棄するニュースも多く見られる時代です。
子供が欲しくてもできなかった家庭、結婚という概念に共感はできないけど子供は育てたい人。僕自身「Adoption」という選択肢を取るかなんて全然分からないけど、幅広い選択肢があること、そしてそれらを受け入れられる周りの理解が大切だと思ってます。
多様で好きなように生きられる社会になればいいな。
僕はいま26歳。このタイミングでポートランドに来て、そしてBethanyと再会し新たな価値観に触れられたことに何か意味があると思ってます。本当に来てよかった。
僕が言うのもなんだけど、彼女には幸せになってほしいです。
最後にこの記事のリンクも。11月は「アメリカ全国養子月間」だそうです。
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