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【社会】

不妊手術強制で国を提訴へ 宮城の女性「旧優生保護法は違憲」

 旧優生保護法(一九四八~九六年)に基づき、知的障害を理由に不妊手術を強いられたのは憲法違反だとして、宮城県内の六十代女性が、国に損害賠償を求めて来年一月に仙台地裁に提訴することが三日、分かった。旧法に基づく不妊手術は同意がある約八千五百件を含め、全国で約二万五千件確認されているが、国への提訴は初めて。

 関係者によると、女性は重い知的障害があり、十代で不妊手術を受けた。事前に医師側から手術の説明はなかったという。女性は手術後、腹部に痛みを訴えて入院。悪性ののう腫が見つかり、右卵巣を摘出した。

 不妊手術が原因で結婚も破談になり、女性側は「旧法は幸福追求権などを保障する憲法に違反する」と主張する見通し。女性の代理人を務める新里宏二弁護士は「声を上げたくても、上げられない被害者は多い。訴訟を通じ、全国に問題提起したい」と述べた。

 女性は今年六月、県に対し、不妊手術について記録した「優生手術台帳」の情報開示を請求。七月に全国で初めて開示され、手術を受けたのが七二年十二月で当時十五歳だったことや、疾患が「遺伝性精神薄弱」とされていたことが判明した。

 旧優生保護法は、精神疾患や遺伝性疾患、ハンセン病などの男女に対し、人工妊娠中絶や本人の同意がない不妊手術を認めた。九六年に障害者差別に該当する条文が削除され、母体保護法に改定された。

 二〇一六年には国連の女性差別撤廃委員会が、被害者が法的救済を受けられるよう日本政府に勧告。日弁連も今年二月、国に実態調査や謝罪を求める意見書を出したが、国は「当時は適法だった」と応じていない。

<旧優生保護法> 「不良な子孫の出生を防止する」との優生思想に基づき1948年に施行された。ナチス・ドイツの「断種法」の考えを取り入れた国民優生法を前身とする。日弁連によると、96年の改定までに人工妊娠中絶は約5万9000件、不妊手術は約2万5000件に上る。同様の法律により不妊手術が行われたスウェーデンやドイツでは、国が被害者に正式に謝罪し補償を行っている。

 

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