2017年(平成29年) 12月5日

タイムス×クロス 木村草太の憲法の新手

木村草太の憲法の新手(69)森友学園問題 首相は責任者の処分を

 11月22日、会計検査院は、森友学園への国有地売却についての検査結果を公表した。その概要は、次の通りだ。

 約8億円の値引きの根拠となった地中ごみについては、算定に用いている深度、混入率について十分な根拠が確認できず、処分費の単価の詳細な内容等も確認できず、地下埋設物撤去・処分概算額を算定する際に必要とされる慎重な調査検討を欠いていた。

 さらに、財務省や国土交通省の文書が破棄されているため、既存資料だけでは地下埋設物の範囲について十分に精緻に見積もることもできない。国有地の売却等に関し、合規性、経済性などの面から、必ずしも適切とは認められない事態や、より慎重な調査検討が必要であったと認められる事態等が見受けられた。

 同月27日から30日の衆参両院の予算委員会では、当然、この問題が追及された。これまで安倍首相は、国有地売却が適正に行われたとの認識を示してきた。しかし、今国会では、これまでの答弁は、あくまで財務省や国土交通省の担当者の調査を信頼しただけのもので、「私が調べて、私が適切であるということを申し上げたことはない」という。これは、官僚への責任転嫁だ。

 また、政府は、深さ9メートルまでごみがあるように口裏合わせしたことを示唆する録音データの存在を認めた。さらに、財務省は、売り払い前提の定期借地処理、瑕疵(かし)担保免責特約、延納特約、売却価格非公表といった処理をしたのは、ここ5年間で森友学園の事案だけであることも認めた。

 ここまでの報告や審議を総合すると、今回の不適切な国有地売却は、ついうっかりごみを調べ忘れたのではなく、森友学園に安価に土地を取得させようとする計画に基づくものと考えざるを得ない。

 安倍首相は、責任者を特定し、厳しく処分すべきだ。また、売却が適切だという報告を上げたり、国会答弁をしたりした佐川前理財局長(現国税庁長官)にも責任を取らせるべきだ。財務省を管理する麻生財務相も、おとがめなしというわけには行かないだろう。

 首相は、これまで自分が国有地売却に関与していないと強調してきた。しかし、いま問われているのは、売却に関わった責任ではなく、処分すべき者を処分できていない責任だ。関係者を処分しなければ、不当な国有地売却を行政の最高責任者として承認するということだ。それは、売却を直接指示することと大差ない態度だろう。

 首相や財務省の言動を見ていると、訳の分からない開き直りを繰り返すことで、追及する側が疲れ切って「もういいよ」と放り出すのを待っているように見える。

 実際、世論調査では、政府答弁に納得していない人が多い一方で、森友問題で下がった内閣支持率は再び上昇に転じた。国民間に、「森友問題は大問題かもしれないけど、どうせ政府は開き直るから、小さい問題だったことにしよう」という投げやりな気分が広がっているのではないか。

 しかし、それでは、政治権力のパワーハラスメントに飲み込まれてしまう。粘り強く追及を続け、責任者の処分を求めねばならない。(首都大学東京教授、憲法学者)

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