沖縄弁護士会の照屋兼一会長は22日、那覇地裁で審理中の元米兵による女性殺害事件の初公判に関する琉球新報社の17日付社説に対し、再検討を求める会長談話を出した。同会は「憲法上認められた黙秘権行使を非難している」と指摘。「被告人の公平な裁判を受ける権利を軽視している」として適切な対応を求めている。

 殺人罪などに問われている元米海兵隊員のシンザト・ケネス・フランクリン被告(33)は16日の初公判で、強姦(ごうかん)致死と死体遺棄の両罪は認めたものの、殺人罪については否認。被告人質問では、事件の経緯を尋ねる検察・弁護側双方の質問に黙秘権を行使した。

 これに対し同社は社説で「被告の権利とはいえ、黙秘権行使は許し難い」と主張。「被告の順法精神と人権意識の欠如の延長線上に、黙秘権の行使があるのではないか」とした上で、「裁判員は被告の殺意の有無を的確に判断し、遺族が納得する判決を期待したい」と記している。

 照屋会長は「新聞社が社の意見として、憲法や刑事訴訟法で認められた黙秘権行使を批判している」と問題視。「証拠関係に基づかず、裁判所・裁判員に一定の方向性をもった判決を出すことを期待しており、評議や判決に臨む裁判員への影響が懸念される」と危惧した。

「問題はない」論説委員長が見解

 沖縄弁護士会の会長談話に対し、琉球新報の玉城常邦論説委員長は22日、「被告の黙秘権を否定しないが、強姦致死と死体遺棄を認めた被告は全てを話すべきだとの主張に問題はないと考える」との見解を発表した。

 談話が「証拠関係に基づかず、裁判所や裁判員に一定の方向性をもった判決を期待している」と問題視したことについて、同社は「『証拠関係に基づかず』に判断を求めておらず、『的確に判断してほしい』と求めている」と反論。その上で「遺族は極刑を求めているが、その通りの判決を出すように求めてはいない。あくまで『遺族が納得する判決を期待』したものである」とした。