(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年11月30日付)

ロシアとトルコ、黒海経由の天然ガスパイプライン建設協定に署名

ロシアとトルコ、黒海経由の天然ガスパイプライン建設協定に署名。トルコ・イスタンブールで開かれた記者会見で握手するトルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領(右)とロシアのウラジーミル・プーチン大統領(左、2016年10月10日撮影)。(c)AFP/OZAN KOSE〔AFPBB News

 今から10年前、ロシア国営エネルギー会社のガスプロムは止められないように見えた。

 世界最大の天然ガス埋蔵量と欧州市場への比類ないアクセスを擁し、同社のアレクセイ・ミレル社長は向こう7~10年以内にガスプロムの価値が1兆ドルに達し、押しも押されもせぬエネルギー業界の王者になると予想するだけの自信を持っていた。

 ロシアの天然ガス輸出を独占するガスプロムの当時の価値は2550億ドル相当で、同社の株価は高騰していた。だが、その後の10年間で会社の価値は4倍になるどころか反対方向に向かい、わずか550億ドルまで低下した。

 ガスプロムは現在、継続的な成長を確保するために新規プロジェクトに多額の投資を行いつつ、借り入れを大幅に増やし、フリーキャッシュフローを脅かすことを余儀なくされている。

 高揚感の漂っていた2007年にはミレル氏が想像もできなかったような事態だ。

 最初の一撃は2008年の金融危機後に訪れた。危機によりエネルギー価格が急落し、旧ソ連時代のパイプラインの巨大ネットワークを介してガスを提供している主要輸出市場の欧州で需要が落ち込んだ。

 それから間もなく、米国のシェールガス生産の台頭が長期的なエネルギー価格を押し下げ、船で出荷される液化天然ガス(LNG)という形のライバルを生んだ。

 さらに、地政学的な緊張を受け、一部の国がロシアに代わるガス供給国を模索するようになる一方、欧州連合(EU)はガスプロムの価格戦略に対する調査に乗り出した。