2017年12月01日号
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《ヒルサイドテラス》槇文彦

Hillside Terrace, Fumihiko Maki

1969年竣工の《代官山集合住宅・第一期》から98年竣工の《ヒルサイドウエスト》まで、約30年にわたり、建築家・槇文彦の設計により代官山の旧山手通り沿いに段階的に開発されてきた集合住宅、商業施設、オフィスなどを含む複合建築である。土地所有者である朝倉不動産は、緑に覆われていた代官山の環境を生かした緩やかな開発を希望しており、相談を受けた槇によって段階的に作成されたマスタープランに基づき、内部空間と外部空間の連続性や広々とした歩行空間、建築ヴォリュームや素材の調和など、統一性を保ちつつも豊かな表情を持つ都市空間が形成された。また、内外に配されたギャラリーやオープンスペースなどを活用した展覧会やコンサート、祭りなどのイヴェントも多数開催されており、《ヒルサイドテラス》におけるそうした長年にわたる文化活動に対し、98年度メセナ大賞が授与されている。バブル期以降急速な都市開発が進められてきた東京中心部において、緩やかに環境を成熟させてきた《ヒルサイドテラス》の歴史は、槇の言う「住居を中心とした社会資本の形成」に成功した稀有な実例であり、人口減少を迎える今後の日本の都市に対しても示唆するところは大きい。

著者: 岡村健太郎

参考文献

  • 『ヒルサイドテラス白書』,槙文彦、アトリエ・ヒルサイド編著,住まいの図書館出版局,1995
  • 『ヒルサイドテラス物語 朝倉家と代官山のまちづくり』,前田礼,現代企画室,2002
  • 『ヒルサイドテラス+ウエストの世界 都市・建築・空間とその生活』,槇文彦編著,鹿島出版会,2006

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