先日、EUから独立を決めたイギリスの国会が、EU動物福祉法である「動物は感情を持ち、苦痛を感じる」という条項を盛り込むことを否決したというニュースをお伝えしたが、実際にはどうなのだろう?
動物の感覚についての科学的見解やそこに至る経緯をまとめた記事が海外サイトに掲載されていた。
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動物に感覚はあるがかつては否定されていた
それによると、科学的には動物に感覚があることは疑いのない事実だという。
ここで言う感覚(sentient)とは、「物事を知覚または感じる能力」である。おそらく今日、ほとんどの人々は、動物が感情を感じ、愛情を抱き、それぞれの性格があると考えているだろう。
しかし動物に感情や性格があるという考えは、長年、動物の行動学者から否定されてきたことだったのだ。
この不思議な見解の発端になったのは、17世紀のフランス人哲学者ルネ・デカルトだ。彼は動物は身体的にも感情的にも感じることがないと断言したらしいのだ。
image credit:ルネ・デカルト
少なくとも哺乳類には感情がある
デカルトが実際にそう言ったのかどうかは別としても、最近の研究はこの見解を反証している。
■ヤギ
ヤギの顔を見るとのほほーんとしており、感情などなさそうに見えるが、そのヤギすら様々な状況に対して好悪両方の感情的な反応を示すことを示している。
関連記事:「会えないよ、悲しいよう。」 何も食べられなくなってしまったヤギにロバと再会させたところ元気を取り戻した!(アメリカ)
研究者が調べたのは、ヤギが餌を期待している時、その餌がもらえず不満を感じている時、群れから隔離された時に上げる鳴き声の周波数だ。鳴き声に現れた感情は、ボディランゲージと心拍数によっても確かめられた。
■ウマ
ウマは感情が豊かだ。彼らが社会的な動物で群れの仲間と親しい関係を築くことや、餌動物であり危険が迫れば反射的に逃げ去ることを考えれば、驚くには当たらない。
カナダでは、乗馬はモータースポーツやスキーに並び最も危険なスポーツの1つとして数えられている。その際、騎手の安全などを守るために重要になってくるのが、馬の感情状態であると考えられている。
フランスのある研究者は、乗馬スクール22校が飼育する馬184頭が示した感情レベルと学習能力を調査した。
未知の状況に落ち着いていられる能力と新しいものや状況が危険ではないと素早く学習できる能力は、乗馬において決定的に重要であることが判明していた。そこでその研究者は馬の感情面に着目することにしたのだ。
結果、馬の感情の起伏に最も影響を与える要因の1つは飼育環境であった。屋外で飼育されている馬は、馬小屋の仕切りで個別に飼育される馬に比べて、新しい物体に対して恐怖をあまり感じず、馬場であまり興奮しないでいられた。
この結果は意外なものではないが、研究では、馬が不安や恐怖といった感情を感じることができる事実を強調している。
関連記事:馬は例え見ず知らずの人でもその仕草を読み取ることができる(英研究)
動物の性格はあるのか?
また別のなかなか決着しなかった疑問は、少なくとも20世紀初頭には提起されていた動物に性格があるかどうかという問題だった。
これについては今でこそ動物に性格があり、それが人間に匹敵するくらい多様であることが一般に受け入れられている。
魚にも感情がある
きっとこれに関連する研究で一番意外に思われるものは、感情などないと考えられることが多い魚にすらきちんと認識できる性格があるということだろう。
そして魚の性格が、寄生虫に寄生される確率や、回遊中に障害となる流れを泳いで越える能力に影響することが判明している。
関連記事:魚にも個性がある。科学者がグッピーに試練を与えたところ個体差があることが判明(英研究)
動物の感覚や感情に関する研究が重要である理由
こうした動物の感情や性格、苦痛・恐怖・ストレスを感じる能力に関する研究が重要である理由は、それが彼らの福祉に大いに関係しているからだ。
法律で動物の感覚性が認められているかどうかとは関係なしに、動物は日常的な状況において苦痛を強いられている現状がある。
かつて人間は同じ人間すらとしても奴隷として扱っていた。だが時代は変化している。人権が尊重される先進的社会では、動物の権利も尊重されるべきであるという意見も多くでている。
彼らの感覚や感情を理解することで、手荒い扱いを避け、彼らの恐怖やストレスを緩和することはできるはずだという。
法的に彼らが情感ある存在であると認められていなければ、我々が尊重すべき動物の福祉を守ることはなお一層難しくなるだろう。
via:sciencealert/ translated by hiroching / edited by parumo
犬や猫などを何回か飼ったことのある人なら、その個性の豊かさに驚かされるだろう。似たようなタイプであってもまったく同じ性格の個体はいないのだ。
人間だけではないが、弱肉強食の掟のもと、地球上の生物は何かを犠牲にしながらその種を存続させている。その事実を認めたうえで、なおかつ尊重しながらうまく共存していきたいものだ。
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コメント
1. 匿名処理班
西洋というか、キリスト教世界観
2.
3. 匿名処理班
その割には日本の活け造りに対しては
「動物虐待だ」「生命を弄ぶな」って煩い件について…
4. 匿名処理班
脳があれば性格はあるってこと?
...オレが無慈悲に殺したゴキブリ達の中には仲間思いの優しいゴキブリもいたのかもしれないな
5. 匿名処理班
※1
人間にしか感情や愛情が無いとする考え方の方がよっぽど非科学的だよね。
人間だってホモ・サピエンスになった瞬間からこれらの特性を身に着け始めた訳では無いだろうに。
聖書に書かれている通りに神様が直接人間を作った、
という記述を事実として信じていた時代の人達と同レベル。
時代錯誤ですね。
6. 匿名処理班
魚は人に慣れるので感情っぽいものが有る様な気がする。
7. 匿名処理班
ぞうがすすり泣くときを読んだとき
衝撃を受けたのを覚えてるな
8. 匿名処理班
畜産業どうなるの?
9. 匿名処理班
デカルトは動物機械論だな。大嫌いな奴だ
10. 匿名処理班
※8
心を無か鬼にしなくてはああいうのは勤まらないよ。
殺処理・解体処理・調理を経て私達の口に入る。
我々にできることは「全ての材料・業者に感謝し美味しく戴くこと」だけだ。
だからそこだけは忘れちゃならない。
11.
12. 匿名処理班
感覚の差はあるにしろどんな生き物も身体が破壊されそうになるとジタバタして逃げようとするなど嫌そうに見える反応を示すのは確か。
13. 匿名処理班
※3
反動なんだよ
西洋人たちは長年、人間だけが特別で、人間以外(時には白人以外の人間も)は人間のようなものは持ってないと思ってた
だから、信心の崩壊とともに、「反省したぞ!!」と真逆方向に突っ走ってるわけ
信心を失っても「正義は一つしかない(お前らが間違ってる)」という価値観は残ったから、世界中に押し付けてくるわけだ
14.
15. 匿名処理班
※4
ゴキブリも人間に恐怖を与えてるからセーフ
16. 匿名処理班
シラスは保護されないがサメは保護される
結局辛そうに見えることが重要で実際に感情があるかどうかは関係ない
動物愛護の中身は人間愛護
17. 匿名処理班
こう言う事を明確にするなら、同時に自分が命を取って食って生きているんだって現実を覚悟を持って受け入れる土壌も育まないと不味い気がするんだが
18.
19.
20. 匿名処理班
※8
人間同士も搾取し合いながら生きてるし、それは必要悪って事で。。。
21. 匿名処理班
自分が赤ちゃんだったころに感覚や感情(というよりそれらを認識する自我)があったのかどうかすらわからないのだから動物がどうとか客観的にわかるものではないと思う。生まれたての仔犬や雛なんかは自分の赤ん坊時代と一緒で何にも考えず生理的反応だけが行動要因で、ある程度育ったら自意識的なものが芽生えてくるんじゃないかと何となく推察。
22.
23. 匿名処理班
結局感覚の有無がこの手の人にとっては罪悪感に直結するから毎度大騒ぎする羽目になるんでしょ?
感覚ない連中を食ってもこっちの心は痛まないけど
感覚ある生き物を餌にしたら自分が許せないと
他の生物の心なんてものをあれこれ考えるより
まず人間なんて特別な存在でもなんでもないって認めるとこから始めた方が楽になれそうな気がするんだけどね
24. 匿名処理班
逆に人間以上に優れた感覚を持ってる動物も沢山いる。イルカなんて超音波でコミュニケーションをとってるって言うからね。
25. 匿名処理班
動物愛護というのなら、生まれたオスのホルスタインを全頭守ってからにしてね
26. 匿名処理班
むしろ感情って原始的で動物的なものなのでは
27. 匿名処理班
まあ、せいぜい大脳の新皮質が発達した鳥類、哺乳類が対象だろうけど、感情や苦痛と言っても本能が占める部分もあるので、何とも言えないのでは。
センサーやプログラムが複雑に絡み合ったものにも感情が宿るという議論になれば人工知能はどうなるのかと言った問題になるし、また生命あるもの全てということになれば植物や細菌の扱いにも当然言及すべきだし。目につく動くものにのみ正義を振り回しても何も生まれないのではとしか。
28.
29. 匿名処理班
ミミズが人から逃げようとするのは恐怖感を持っているのか単なる本能なのか
熱帯魚の前で踊ったら一緒に踊ってくれたのはなんだったのか
イヌやネコが拗ねたり寂しそうなのは私の幻覚なのかわからない
30. 匿名処理班
※21ヒトの赤ん坊にも生後数日から個性が確かにあって、同じ状況におかれてもそれぞれ反応が違うよ。母親以外のだっこで警戒する・しないとか、風呂で泣く・泣かないとか、泣きわめいた時にミルクで黙る・黙らないとか。猫の兄弟育てた時も、同様の違いを確認した。
自分は上の反応を感情あるしるしだととってる。
けど、それは自分が※26さんと同じ意見だからかも。
感情を高度な発達の証と定義するかしないかで、同じ対象の反応を見ていても、感情とみるかどうかの意見は変わりそう。
31. 匿名処理班
記憶力がありその記憶をもとに行動を変える動物はすべて感情があると思うよ
32. 匿名処理班
うちで以前飼っていた丹頂(白地で頭に赤い楕円のある金魚)は、水槽の外で指を左右に振るとかならず体全体で指にあわせ頭を振って見せた。
ご飯が欲しかったからか、反射的に動いていただけなのか、遊びたかったのか。
33. 匿名処理班
※29
熱帯魚の前で踊ってらっしゃるんですか。なかなか素敵なご趣味ですね。さっそく私も飼ってるタニシの前で踊ってみようと思いますが、一緒に踊ってくれるような気がしないのはなぜでしょう。
34. 匿名処理班
人間以外の動物に感覚も感情もないとすることは、人間以外の生物には一切思考能力がないということと多分同義だと思う。
そんな馬鹿なことがまともに未だに論議されているということが信じられない。
35. 匿名処理班
※1でも仏教でもヒンズー教でも不殺の概念あるとこにはあるじゃん?ヒトの発達した大脳が生活のゆとりを与えられると、いろいろ考えちゃう結果のひとつかも。同胞への不殺ルールを重要に考えるあまり拡大してしまうというか。
思考の拡大自体は有益なことも多いけど、思考拡大の結果生まれたジレンマを自己完結せずに未消化で押しつける行為は、いつどこであっても反発を産んで逆効果でしかないよな……。
※3さんが指摘する自己中心的な意見を押しつける人がキリスト教圏に限らないことも考えたら、どこの文化圏にもいるそういう奴が、ジレンマを1人で抱えきれなくなった結果を他文化圏の他人にまで押しつけてきてるのが現状かもね。たぶんそういう人は自文化圏でもやってて、だからあっちの文化圏でも多数派にはならないんだろうな……。
あーでも、異教徒は文化的に劣ってるから教育してあげるべき!って考え方がベースになってて、そういう人の背中を押してる可能性は否定できないや。野郎自大はキリスト教に限った話じゃないだけに、余計嫌な話だよなあ。
ああ魚さんも牛さんも可愛いけどお魚牛肉美味しいよ美味しいよ。
36. 匿名処理班
※5
感覚も感情も進化の過程であるほうが有効だから生まれた、あるいは何らかの副産物として生まれたと考えるほうがはるかに科学的ですよね
その場合、哺乳類だけにあるとは考えにくい
単なる本能も原始的な感情だろうし、魚や虫に原始的な感情があると考えるのは自然
むしろ人間や人間から見て感情があるように見える動物だけに感情があると考えるほうが創造論的であってキリスト教原理主義的な価値観
37.
38. 匿名処理班
ウチで飼ってるナマズちゃんは水換えの時にホースで「邪魔だよ~」って追い払ってたら、今では水換えの準備するだけで威嚇するようになった
でも餌やりの合図したら媚びてくる
感情があるかどうかは分からないけど、学習能力は結構あるって分かったよ
39. 匿名処理班
※25過激派が実際違法に守ろうとするから、動物愛護全体がヤバいと誤解される時があるじゃん。
40. 匿名処理班
※8知り合いの畜産農家はジレンマと向き合いながら生きてる。毎日見てると確かに感情はあるし、って。でも食い物足りなければ皆死ぬし、仕事しなけりゃ自分が食えないでしょ?って。割りきれなかった人は転職するしかないし実際そうしてる。
41.
42. 匿名処理班
※6
金持ちのオッサンが庭の池の前でパンパンと手を打つと「ゴハン?ゴハン?」と錦鯉が寄って来るアレとかね
43. 匿名処理班
※42
金持ちのおっさんじゃないけど、大型のナマズ科の熱帯魚とかは顔を認識して飼い主だと寄ってきたりする。
寿命も犬猫より長いからけっこう頭も良いと思うんだけどなぁ。
44. 匿名処理班
※35
この話に於いてのベストアンサーだと思います。
45. 匿名処理班
金魚はおしゃべり、ドジョウは無口、みたいなのもあったよね
うちの金魚は1年しか飼ってないのに餌係の私が行くと水面でぱしゃぱしゃするけど、子供や夫ではスイーと泳いでるだけ
服の色とかで判断してるのかな?とても可愛くなってしまう
46. 匿名処理班
前提として、なぜ人間を特別な存在だとみなして物を考えるのかってところから始めたのがいいよこの手の話は。人間だってもとをただせば動物なんだから、程度は違えど共通点がない方がおかしな話だろうに
それとも人間は神を模して造られた特別な存在だとでも本気で思ってるんかね……