本屋でたまたま見かけて目次見てみたらすごい面白そうだったので購入。
んで、読んでみたらめちゃくちゃ面白かったので紹介。
- 作者: デイヴィッド・J・リンデン,岩坂彰
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2012/01/20
- メディア: 単行本
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内容はこんな感じ↓
セックス、薬物、アルコール、高カロリー食、ギャンブル……数々の実験とエピソードを交えながら、快感と依存のしくみを解明。最新科学でここまでわかった、なぜ私たちはあれにハマるのか?
著者はアメリカの神経科学者。なので基本的にはいわゆる科学書籍。思ったよりもしっかり科学書籍。
基本的には上記テーマのような内容を、実際に脳の中でどういう生化学的な反応が起こっているかまでしっかり詳しく説明されてます。
たぶんその辺りすっ飛ばしても楽しめそうな感じではあるけれど、なんとなくでも理解しとくとさらに楽しめるかと。
以下、各章のちょっとした紹介&ちょっとした感想。
第1章.快感ボタンを押し続けるネズミ
実は初っ端から科学色めちゃくちゃ強くてちょっと挫折しかけた。
でも、ここで説明されている話を理解しておくと後々の章で理解が早まる。ここさえ理解しておけば、後で出てくる話はほぼ理解できるかと。
簡単に言うと、VTA(腹側被蓋野)のニューロンの活動が高まる→快感を感じる。このことを邦題にもなっている「快感回路」が活性化する、って言ってるっぽい(間違っていたらごめんなさい)。
この本をじっくり楽しみたい場合は飛ばさずに読むこと推奨。
第2章.やめられない薬
ドラッグの快感について。各種ドラッグがいかに作用するかの話と、なぜ依存が起こるかという話。
なぜ依存が起こるのかという話については簡単に言うと「脳の構造が変化するから(神経回路自体が構造的に実際に変化してしまう)」。脳には可塑性があり、行動経験で神経回路は変化する。
あと、最後のこの言葉は至言だと思う。
依存症は病気だと宣言することは、依存症者を自身が犯した反社会的な選択や行動の責任から解放してやるだけではないだろうか。いや、決してそんなことはない。確かに依存症を病気とするモデルは、依存症の発症は患者の責任ではないという考え方を伴う。しかし、これは決定的な点だが、依存症からの回復は患者の責任なのだ。
第3章.もっと食べたい
食事に伴う快感について。食べる行為でも快感回路は活性化。
胃腸が刺激されて発生する満腹感については知ってたけど、脂肪細胞から分泌されるレプチンというホルモンがそもそも長期的に体重管理していた話は初めて知った。痩せる→脂肪減る→レプチン減る→ご飯食べたくなる、太る→脂肪増える→レプチン増える→ご飯食べたくなくなる。
じゃあ太ってる人は、というと同じもの食べても快感回路の活性レベルが有意に低いそうだ。あと面白いのは太っている人は食べてるときじゃなく食べようとしているときに快感回路が比較的大きく活性化するそうな。なんか残念。
空腹時ほど快感回路は大きく活性化し、食べているうちに反応が小さくなる、というのも納得。ちなみに満腹状態でもデザート(糖分・脂質が多いもの)はしっかり快感回路が活性化されるらしい。ラットの実験でも。いわゆる別腹。
第4章.性的な脳
本屋で目次見たときからここが個人的メインコンテンツ。
ここの紹介長くなります。
まず、導入パラグラフが秀逸。長いけど全文引用させてください。
あなたのセックスを眺めてるネコは、いったいどう思っているだろう。たとえあなたがこの文化の中で性的に伝統的とされる嗜好を持っているとしても、つまり、例えばディック・チェイニーのゴムマスクをかぶり、乳首を洗濯バサミで挟み、BGMにワーグナーの『指輪』をかけるというようなことをしていなくても、あるいはブルートゥース対応の電気ショックプロープを肛門に挿入して、インターネット経由でハンセン株価指数の激しい変動に応じてショックを味わうような真似をしていなくても、異性のパートナーを相手に自宅の寝室で二人きりで抱き合い、キスをし、撫で、舐め、普通に生殖器による性交をしているとしても、ネコはあなたを異常な奴だと考えるはずだ。そして猫は正しい。
この神経科学者さん頭おかしいだろw(褒め言葉)
とりあえず「ドラッグや食事に関する快感は他の哺乳動物と人間で似たり寄ったりだけど、生殖については全然違うよね」という話。
しかしそこで「でも、おかしいって言っても実は動物たちもおかしいんだけど」という流れで列挙される、俺の知らない動物たちの真実。本筋と関係ないのに興味惹かれまくり。
以下一部を紹介↓
- イヌとかサルだけじゃなくモルモットもセルフフェラする
- メスのチンパンジーもシャワーオナニーする
- メスのオランウータンも木でディルド作る
- メスのヤマアラシもこすりつけオナニーする
- バンドウイルカは生きたウナギをペニスにまとわりつかせて快感をえる
最後おかしいだろw
ちなみにこの後、同性愛の話に移るけどそこでも
アマゾンカワイルカはオス同士で互いの噴気孔にペニスを挿入する。知られているかぎり唯一の鼻セックスの事例だ。
なんていうくだりが。イルカさんぱねっす。
乱婚か単婚かという話で出てきた人間のお話、
社会集団について遺伝的な調査を行ってみると、子供の90%は母親の長期的なパートナー、つまり夫の子である。
というのも微妙に泣ける。残り10%...(´;ω;`)ブワッ
さて、ここからが本題。
まずは恋愛と性欲の話。違いはあるのかと。
性的な画像を見ても恋愛中の恋人の写真を見ても快感回路は活性化する。ただし違いはあって恋愛中の恋人の写真を見た場合、判断中枢や社会的認知中枢が低下し、性的な画像の場合にはそれは起こらない。逆に性的な画像の場合のみ視覚処理、注意、運動、体性感覚機能を司る皮質が活性化。
つまりは恋愛と性欲は快感回路が活性化するという意味では同じものだけど、中身はまったく別物でした、と。
同性愛者の場合は?とか、そもそもこれ系の実験で男性は性的興奮の反応を調査しやすいけど女性は大変だよね、とかいう話もあって面白い。女性の場合の調査方法も含めてかなり面白かったけどここでは割愛。ちなみに俺は途中で爆笑した。
次にオーガズムの話。
オーガズムについては、まず言っておかなければならないことがある。明白な事実なのだが、この点は何度でも繰り返して強調するに値する。それは、オーガズムは脳で起こるのであって、股間で起こるものではないということだ。
なんでこの人こんなに必死なの(´・ω・`)
性器の刺激どころか身体刺激なしでもイケる人はいますよー、と。んで、その生化学的な反応の詳細についての説明が。
最後に、オーガズム後にはオキシトシンというホルモンが分泌されてそれがエッチの後に余韻をもたらすというお話。
このオキシトシンを鼻からスプレーして摂取する実験もあるらしく、被験者は他人を信頼しやすくなるとのこと。怖い怖い。ただし、信頼に及ぼす影響はリスク全般ではなく、対人関係に関わる社会的リスクのみらしい。不思議。また、それだけじゃなくて「目の写真を見てその人の感情を推測する」というテストの正解率もあがるそうな。
ボーダーのコにも効くってよ!
第5章.ギャンブル依存症
この辺りは仕事ともちょっと関わってきたり。
基本的にはよく言う
- 不確実性の快感
- 当たり外れの過程に関われた方が快感が増す
- ニアミスでも快感を得てしまう
あたりの話を科学的に。
そしてゲームでも一緒だよね、という話から実はこの本で一番大事かもしれない部分。
- 「お金」という食べ物や水やエッチとは違った本来的ではない報酬でも快感回路は活性化される。
- まぁでも「お金」自体は概念的なものにしろ、それらの代替にはなるよね。
- でもゲームなんて本来的な報酬が全くないものでも活性化されちゃうじゃん。。
- あれ?もしかして人間ってどんなものでも報酬にできるんじゃね?
第6章.悪徳ばかりか快感ではない
ランナーズ・ハイやら瞑想やら慈善活動やら社会的評価でも快感を得られますよ、と。
面白かったのは「情報」そのものでも快感を得られる話。サルの実験でも、有用性が一切なくて、抽象的な、知識のための知識でしかないようなものでも快感回路が活性化されちゃうらしい。
結局のところ、第2章での神経回路の可塑性の話と合わせて
要するに、人間の脳における快感と連合学習の相互作用は諸刃の剣と言える。経験により快感回路を長期的に変化させる能力のおかげで、人間はさまざまなものを自由に報酬と感じることができ、抽象的観念さえも快いものにできる。突き詰めて言えば、人間の行動や分化の多くはこの現象に依存している。しかし残念なことに、その同じプロセスが、快感を依存症えて変化させてしまうのである。
とまとめられてます。
第7章.快感の未来
別に無くても良かったんじゃね?と個人的に思う章。
科学技術さえ進歩すれば脳をいじくって自由に快感を得ることは確実にできるだろうねー、と。
でも重要なのはそれ自体じゃなくてそのときの社会道徳だよねー、と。
という感じで、えらい長くなっちゃった&引用しまくっちゃったけど紹介終了。
自分が意識的/無意識的に感じている「快感」がいったいどうなっているのかをちゃんと理解しておくために、この本は本気でオススメです。
- 作者: デイヴィッド・J・リンデン,岩坂彰
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- 発売日: 2012/01/20
- メディア: 単行本
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