著名指揮者レバイン氏を出演停止 性的虐待でメット歌劇場
米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場は3日、著名な指揮者のジェームズ・レバイン氏(74)が1980年代に10代の少年たちに性的虐待を重ねていたとの疑惑を受けて、同氏との関係を停止すると発表した。
同歌劇場は、レバイン氏の今季の出演を停止し、疑惑調査を法律事務所に依頼したと述べた。
10代の時にレバイン氏から性的虐待を受けたと、3人の男性が名乗り出ているという。レバイン氏は公にコメントしていない。
レバイン氏は40年間にわたり、メトロポリタン歌劇場の音楽監督を務めていた。健康上の理由から昨年引退したが、名誉音楽監督として同歌劇場の活動に関わっていた。
メトロポリタン歌劇場は、2016年作成の警察調書に書かれた男性の訴えを調べている。男性は、10代の時にレバイン氏に性的虐待を受けたと告訴している。
同歌劇場のピーター・ゲルブ総裁は3日、米紙ニューヨーク・タイムズに対し、さらに別の男性人が1960年代の終わりまでさかのぼり、レバイン氏との同様の性的関係があったと主張していることを知ったのを機に、レバイン氏との関係を停止し、今後の出演予定をキャンセルしたと説明した。
ゲルブ総裁はツイッターに投稿された発表文で、「調査結果を待っている段階だが、報道を受けてメット(メトロポリタン歌劇場)は今すぐ行動することにした」と表明。「人生を傷つけられた誰にとっても、このことは悲劇だ」と述べた。
ニューヨーク・タイムズによると、メトロポリタン歌劇場は昨年から警察調書の内容を知っていた。しかし、レバイン氏は疑惑を否定し、警察はそれ以降、歌劇場に連絡をとらなかったという。
ニューヨーク・タイムズが閲覧したイリノイ州の警察調書によると、被害を訴える男性の1人が15歳だった1985年に、当時41歳だったレバイン氏からの虐待が始まり、1993年まで続いたという。
レバイン氏はこれまでに、メトロポリタン歌劇場で2500回以上の公演を指揮している。
メトロポリタン歌劇場で1971年6月に、プッチーニの歌劇「トスカ」の指揮でデビューしたレバイン氏は、1973/74年シーズンに首席指揮者になり、1976/77年に音楽監督に就任した。
レバイン氏が指揮した歌劇は85作に上る。「三大テノール」として知られた著名テナー歌手、故ルチアーノ・パバロッティ、ホセ・カレーラス、プラシド・ドミンゴ各氏とも交流があった。
レバイン氏は近年、パーキンソン病などの健康問題を抱えながら、電動車いすを使い指揮活動を続けていた。
レバイン氏の疑惑に先立ち、今年10月に大物映画プロデューサーのハービー・ワインスティーン氏による若い女優などに対する性的加害行為の疑いが表面化して以来、各界の有力者や著名人たちに対する性的虐待やセクハラの訴えが相次いでいる。
(英語記事 Metropolitan Opera suspends James Levine after sex abuse claims)