新たな流行を生み出す動画コミュニティサービスを支えているのはHPのストレージ
もはや改めて説明の必要もないほど人気の「ニコニコ動画」、略して「ニコ動」は、コメント機能などによって今までにないコミュニケーション手段を作り上げた動画コミュニティサービス。インターネット発の新たな流行を生み出しており、日本のインターネット文化にも大きな影響を及ぼしているサービスの1つといえる。このサービスのインフラに、日本ヒューレット・パッカード(以下、HP)のストレージが採用されている。動画コンテンツの商用サービスとして求められるさまざまな要件をどのように満足させていったのか、「ニコニコ動画」のサービス構築・運用を行うドワンゴ開発計画運用部佐藤哲也氏に聞いた。
高度な拡張性と信頼性を求め、容量とスループットのそれぞれを柔軟に拡張できるストレージ構成に
気になるのは、動画コンテンツの商用サービスとしての要件を、どのように満足させていったのかという点だ。佐藤氏は、システム構築の経緯を以下のように説明する。
「われわれとしては、NFSでアクセスでき、全体を単一のボリュームとして扱えるもので、かつ拡張性も備えている必要がありました。しかも、非常に短い期間で構築しなければならず、当然のことながらできる限り安く調達できることも条件でした。実際、このシステムインフラの検討は2007年の4月から5月にかけて行われ、本稼働は6月でしたから、1カ月ほどで決めて導入したことになります」
「ニコニコ動画」では、大量のユーザーが「重たい」動画コンテンツにアクセスするため、高いスループットのストレージが不可欠だ。また、商用サービスとしては可用性も重視しなければならない。「各社の製品を検討したところ、NASヘッドのクラスタ化が2ノードまでという製品がほとんどでした。しかしHPのストレージ製品は、カタログ上で16ノードまでリニアに拡張できるとうたっており、またバックエンドのストレージに関してもEVAシリーズは信頼性が高く、十分に安心できます」(佐藤氏)
選ばれたのは、「HP StorageWorks 6100 Enterprise Virtual Array(以下、EVA6100)」と、「HP StorageWorks Enterprise File Services Clustered Gateway(以下、Clustered Gateway)」の組み合わせだった。Clustered Gatewayは単なるファイルサーバではなく、ストレージ側はSANで、そしてクライアント側はLANで、それぞれスイッチを介して接続するようになっており、負荷分散や帯域拡張が可能な設計だ。その上、複数のディスクアレイをまとめて1つの論理ディスクとして構成することが可能となっているため、ストレージ側を増設すれば容量を、NASヘッド側ならスループットを、それぞれ必要に応じて拡張できる。
過去にも実績ある構成を採用した上で、HPの支援を得てパフォーマンス検証やシステム構築を実施
ドワンゴでは、すでにほかのサービスでも、今回とほぼ同様の構成を採用しているという。その信頼性や運用しやすさは、以前から同社の中でも評価が高かったという。
「Clustered Gatewayへのアクセスはすべて仮想IPで行い、仮想IPは実ノード数に関係なく作成でき、将来の拡張に併せて事前に増やしておくこともできるため運用上のメリットもあります」と佐藤氏は話す。システムを止めずにストレージ容量を拡張でき、かつ全体が1つのストレージプールとして管理されており、データのレベリングを自動で行う点も評価が高かったという。
しかし、実証済みの構成とはいえ、「ニコニコ動画」での転送量は相当なものになるはず。そこでドワンゴでは、導入に先立って、HPの支援を受けてパフォーマンスの検証を行っている。
「すでにHPのストレージを導入していたシステムは、モバイル向けのサービスで使っているもの。一方、今回は、モバイル向けと比べて扱うファイルサイズも大きいし、桁違いに高いパフォーマンスを必要とするサービスです。そこで2ノードでは足りないだろうと考えてテストしたところ、4ノードで4Gbps弱、ノードの1Gbpsインターフェイスの限界近くまで性能を引き出すことができました」と佐藤氏。
HPは、導入時にもClustered Gatewayの設定などのサポートをしている。すでにドワンゴでの過去の導入例があるため、その経験を生かして作業は迅速に進んだという。とはいえ、大容量な動画ファイルを扱うのは、HPにとっても例の少ないことだった。HPによれば、ベストなパフォーマンスを出すために同社の開発部隊にまでドワンゴのニーズをエスカレーションし、課題をクリアしていったという。
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